第10話 怪鳥
阿修羅、以蔵、一馬の3人は修を探し求めた。交通網が麻痺してるため空を飛べる以蔵の存在はありがたかった。
「俺は避難所に残る、もしかしたらここに修が来るかも知れないからな?」
一馬が言った。汗臭いのはもう懲り懲りだ。以蔵は阿修羅をおんぶして空を飛んだ。
「それにしてもアイツは力があるな?」
救急車のサイレンが鳴り響く。
「修じゃないだろうな?」
『回復』を使えるアイツに死なれたら、医者が足りないかもしれないのに大変になる。
どこかのオッサンだった。頭に包帯をグルグル巻いており血が出ている。
「腹が減ったなぁ、ねぇそこの美人のナースさん飯まだ?」
やたらと胸がデカい。
「ワタシに聞かれても……」
爆発火災による黒煙や熱風で遮られ、救助のヘリコプターが墜落するという二次災害も起きてしまう。政府も次第に打つ手がなくなり、上総首相や西野官房長官は絶望的になる。
そんな窮地に際し、俳優のアカギ・カツヤと地下鉄に閉じ込められた修など、乗客たちは脱出を試みる。修は腕を窓ガラスの破片で切ってしまったが『回復』を使ってすぐに動けるようになった。
自動車会社副社長のサイガ・タツヤの妻は、社長のナカシマ・ハルオの娘マリエだったが、2人の関係は冷え切っていた。
タツヤは、大学時代の同級生のヤクモ・ランを何かと気にかけており、マリエは嫉妬にかられていた。
「ワタシの知らないところで何をしてるのか分かったもんじゃない」
そんな折、新宿を大地震が襲い、高層ビルやハイウェイが倒壊した。市民は地下駐車場に避難したが、ハルオは死亡。そこへ余震が襲い、マリエも生き埋めとなる。
タツヤは、若い男性と共に救出活動を行うが、翼を広げた怪鳥が襲いかかってきた。
以蔵はプテラノドンみたいな怪物にビビって『地震』の魔法を再び使った。
「あんまり意味ねーんじゃん?」
阿修羅が以蔵につかまりながら言った。
阿修羅は『暴風』の魔法を使い、プテラノドンみたいな奴を吹き飛ばした。
「怪鳥こえーな!?」
避難所に急患を装った3人のゲリラが潜入し、銃撃戦が始まった。1人は筋肉隆々のイガラシ・ショウに射殺され、残りの2人は様々な細菌類が保存されている部屋へ逃げ込んだ。そこで、1人が撃たれて倒れた拍子に薬剤のガラス容器を割ってしまい、感染性の強い病原菌に感染してしまった。
残る1人は逃走し、乗り捨てられていたドローン型バイク『グリフォン』に跨った。
避難所で細菌兵器の研究を行っていた上総軍は、スキャンダルの発覚を恐れてチチジマ大佐にゲリラの行方を捜索させ、彼は射殺されたゲリラの所持品からSuicaを発見する。チチジマは特殊な機械を使ってSuicaを調べた。宇都宮から来たようだ。
また乗客名簿の中から、著名なニイジマ・ヒロシ博士が乗車していることを知った一馬は、イガラシと共にニイジマ博士に連絡を取り、ゲリラを探し出して隔離するように伝える。
ニイジマは合流した元妻ミライや修、アカギ・カツヤと共に瓦礫の街を捜索し、公衆便所でゲリラを発見する。しかし、彼は既に感染しており、その状態で街を徘徊していたため、500人に感染の疑いがかけられてしまう。一馬はヘリコプターを派遣して、感染したゲリラを回収しようとするが、ゾンビ化してしまい、ゲリラの回収に失敗する。イガラシは回収したゾンビの死体の検査を実施して解毒方法を探り、一馬は『グリフォン』を青梅に誘導して、そこに医療チームを派遣させて隔離施設で乗客に精密検査を受けさせることに決める。
『グリフォン』が無事に青梅に到着すると、そこには完全防備したテロリストたちが待ち構えており、乗客たちを管理下に置く。その様子を見た修は、かつて憲兵によって収容所送りにされた過去を思い出して錯乱状態に陥る。
一馬はかつて青梅に来たことがあり、赤塚不二夫の描いたお粗末くんやイヤミの壁画があった。
テロリストは修や一馬を人質にしていた。ニイジマ、アカギ、ミライも一緒だった。
列車は奥多摩に向けて発車するが、途中で橋梁を通過することを知った修は絶望する。つい最近、だいだらぼっちが破壊し、崩落の危険性が指摘され周辺住民たちも立ち退いている場所だった。
修から話を聞いたミライは、一馬に事情を聞くようにニイジマに伝えるが、一馬は「安全性は確認されている」と答えるだけだった。
一馬は上層部の命令で、乗客たちを橋梁の崩落事故に見せかけて口封じするつもりだった。上総にこれ以上反発すれば処刑もあり得る話だ。
ミライは病室で治療を受けていたゾンビたちが感染症から回復したことを理由に列車を止めるように訴えるが、一馬は苦悩しつつも命令を実行に移そうとする。
ニイジマは列車を止めるように訴えるが、車内のテロリストには聞き入れられずに追い返されてしまう。
一馬は橋梁に到達する前に列車を止めるため、ミライや、貨物室に忍び込んでいた麻薬売人の以蔵、麻薬捜査官の阿修羅と協力して機関車を制圧しようと試みてテロリストと銃撃戦を展開するが、武装したテロリストに阻まれて失敗する。一馬は調理室でガス爆発を起こして列車を切り離そうと考えつくが、ニイジマが列車の側面から機関車に乗り込むことを志願し、同時並行で作戦を実行することになる。
しかし、ニイジマは敵兵に見つかれ射殺された。ダダダダダッ!マシンガンが咆哮を上げた。
阿修羅は調理室を爆破しようとするが、導火線の火が消えてしまい窮地に陥る。そこにライターを持ったアカギが現れ、自身を犠牲にして調理室を爆破する。
阿修羅たちは橋梁に到達する直前に食堂車よりも後方の二等車両を切り離すが、一部の乗客とテロリストを乗せたままの機関車と一等車両は橋梁に進入し、崩壊に巻き込まれて川に転落。
難を逃れた二等車両の阿修羅や乗客、テロリストたちは列車を降りて脱出する。詳細を知らないイガラシは「乗客は崩落事故で全員死亡した」と上層部に報告するが、一馬に非難され罪の意識に苛まれる。
一馬はもう少しでテロリストを射殺しそうになったことに恥じていた。
阿修羅、以蔵、修、一馬は奥多摩で宿を探していた。
妻のマリエを失ったサイガ・タツヤと食堂で行き合う。タツヤは納豆定食を食べている。
「人間って愛する誰かが生きてるからこそ、どんなに辛くても生きていけるんですよね?」
タツヤが言うと一馬たちは亡くなったエリカのことを思い出した。
いつも誰かが困っていたら優しく声をかけてくれた。
そのとき、ギャアギャア!と不気味な鳥が飛来してきた。阿修羅はその鳥が姑獲鳥であることを知る。
「夜行遊女」「天帝少女」「乳母鳥」「鬼鳥」ともいう。鬼神の一種であって、よく人間の生命を奪う。夜間に飛行して幼児を害する怪鳥で、鳴く声は幼児のよう。中国の荊州に多く棲息し、毛を着ると鳥に変身し、毛を脱ぐと女性の姿になるという。
他人の子供を奪って自分の子とする習性があり、子供や夜干しされた子供の着物を発見すると血で印をつける。付けられた子供はたちまち魂を奪われ、ひきつけを起こすとされる。
右衛門は渋谷の駅チカのコンビニで須藤聖子というヘルパーに出会う。聖子は、11歳になる娘の誕生日プレゼントにつがいのテディベアを探していたが、店内にはなく諦める。右衛門は阿修羅たちに合流しようとしたが、新宿での大震災で頓挫してしまった。GPSを使ったところ奥多摩に向かったことが分かった。
瓦礫の街の新宿とはうって変わり、渋谷は街自体はいつもどおりだ。テレビで地震専門家は『こんなタイプの地震はいままで経験がない』と話していた。
聖子に興味を持った右衛門は、彼女の住所を探し出し、彼女を驚かそうテディベアを盗み出す。田園調布駅近くにある聖子のアパートに手紙とテディベアをこっそり置いていく。しかし駅に入ってくところを、聖子に見つかってしまう。
「ストーカー!待ちなさい!」
聖子は彼を追いかけるが、その途中、右衛門は突如カラスに攻撃され、額に怪我を負う。右衛門を捕まえた聖子は、何故テディベアなんて置いたのかを問い詰める。
「別のもんがよかったか?」
「そうじゃないわよ!気持ちが悪いのよ!?困ってるとは言ったけど、こんなことしないでしょ?普通!」
「恩を仇で返すのか」
右衛門はビービー泣き出した。
「泣かないでよ!」
右衛門は聖子と次第に仲良くなり、北見恵一や北見小雪を紹介される。また右衛門は、実業家である佐伯翔馬とも友達になるが、後に翔馬は聖子の愛人だと判明する。
「昔、素晴らしい女医がいました。その方は今は亡くなってしまいました」
翔馬が赤ワインを飲みながら言った。
「もしかして、エリカっていいません?」
「ええっ!?彼女をご存知なんですか?」
「同志ですから。美人だし?いつかやりたいと思ってました」
その日の夜、右衛門が翔馬の家に滞在中、カラスが窓に突撃してそのまま死んでしまう事件が起きる。
さらに翌日、東京ビッグサイトで開かれた北見小雪の新作パーティで、カラスの大群に攻撃され、夜には大量のカラスが田園調布の聖子のアパートに侵攻する。さらに阿修羅から電話があり、奥多摩で住民が鳥に殺されたことを知らされる。
北見恵一は連日続く鳥の脅威に怯え、右衛門に別居中の小雪の様子を見に行ってほしいと頼む。
「右衛門さんはカジノとかやらないんですか?マカオに今度行きましょうよ?」
「それは楽しみですな?」
右衛門は神泉にある小雪のマンションに向かう途中、空から降りてきた阿修羅と以蔵を見つけた。
「久しぶりだな?」と、阿修羅。
「一馬と修は?」
「奥多摩に残ってる」
阿修羅はさらにお台場にタイムマシンの基地があることを教えてくれた。
「よし、これでエリカを仲間に出来るぞ」
右衛門は飛び跳ねて喜んだ。
「だけど警備がメチャクチャ厳しい。砲台とかドローンとかうじゃうじゃいるんだ」
以蔵が言った。彼らは偵察に行っていたようだ。
マンションに近づくと、膨大な数のカラスが集まっていることに気付く。恐怖を覚えた右衛門は、マンションの中にいる小雪に外出しないようにスマホで連絡した。
カラスは逃げ惑う右衛門らを攻撃し、阿修羅が怪我を負った。頭をついばまれ鮮血が飛び散った。
修がいれば『回復』出来たのに!以蔵は人選を間違えたことに後悔した。
以蔵は『飛空』を使って空に舞い上がり、日本刀でカラスを退治した。
右衛門は『吹雪』を使ってカラスたちの視界を封じ込めた。
そこを阿修羅がショットガンで狙撃した。
吹雪がおさまり視界が開けるとカラスの死骸が大量にアスファルトに落ちていた。
その後右衛門は、渋谷駅チカのレストランで聖子と落ち合った。何人かの客は、自分たちが遭遇した奇妙な鳥の様子を口々に語っていた。「世界の終わりなのかしら?地震に吹雪、カラス」と、聖子はピザを食べながら言った。
聖子の主人もヘルパーをしていたが心筋梗塞で朝ベッドの中で死んでいたらしい。
「何もしてもいい世の中、施設長は徹夜で主人を働かせた」
「サラリーマンは大変だね?」
「あっ、テディベアだけど娘がすごい気に入っていた」
「今度、娘さんに合わせてくれ」
その様子をチンピラみたいな男がタバコを吸いながら、窓の外から見ていた。
さらにガソリンスタンドもカラスに襲撃され、給油中の店員がついばまれて死んでしまう。
ガソリンが道に流れ出し始める。メラニーは、流れ出たガソリンに気づかずに近くでタバコを吸っていた、チンピラは新しいタバコにマッチで火をつけマッチを地面を落とした。
火はたちまちガソリンに引火し、チンピラは炎に包まれ、ガソリンスタンドは大爆発する。右衛門は『吹雪』を使って鎮火させた。
人々をカラスの大群が襲いパニックになる中、聖子はコンビニに逃げ込む。過酷な扱いにキレた店長がマシンガンで客を蜂の巣にする。
「この10年1日も休んでねぇや!俺を殺す気か!?」
そこへ駆けつけた右衛門が彼女を救助してレストランに戻ると、翔馬の奥さんが聖子に詰め寄り、「この!泥棒猫!」だと罵る。
聖子と奥さんが佐伯家の家に行くと翔馬が小雪を鳥の攻撃からかばって亡くなっていた。
「どこまで侮辱すれば気が済むの!」
奥さんは小雪と聖子にビンタを喰らわせた。
小雪と聖子、佐伯光子は、窓やドアに板を打ちつけて家に立てこもった。次から次へとカラスが家を攻撃し、ドアや窓を突き破ろうとする。夜になり攻撃が収束し一同が眠る中、聖子は上階から物音がすることに気付く。彼女が一人で上階のベッドルームに行くと、大量のカラスが屋根を壊して入り込んでいるのを発見する。カラスの激しい攻撃に聖子は気絶してしまうが、騒ぎに気付いた小雪が彼女を部屋から助け出した。
酷い怪我を負った聖子を見て、小雪は彼女を病院に連れて行くことを決意する。カラスが家の周りをびっしりと取り囲んでいたが、小雪はなんとか車を車庫から出した。
カーラジオでは鳥の攻撃は近隣に拡大していると報告し、市民レベルではこの怪奇な攻撃に対抗することが不可能なため、軍隊の出動を提案していた。何種類もの、何千羽もの鳥が佐伯家のまわりに密集する中、聖子、小雪、光子を乗せた車はゆっくりと進んでいくのだった。
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