久しぶりの
「ねえ、康にぃ?」
「ん?」
夏休みに入っても家庭教師は継続だ。
まなみの頑張りが大きかっただけだが、きっかけにはなったということで高西家の両親はわりと満足してくれてるらしい。
俺も教えるために改めて勉強し直したりするおかげで2学期の成績には期待ができそうだ。
「たまには康貴にぃの部屋行きたいー」
「俺の部屋?」
「そうー! 昔はよく言ってたのにもう何年も行ってない! 久しぶりに行きたい!」
まなみが来ると言ったらむしろうちの両親は歓迎だろう。多分愛沙も連れて来いというが……。
「まあいいか」
「やった! お姉ちゃんにも言わなきゃ!」
俺が何もしなくても愛沙を呼んでくれるようなので、黙ってまなみを部屋に向かわせた。
◇
「お姉ちゃんお姉ちゃん!」
「ん? 康貴の家庭教師終わったの?」
突然部屋を訪ねてきたまなみに対応するためにメガネを外して振り返る。机に向かう時だけは最近つけるようになっていた。
「あ! お姉ちゃんも勉強してたのかー」
「宿題は早く終わらせたいから」
「そだよね! 康貴にぃも順調に進めてるみたいだよー」
「そう……」
昔から康貴はそのあたり、真面目にコツコツやるタイプだ。変わってないんだなってちょっと安心した。
「で、どうしたの?」
「あ、えっとね! 前言ってた康貴にぃの部屋に行くの! オッケーだって!」
「そう……康貴の部屋に……え? 康貴の部屋?」
「うん!」
大きく頷くまなみ。
そんな話……あ、ちょっとした気がする。まなみがやたらと行きたがってたから頼んでみたらと言ったんだった。
多分断りきれない勢いだったと思う。心の中で康貴に謝っておいた。
「じゃあ楽しんできてね」
「え? お姉ちゃんも行くんだよ?」
「え?」
「康貴にぃも来て欲しそうだったよ!」
康貴が!?
「んー、まぁなんとなく、だけど」
「そう……」
康貴が来て欲しそう?!
まなみの前で顔に出ないようにしないと……!
でも、え? 康貴が? 来て欲しいって!?
「お姉ちゃん?」
「あっ! なになに?」
「えっと、いつ行くかなと思って! お姉ちゃん予定ある?」
「ない!」
あってもそんなのキャンセルしていく!
「だよね。そういうと思ったので、私の勉強が終わったら行きます!」
「え?」
「じゃ、準備して待っててねー!」
「え? え?」
今日?!
聞いてない。聞いてない!
大丈夫かなちゃんとした服洗濯してたかな!? 今日ちょっと前髪の調子悪かったんだけど……あとは……あとはえーっと……。
「あ、久しぶりにおばさん達にも会うんだ……」
康貴をちゃんと意識してからはなかなかゆっくり話す機会もなかった。
「緊張……してきたかも……」
これは先延ばしにしていたらきっと、何も手につかなくなってた。
まなみの即断即決に感謝しながら準備を始めた。もしかしたらその辺りも計算済みなのかもしれないなと思いながら……。
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