第3話 北海道大激闘

 2020年2月、北海道沖の深海に異世界と繋がる割れ目が生じ、そこから現れた妖怪『アイヌソッキ』が函館を襲撃。  

 アイヌ民話で北海道の内浦湾に住むと伝えられる人魚によく似た伝説の生物。八百比丘尼の伝説と同様、この生物の肉を食べると長寿を保つことができるという。

 陸海空軍の6日間に渡る総攻撃によってこれを駆逐することに成功する。鳥海一馬も海軍に所属して戦った。

 だが、その後も別の怪獣が次々と出現し函館を襲うようになった。

 阿修羅や以蔵は一馬に力を化した。

「悪いな?」

「同じ鳥族の仲間じゃないか?」

 阿修羅は一馬の肩をポンッと叩いた。

 巨大なタコの怪物には苦戦した。足を広げると1ヘクタールもの大きさで、船やクジラも一呑みにしてしまう。体全体が赤く、アイヌに古くから住む、アトゥイ(アイヌ語で海)って老婆はアッコロカムイという妖怪であると教えてくれた。海はもちろん、空までが体色を反射して赤く染まっていた。


 船がうかつに近づくとアッコロカムイに丸呑みにされてしまう。一馬たちは海や空が赤く染まっている光景を見ると決して近づかず、接近するときは大鎌やショットガンを携帯した。


 一馬たちが海に出てる間、巨大なクモの怪物『ヤウシケプ』が現れ、家々を破壊し、土地を荒らし回った。エリカと右衛門も助っ人に現れ、麻酔銃や殺虫剤で戦ったがナカナカ死ななかった。

 恐れおののく人々の声は神々の耳に届き、海の神『レプンカムイ』が、地上の人々を救うためにヤウシケプを海に引き取ることになった。そうして函館湾内に引き入れられたヤウシケプは、姿をタコに変えられ、『アッコロカムイ』として威を振るうようになった。

 2匹の巨大なタコの怪物に5人のナイトは苦戦した。ナイトは騎馬兵やサムライという意味もある。

 もはやこれまでか!というときに一馬がパンツァーファウスト3をぶっ放した。

 ドイツのダイナマイト・ノーベル社製の携帯対戦車兵器で、ロケットブースター付き弾頭使用の無反動砲の一種である。名称は、第二次世界大戦中のドイツのパンツァーファウストに由来する。

 弾頭が装填された発射チューブは使い捨て式。ソ連が独自に発展させたRPG-7のようにロケットブースター付き弾頭を用い、射撃姿勢もこちらに近い。使用弾頭はドイツのダイナマイト・ノーベルのPZF 3である。

 ビュンッ!と炸裂音がしてアッコロカムイは粉々になった。

「やるじゃん!」

 エリカに褒められ一馬は照れ笑いした。


 政府は『ペガサス』って秘密部隊を設立し、ロボットを建造した。ギリシアの月の女神『アルテミス』と名づけられた。

 

 アルテミスの活躍によって函館は一時的に平穏が訪れた。気がつけば3月になっていた。『アヅイカクラ』という巨大ナマコが小樽に出現!近づいた漁船をひっくり返したりしたが、アルテミスによる空からのレーザー攻撃により駆逐された。

 アルテミスには阿修羅、以蔵、右衛門、一馬の4人が搭乗した。酔いやすいって理由でエリカはロボには乗らず、負傷者の治療に当たった。


 また、『沖の長老』を意味する『レブンエカシ』という怪物も現れた。アヅイカクラは明け方に出現することが多かったが、レブンカエシは深夜がメインだった。

 奴は8頭ものクジラを飲む込むこともあった。アトゥイの話では、あるときに2人の漁師が飲み込まれたが、腹の中で火を焚いたので吐き出されて命拾いしたものの、レブンエカシの毒にあたったのか、頭髪がすべて抜けて頭が禿げ上がってしまったという。

 レブンカエシもアルテミスのレーザー攻撃の前にはなすすべもなかった。


「俺たちを相手にしようなんて怪物もムチャをしやがる」

 一馬は自信満々だった。

 しばらく怪物も出現しなかったのでエリカと北海道内を旅することになった。札幌駅前のレンタカー屋でマーチを借りてドライブした。

「カズってバイクだけじゃなくて車も運転出来るの?」

 エリカは助手席でプリッツを食べている。

 一馬たちは小樽市にやって来た。マリーナにはたくさんのヨットが帆を揺らしていた。市内にある寿司屋『大和』で昼飯にした。ウニやイクラ、トロ、サーモンに鮭汁……一馬たちはお腹いっぱいになった。

 昼食を終え、小樽運河を眺め、ガラス細工を見て札幌に戻りシティホテルに泊まることになった。

 一馬はソファでエリカとキスした。

「奥さんに叱られるよ?」

 エッチはさすがにしなかった。疲れていたので一馬は昼寝をした。起きると夕焼けが広がりカラスが鳴いていた。

「よく寝てたね?」

 エリカはドラマの再放送を見ていた。

 派手なカッコをした刑事たちが倉庫で銃撃戦してる。

「ドラキュラに血を吸われる夢を見た」 

「変な夢〜」

「夕飯食べに行こう?」

「そのまえにシャワー浴びたい」

 一馬はエリカの残しておいたプリッツを食べながら、スマホアプリでテトリスで遊んだ。水のジャージャーって音がする。どんな体してるんだろうな?想像すると鼻血が出そうだ。

 

 夜の街に繰り出した。大通り駅までメトロで出た。テレビ塔の赤い灯火が宵闇の街を照らしてる。ローソンで肉マンを買って食べ歩きしながらテレビ塔に向かう。

「一馬ってよく食べるね?プリッツ全部食べたでしょ?」

「スマン」

「許さない」

「コワイな〜」 

 エレベーターで展望台まで上がり、札幌の夜景を眺めた。一馬はガチャガチャをやった。ヒグマのピンバッジが当たった。

 それから地下のカレー屋で夕食。

 とんこつカレーって斬新なメニュー、ゆで卵がたくさんのっかってる。

 ホテルに戻って一馬はシャワーを浴びた。

 奥さんは昔は優しかったが、最近は口もきいてくれない。エリカとエッチがしたいな?


 翌朝は7時まで2人ともグッスリ寝た。朝食は和食だった。チェックアウトして函館に向かう。羊ケ丘牧場にはクラーク博士の銅像があった。後方には札幌ドームが見えた。石原裕次郎の石碑も立っていた。

「『太陽にほえろ!』でボスやった人でしょ?」

 エリカが言った。

「『大都会』とか『西部警察』にも出てた」

 羊がモフモフしていて可愛らしい。札幌記念館にも行った。マーチにガソリンを入れ、虻田の昭和新山と有珠山を見た。噴煙が上がり、土石流で道が破壊され陸の孤島になってた。

「自然の力って計り知れないわね?」

「エリカ、腹減らない?」

「人の話聞いてます?」

 近くにある食堂でみそラーメンを食べた。

 一馬は昼寝をするとかで、エリカが運転をバトンタッチした。エリカは海岸通りを爽快に飛ばした。17時頃、湯の川にある平成館って旅館に到着した。

「平成か〜、懐かしいよね?」

 エンジンを切りながらエリカが言った。

 チェックインして荷物を部屋に置き、エリカは風呂に行った。一馬は夕食のあと入るらしい。露天風呂からは競馬場や飛行場が見えた。

 夕食は毛ガニが最高だった。一馬が風呂に入ってる間、ニュースを見た。

 室蘭近海で『アツゥイコロエカシ』という巨大な赤い化け物が現れて、タンカーを飲み込んだらしい。


 怪獣の出現ペースは少しずつ早まっていき、再び人類は劣勢に追いやられていった。


 4月、室蘭を『アツゥイコロエカシ』の大群が襲来。

『ペガサス』のパイロットである西澤ノリオは、同じくパイロットの兄、西澤ハルマとともにミグ戦闘機に乗ってこれを迎撃するが、戦闘で機体が大破しハルマは戦死する。ノリオは、兄の死によるショックと脳への負担に耐え、単独で『アツゥイコロエカシ』を撃破することに成功する。


 5月、怪獣襲来の急激な増加によって戦闘機や戦車の生産・供給が追いつかないことを問題視した上総政府は、戦闘機計画を中断することを司令官・松崎ミチルに告げる。それと同時に、北海道沿岸部に人間を盾として配置する『ペインポーン計画』によって、徹底した防御策に出ることを決定した。しかし、一時は効果を見せていた『盾』も徐々に効力を失っていき、人類は滅亡の危機に瀕していた。


 そんな中、『アツゥイコロエカシ』との戦闘以来パイロットを引退し、飲んだくれた生活を送っていた西澤ノリオの元に松崎ミチルが現れ、パイロットとして『アルテミス』を破壊する計画に参加するよう求める。

「仲間を殺せっていうんですか?」

 ノリオは納得がいかないようだった。

「文句があんのかよ!?」

「そんなつもりは!」

 ノリオは松崎とともに基地へ向かい、破棄されていたはずの戦闘機ドラゴンズブラッドと、そして機体の修復やパイロットの選定を担当する研究者・武蔵坊メイと出会う。

 メイは研究者でありながら戦闘能力も高く、ドラゴンズブラッドの搭乗者に選ばれてもおかしくない実力者であったが、過去のトラウマを知る松崎から搭乗を止められていた。訓練を通してメイの高い実力を認めたノリオは、彼女とペアを組みたいと松崎に進言。それを受け、実験的にメイとノリオをペアとして操縦テストが行われた。  

 

6月、松明をかざしたお化けが樺太に出現した。アトゥイによると、ペンタチコロオヤシという妖怪らしい。

 名称は『松明をかざすお化け』を意味しており、夜中に松明を持って横行し、道を行く人々に様々な怪をなすという。


 右衛門は樺太に派遣された。夜道を歩いていたところ、ペンタチコロオヤシに出遭った。妖怪の持つ松明により、夜のはずが周囲は昼間のように明るかった。

 右衛門は持っていた刀で刺し殺したが、同時に彼も気を失ってしまった。

 やがて目覚めた右衛門はキャンプ⛺へ戻り、翌朝に阿修羅と以蔵が死体を確かめに行ったところ、ペンタチコロオヤシの正体は、性悪のワタリガラスだったという。


 7月、イワエトゥンナイが函館山中で目撃された。一つ目の化け物で、空を飛ぶことができる。進路が障害物で阻まれている際には、樹木であろうが硬い岩であろうが、どんなものでも突き抜けて飛ぶ。障害物に穴を開けて通り抜けるという説もある。

 松崎は、アルテミスを倒す目的でドラゴンズブラッドを出撃させるが、アルテミスの衝撃波により機能停止に陥った上、パイロットの1人であるノリオが腕を骨折する怪我を負ってしまう。

 アルテミスに搭乗していたのは阿修羅、以蔵、右衛門、エリカ、一馬の5人だ。

 エリカは「ゲロ吐くからイヤだ」と最初は断ったが、「ロボを改良して酔わなくさせた」って一馬の罠にかかり乗せられた。

 アルテミスは人数が多いければ多いほど強くなるって噂だ。

「上総の奴、俺たちを破滅させるつもりだ」

 阿修羅がコックピットで叫んだ。

 バケモノを退治するために出撃したが、そこにドラゴンズブラッドが待ち伏せしていた。

「でも、倒したからよかったじゃないですか?」

 一馬はレーザービームでバケモノも駆逐した。肉片の雨が降ってくる。

「やるじゃねぇか!」

 一馬は阿修羅に褒められ上機嫌だ。

「ヒャッホーイ」

 しかし喜ぶ間もなく、イワポソインカラが出現!大きな目の塊のような姿の妖怪で、岩の中に棲んでおり、アルテミスを破壊しようと飛散してきた。

 松崎は、負傷したノリオの代わりに自らがドラゴンズブラッドに乗り込み、メイとのペアで出撃する。

 2機が函館山山頂に到着すると巨大な怪物が出現した。

 伝説によれば、石狩川の奥地の山の斜面に、キムナイヌがいるために泊まってはいけないといわれた土地があった。キムナイヌは足が速い上に力も強く、クマでも何でも追いかけて手掴みにして殺すが、タバコに火をつけて差し出せば、人を殺すようなことはしないという。

 着陸し、松崎が山の中でタバコを吸っていると、キムナイヌは寄って来る。 

 ギャウウッ!!咆哮を立てて松崎を鉤爪で切り殺した。

 

 血飛沫を上げて絶命する松崎を一馬は見ていた。タバコを少しつまみ取って「山の神さんにあげます」と言えば、害を受けることはないとアトゥイは教えてくれた。

「なんで石狩からワザワザこんなところに来たの?」

 エリカが言った。

「不死身になる玉とかがあるんじゃん?」

 一馬が言った。

「なるほど〜そしたらどうやって倒すのよ?」

 

 山の中で、風もないのに大木が急に倒れた。一馬はメイを助けてやりたかった。最近、同士の修から何の連絡もない。

『6人揃わないと開かない洞窟』の存在を一馬は知っていた。メイを修の代わりに出来ないかな?

「キムン ポネカシ ヤイカ ニー オツイ ナー(山の小父さん、お前さんの上に木が倒れていくよ)」とメイが唱えると、キムナイヌは退散した。


 アルテミスはイワポソインカラをなかなか倒せなかった。

 機械や兵器などは不通であると右衛門は判断した。そこにどこからともなくイノシシが現れた。🐗  

 イノシシは凄まじい力で、イワポソインカラを粉々に破壊してくれた。猪突猛進とはこのことだな?と一馬は思った。

 アルテミスは右腕と右脚を損壊してしまった。5人は徒歩で函館山中を移動することになった。

『アルテミスは搭乗員が少ない方が強くなるんじゃ!?』と、一馬はハッとした。

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