バーベキュー1

「不思議な感覚だな……このメンバーでいることに違和感を感じなくなってきた」

「そりゃ良いことじゃねえのか?」


 隣で突っ立って笑う暁人。

 俺たちはいま河原にいた。

 隼人と、真と、愛沙と、秋津と、東野と、加納。


「いや、夏休みにはいる前は遠い世界に思えてたからな」

「まあそりゃ勝手にお前がそう思ってただけだろ。あいつらは……特に高西さんに関しちゃ――」

「おーい。暇そうな男子ーず! ちゃんと仕事しろー!」


 暁人の言葉を遮るように秋津が叫ぶ。


「一緒にすんな! 俺はちゃんとビーチボール膨らませてるだろ!」

「あっ、おい裏切ったな」

「お前はほんとに突っ立ってただけじゃねえか!」

「いいからさっさとやれー!」


 なんでこんな事になったかと言うと……。


 ◆


「ねえ、康貴」

「ん?」


 お墓参りも終わりいつもどおりまなみの家庭教師に来てそのまま晩御飯を一緒に食べることになった高西家で、愛沙がわざわざ部屋に俺を呼んでこう言った。


「この日、暇かな?」


 カレンダーを指差しながら聞いてくる愛沙。

 なんかあった日だろうかと考えを巡らせるが特に何も思い浮かばなかった。


「多分暇だけど」

「そっか。じゃあさ、バーベキューやるみたいなんだけど……どうかな?」

「バーベキューって、高西家でか?」


 こういうときはまなみから誘ってくるかと思ってたけど、またなんか言われてるんだろうか。

 そんな事を考えていたが想定外の名前が出てきた。


「えっと……莉香子がどうしてもみんなで集まって遊ぼうって言ってて」

「莉香子? ああ、秋津か……みんなってことは……?」

「女子は藍子と美恵が来る。男子はいつものとだけ」

「いつもの……」


 隼人と真だな。


「で、康貴が行くなら行くんだけど」

「え? 愛沙が呼ばれてるんだろ?」

「一人なら行かない」

「なんでだ……」

「で、どうする?」


 何を考えてるかわからない。

 確認しよう。


「愛沙はどうしたいんだ?」

「えっ。えーと……康貴が行くなら行きたい」

「なんでまた……」


 元々は俺なしでも仲が良いメンバーだったと思うんだけど……。

 そんな考えを表情から読み取ったのか、愛沙が顔をそむけてこう言った。


「河原でやるから……その、水着になるし……そういうときは私、参加してなかったから……」

「そうなのか」


 意外だ。

 ああでも学校内ではよく話しているイメージだったが、外でまで男女で集まったりはほとんどないって隼人が言ってたな。

 特に愛沙は付き合いがあんまり良くなかったとか。

 他のメンバーより時間はあった気がするけど……まあいいか。


「康貴がいるなら行く」

「えっと……」


 ちょうどその時携帯に通知が来た。


『高西さんを連れ出すのはお前に任せた。代わりに当日の女子の水着姿はいくら眺めてても何も言わないでおいてやる』


 暁人……。


「どうしたの?」

「いや……」


 なんか後ろにおかしなことが書いてあるが暁人も呼ばれている上でこういう書き方をしたということは、俺と愛沙もいたほうが良いってことだろう。


「行くよ。一緒に行こう」

「そ、そう? じゃあ行くわ!」


 ソワソワしながらもちょっと嬉しそうな表情の愛沙を見て選択が間違ってなかったことに安堵する。

 暁人のメッセージを見られると変な誤解を生むだろうからすぐに削除しておいた。

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