看病4

「ずるい……」


 出来上がったオムライスを見つけた愛沙に恨みがましく睨みつけられる。もうリビングに来られるくらいには回復したらしい。

 せっかくなので一緒に食卓を囲むことにしたんだが……。


「愛沙は治ったら」

「……約束」


 そう言うとしぶしぶお粥に口をつける。


「あ……おいしい……」


 一口食べた途端、若干機嫌が悪そうになっていたのが嘘のようにパッと顔が華やいだ。


「良かったぁ……」

「え? これまなみが作ったの?」


 目を丸くしてまじまじお粥とまなみを見比べる愛沙。


「ほとんど康貴にぃに手伝ってもらったけどねぇ……」

「すごい……頑張ったのね……」

「えへへ」


 うんうん。まなみは頑張ってたからな。

 冷や飯を1つダメにするくらいには試行錯誤があった。あれもしっかりスタッフが美味しく頂きました……正直高西家に来て一番しんどかった作業かもしれない……。

 ただその甲斐あって俺たちが自分で食べても美味しいと思えるお粥を作れるまでに成長してくれた。


「作り方は教えたけど、ほんとに全部まなみがやってるからな」

「そう……すごい……ありがとう、まなみ」

「えへへへへぇ」


 まなみを見て微笑む愛沙は優しい表情だった。


 ◇


「じゃ、康にぃ、私達お風呂に入ってくるから」

「おう、そしたら俺は帰るか」

「「え?」」

「え?」


 愛沙とまなみに揃って信じられないという顔でこちらを見てくる。

 なんでだ。


「康にぃからお風呂入る……?」

「いやいや」

「じゃあ……一緒に……?」


 愛沙までおかしくなっていた。


「もう大丈夫だろ? 明日も来るからさ?」

「もう、布団出した」

「病人が何してんだ……」

「ほらほら、お母さんたちからもメッセージ来てたじゃん? 康にぃ?」

「いや……飯まではそうだけど……」

「……」


 無言で見つめてくる2人の瞳が不安そうに揺らいでいる。


「はあ……とりあえず風呂から出るまではいるから……元気なうちに行ってこい」

「「うん!」」


 結局勢いに負けて2人を送り出した。

 俺はリビングのソファでテレビを見て待つことになった……。落ち着かないから洗い物でもしたいんだがそうすると風呂場に近づくことになるのでなんとなくそれは避けたい。


「いたたまれない……」


 バラエティ番組にもほとんど集中できずにいたが、それでも意外と時間は経ったようで風呂の扉が開いた音がした。


「久しぶりだったねー、一緒に入ったの」

「そうね」


 洗面所から声が漏れてくる。


「お姉ちゃん、ほんときれいな身体だよねぇ」

「ひゃっ! ちょっとまなみ?!」

「ふふふ……良いではないか良いではないかー!」

「ちょっと! こら!」

「だってさー、私は全然育たたないのにおっぱいもこんなに……」

「ひゃんっ! ちょっと?!」


 テレビの音量をあげた。


「あ、康貴にぃー!!!」

「ん?」

「ごめんー、着替え忘れちゃったの! 取ってきてくれる?」

「は?」


 今なんて言ったこいつ……?

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