帰り道


「いやー、二人ともすっごい美人になったよねー」

「えへへー。でも有紀くんも結構変わったよね」

「んー、そうかな? 髪は伸びたけどね」


 いやいやそれだけじゃないだろう……。


「で、まなみちゃんは見た感じ運動続けてるんだね」

「そうだよー! いろんな部活で遊ばせてもらってる!」

「あはは! ボクと一緒だ」

「有紀くんもっ⁉ じゃあ今度一緒にどこかの試合出よー!」


 おいおい……。敵も可愛そうだし味方も流石に二人も助っ人にレギュラー取られたら……。


「ふふ。本当にまなみは有紀になついてるわね」


 前を行く二人を眺めながら、俺の横に並んだ愛沙が柔らかく笑ってそう言う。


「愛沙は有紀が女だって知ってたのか?」

「そうね……あんまり覚えてなかったしこんなに可愛かった印象は正直なかったけど」

「そうだよなぁ」

「まあでも、中身は変わってないわ」


 どこがだろうと思っていると、道路を渡ったところでさっとまなみと位置を入れ替えて道路側に立った有紀がいた。


「見た目が変わっても、まなみにとっては康貴とは違うお兄ちゃんなんじゃないかしら」

「なるほど」


 だったら……。

 もしかすると俺にとっても貴重な男友達のままのあいつがいるかもしれない。


「私はついていけるかわからないけど、まなみと有紀なら余計身体動かすところに遊びに行きたがるでしょうね」

「あの二人だと俺もついていける気はしないけどな……」

「あはは。まあでも康貴も、有紀と一緒にどこか行ってきたら、良い気分転換になるんじゃない?」

「まあ今まで行ったことないようなとこに連れて行かれそうではあるな」


 俺の遊び相手といえば暁人くらいだったわけだが、あいつは油断すると変な店に連れていきそうな気配すらあるからこちらから無難な選択肢を挙げておく必要があったし。

 というより……。


「いいのか?」

「え? 何が?」


 俺は正直愛沙が男とどこかに行くと言われたらちょっと嫌なところがあるんだが……いや愛沙にその気持ちがないならなんか押し付けがましくなるだろうか……。

 いや、こういうことを考える時点でダメな気がするな。


「まあ、そうだな。あいつは男友達だな」

「そう。まなみの師匠で、康貴の男友達で、私たちの幼馴染。それがきっと、まなみが一番喜ぶわ」


 どこまでいっても愛沙はお姉ちゃんなんだな。

 有紀は男友達。そう思うと不思議なほどしっくり来る自分がいた。

 愛沙もまなみもそれを望んでいるのならそう考えることにしよう。

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