バーベキュー2

「にしても、よくやったな。ちゃんと連れ出してくるとは」


 暁人はからかう気満々の声でそう言う。

 そして真がそれに乗っかった。こちらはまったく悪意なくだが。


「高西がこういう集まりに来るのってほんとに珍しいからな。ありがとな」

「ほんとにそうだったんだな」

「ああ。なんかこう、学校外での人付き合いは必要最低限って感じがしてた。その点加納の方が参加率良かったくらいだからな」

「加納……あいつこそ忙しそうなのにな」


 フィギュアで将来を期待される選手……だと思う。

 全国大会に出るくらいなんだからそうだろうし、実際学校が終わってすぐ練習に向かう姿もよく見ていた。


「まあ加納はああ見えて結構人懐っこいというか……人といるのは好きだからな」

「そうなのか」


 意外だ。

 加納が人懐っこいということ以上に……。


「真って加納とそんな仲良かったのか」


 俺の思いを代弁するように暁人が声をかける。


「いや……まあ……」


 言い淀む真の代わりに隼人が口を挟んだ。


「なんだかんだで真はよく見てるからな」

「隼人はどちらかというと見られる側だからな。特に東野に」

「ほう?」

「そもそも俺らが絡み始めたのって隼人が東野に目をつけられたからじゃないか?」


 意外な一面を見た気がする。


「こらー男子ー! さぼるなー!」


 東野の声に思わず顔を見合わせる俺たち。


「あんな委員長っぽい委員長、いたんだな」


 考えていることは同じだっただろう。

 だが最初に口に出したのが暁人だっただけだが……。


「あっ、滝沢くんがなんか私の悪口を言った!」

「地獄耳か⁉」

「やっぱり言ったんだ⁉」


 みんなのために犠牲になってもらうとしよう。

 真と隼人と目を合わせてうなずきあった。


「墓穴を掘ったな」


 暁人にそう声をかけた隼人だったが、この場では何か喋る度にボールがパスされてしまうらしい。


「違うぞ! 隼人が言った!」

「えっ⁉」


 突然巻き込まれた隼人。

 恨みがましく暁人を睨んだあと俺と真を見るが、俺たちはさっきの様子を見て口を閉ざしていた。


「もー! どっちでも良いからはやく拾った木を持ってこないと、いつまでも火が起きないよー!」

「わかったよ」


 口だけで済む委員長が言ってくれているうちに動くとしよう。


「秋津がいたら手が出てくるからな」

「ほう? 私はそんな暴力的じゃないと思うんだけどなぁ?」

「だったらこの首を絞めてる腕を離してから言ってくれ……」


 暁人がまた墓穴を掘っていた。

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