第三話 旅立ち

『第一回、作戦会議を開きます!』

私は部下達に、そう宣言をしたわ。

『会議ニャ?』

『何を話すピヨ?』

『主様、誰を殺すのですか!』

『殺すのなら、わしらに任せるのじゃ』

『殺すのは苦手~』

『マスターのご命令とあらば!』

部下全員が、一斉に念話を送って来たわ・・・。

『うるさーい!発言は私が指名した者のみ許します!』

静かになったわ・・・。

『では今回の議題は、私の移動手段についてね。

先ずはエクレア、貴方の意見を聞かせなさい!』

『マスターを乗せて走るのも、馬車を引いて走るのも、全力で休まず走れます!

是非私にその役目をお与え下さい!』

『分かったわ、でも全力で走られたら私の体が持たないし、それに馬車も壊れてしまうわ。

手綱を持つ必要は無いのよね?』

『はい、マスターは乗っているだけで結構です、私が目的地までお運びいたします』

『それは便利ね、今の所エクレアでの移動が可能な事は分かったわ。

別の移動方法だけど、私を運べるような巨大な鳥はいないのか、ラムネは知ってるかしら?』

『知らないピヨ』

『そう、イチゴはどうかしら?』

『知ってる~、グリフォンとか~ワイバーンなら~、ご主人様を運べるんじゃないかな~』

『それはこの辺りにいるのかしら?』

『いない~、もっと遠くの方にならいるよ~』

『そうよね、近くにいたら危険だものね、イチゴはどちらかを連れて来れるかしら?』

『無理~』

レッドファルコンのイチゴには当然無理な話よね・・・。

『分かったわ、ジェラートは勝てるかしら?』

『わしらには無理ですじゃ、ですが、主殿に提案があるのじゃ』

『何かしら?』

『いきなり強い魔物を捕らえるのは無理じゃが、徐々に強い魔物を捕まえて行く事は可能ですじゃ』

『そうね、魔力も余って来た事だし、ジェラート、強い魔物を捕まえて来なさい!』

『お任せなのじゃ』

『あっ、でも、ゴブリンとかオークとか、気持ち悪そうなのは却下よ!』

『承知したのじゃ』

どんな魔物がいるのか詳しくは知らないわ、ジェラートがまともな魔物を連れてくることに期待するしかないわね。

こんな所かしらね。

なぜこのような会議を開いたのかと言うと、全てはあの強欲商人ども達のせいよ。

それは冬が明けて、絨毯を買い求めに商人がやって来た時の事だったわ。

お父様は、私が言ったように絨毯を買い占めていたわ。

絨毯を買いに来た商人は困り果て、お父様の所にやって来たわ。

ここまでは想定済みよね。

「貴様が暴利を貪っていた事実は把握済みだ、速やかに今まで荒稼ぎしていた分を支払ってもらおうか!」

「これは異な事を申される、私は適正価格で買い取らせていただいておりました。

ここの絨毯がたまたま人気が出て、値段が上がって行っただけの事、流行り廃りはその時の運でございます。

ですので今回も、私に買い取らせては頂けないかと・・・」

「ならん!貴様が金を支払うまで売ることは出来ん!」

「そうでございますか、残念ですが私はこれで失礼させていただきます」

そう言って商人は何も買わずに帰って行ったわ。

このようになるのは、ある程度予想していたわ。

でもこの後起こる事までは、予想できていなかったわ・・・。

お父様は、不当な利益を得ていた商人を懲らしめてやるべく、王都に陳情に向かったわ。

しかし、そこでの結果は散々な物だったわ。

商人の取引は適正な物だったと認められ、逆にお父様の方が取引の邪魔をしたとお咎めを受けたわ。

「ふざっけんじゃないわよ!」

私はベッドの枕を散々殴りつけたわ・・・。

「はぁはぁはぁ・・・」

今フローラ姉さんと、ナディーヌ姉さんは外で魔法の訓練をしているから、少し暴れたくらいでは気が付かれないわ。

そう思っていたけど、私の部屋にマリエールお母様が心配そうな表情を浮かべて入って来たわ。

「キアラどうしたの?そんな汚い言葉を使って・・・」

「ごめんなさい、商人の顔を思い出してしまって・・・」

「そう、あの商人は酷かったですからね・・・でも、汚い言葉を使ってはダメよ!」

「はい、マリエールお母様」

マリエールお母様は私を優しく抱きしめて、頭をなでてくれたわ。

貴族の娘として生まれてから、礼儀作法や言葉遣いは綺麗になったけれど、心の中まで綺麗になった訳では無いわ・・・。

どうしても頭に血が上ってしまうと、元の性格が出てしまう、これは何とか治していきたい所よね・・・。

暫くそうしていてくれたけど、私が落ち着いたのを確認して部屋を出て行ったわ。

お父様が受けたお咎めは、口頭で注意する程度の物だったから良かったわ・・・。

何故そのようなことが分かるのかと言うと、お父様にこっそりチョコの部下を一匹つけさせていたからよ。

それと、私の部下たちは、人の言葉と文字が分かるらしいわ、どうやら、私の記憶から勉強したらしいわ・・・。

契約した部下達とは魂でつながっていて、私の記憶を見ることが出来るらしいのよ。

まぁ部下たちに見られても問題は無いけどね、だけど、その逆は出来ないようだわ。

不公平のようにも思うけど、全ての部下の記憶を見ると気が狂いそうになるだろうし、見たくも無いわね。

話は戻るけど、お父様がお咎めを受けた理由は何となく想像できるわね。

どこの世界も、政治とお金は切り離せないと言う事よね・・・。

その事を調べる必要がありそうだけど、今はまだその時期では無いし、手駒も少ないわ。

お父様が戻ってくるまでに、準備をしなくてはならないわね。

何の準備かって?

勿論、私が商売を始める準備に決まっているわ!

あの商人が手を回したのか、それとも貴族が手を回したのかは分からないけど。

このブランタジネット男爵領に、今まで来ていた商人も来なくなってしまったのよ!

今の所はまだ問題無いけど、作っている塩は買い取って貰えなくなったから溜まっていくし、作っている人の生活が危ぶまれるわ。

塩だけでは無いわ、蜂蜜もそうだし、お酒や香草などは商人から買わないと手に入らない物だから、領民から不満が噴き出て来るわね。

幸いな事は、食べ物に困る事は無いと言う事ね。

今までお父様やご先祖様たちが、自給自足出来るように畑の開墾を行ってきたお陰ね。

私はこれを止めようとしたけど、必要な事だと思い知らされたわ。

他の領地に頼っているようでは、今回のような事が起きた場合困るから、逆に食料を売る事が出来るくらいにしておいた方がいいのかもしれないわね。

でもそれは、お父様と相談してからよね。

私が今やるべき事は、兄さん達に領内で必要な物を調べて貰う事ね。

それと、近くの街や、他の領地の特産品なども調べておいた方がいいわね。

私は兄さん達にそのことを伝えると、快く引き受けてくれたわ。

部下を各街に送らないといけないけど、数が足りないわね・・・。

『ラムネとチョコ、貴方たちの仲間を連れてきなさい』

『分かったピヨ』

『主様、承知しました』

そして、ラムネは五羽、チョコは十匹の部下を連れて来たわ。

それを私の部下にし、ブルーバードが九羽、ネズミが十六匹になったわ。

まだネズミを触るのには、少し抵抗があるけど仕方が無いわね。

家の中に侵入出来て色々調べるには、ネズミが最適よ。

それにブルーバードでの外から監視を合わせれば完璧になるわ。

連れて来られたネズミが何処にいたのかは、深く考えない事にした方が良いわね・・・。

『ラムネとチョコは、部下達を近隣の街に一匹ずつ分けて配置しなさい!

それと、チョコ達の移動は、エクレア、頼んだわよ!』

『マスター、了解しました!』

これで後は、お父様が家に帰ってくるのを待つだけだわ。

私は、フローラ姉さんとナディーヌ姉さんの所に行って魔法の訓練をしようと思い庭に出た所で、ジェラートとその部下達が戦闘しているのが分かったわ。

この近くでは無く、遠くの森の中の様ね。

私は部下たちが、どのような状態でいるのかは分かるわ。

あっ、ジェラートの部下が一匹、戦闘不能になって私の所に戻って来たわ。

そして、また一匹、更にもう一匹と、戦闘不能になって行っているわ。

余程強い魔物と戦っているようね・・・。

戦闘不能になっても死ぬ事は無いし、一日すればまた呼び出せるからいいのだけど、あまり無理はしないで欲しいわね。

いくら、また呼び出されるからと言っても、痛みは感じるでしょうからね。

結局ジェラート一匹だけを残して、全員戦闘不能になったわ・・・。

『ジェラート、無事なのかしら?』

『主殿、無事ですじゃ、今からそちらに魔物を持ってきますのじゃ』

『分かったわ、森の前まで行っているわね』

シルバーウルフのジェラートに、家の庭まで来てもらう訳にはいかないわ。

私はフローラ姉さんに部下を迎えに行くと断りを入れ、少し離れた所にある森まで来たわ。

暫く待っていると、何か白い物を咥えたジェラートが姿を現したわ。

『ジェラート、それが今回捕まえた強い魔物なの?』

『そうですじゃ、不甲斐ない部下達で申し訳ないのじゃ』

『いえ、それは構わないわ、犠牲が出るほど強い魔物と言う事でいいのよね?』

『そうですじゃ』

『では契約するわね』

私はジェラートが咥えている魔物に触れ、契約の呪文を唱えたわ。

『ほーほっほっほ、あなたが私の主ね!』

『そうよ、あなたはフクロウ?』

なんだか生意気そうなやつね。

『ほーほっほっほ、スノウオウルよ!』

『そう・・・では貴方の名前はわたがしよ!』

『ほーほっほっほ、もう少しましな名前は無いのかしら?』

『無いわ!しかし、ジェラートは飛べないから捕まえるのに苦労をするのは分かるけど、戦闘不能にされるというのはどういうことなの?』

『それはですじゃ・・・』

『ほーほっほっほ、私が説明して差し上げます、雷の魔法を使える私にとって、シルバーウルフなど敵では無いですわ』

『でも負けたのよね?』

『ほーほっ、そ、それは、卑怯にも数で押し負けたのですわ!』

『そういう事にしておきましょう、ジェラート、まだこの近くにわたがしより強い魔物はいるのかしら?』

『いますのじゃ、ブラックパンサーとグリーンスネークとジャイアントスパイダーですじゃ』

『そう、ブラックパンサーはいいとして、蛇と蜘蛛は却下よ!』

『承知したのじゃ』

『あっ、その蜘蛛と蛇は巨大なのよね?』

『そうですじゃ』

『では、小さくて強力な毒を持った動物か魔物はいるかしら?』

『それは、ゴールデンスネークかベノムスパーダーですじゃ』

やっぱり蛇と蜘蛛なのね・・・どっちも嫌だけど、蛇の方がましだわ。

『それでは明日、ジェラートの部下が復帰出来てから、ジェラートとわたがしは、ブラックパンサーとゴールデンスネークを捕まえて来なさい!』

『承知したのじゃ』

『ほーほっほっほ、任せなさい!』

そして翌日、ジェラートとわたがしは、見事にブラックパンサーとゴールデンスネークを捕まえて来たわ。

蛇に触るのには少し時間が掛ったけど、我慢して触れたわ。

ひんやりとしてて、気持ち悪かったわね・・・。

『ブラックパンサーの名前は、ティラミスよ!』

『ボス、素敵な名前をありがと~』

『ゴールデンスネークの名前は、クッキーよ!』

『ご主人様、僕頑張ります!』

『ジェラートご苦労様、またしばらく魔物は増やさなくていいわ、村の周辺の警備をしていて頂戴!』

『承知したのじゃ』

『わたがしは、この家の防衛しなさい!』

『ほーほっほっほ、分かったわ!』

『ティラミスとクッキーは、ジェラートを手伝いなさい!』

『ボス、分かりましたわ』

『ご主人様、僕も分かりました』

流石に魔物を三匹増やしたから、魔力がきつくなってきたわ。

この周囲にこれ以上強い魔物はいない様だし、しばらくはこのままで魔力が増えるのを待つ事にするわ。

しかし、どこまで魔力は増えるのかしら?

魔力が増え無くなったら、可哀そうだけど、外に出している部下達を少し引っ込めればいいわね。

それから半月後、お父様が王都から帰って来たわ。

そして、私と兄さん達は、お父様の書斎に呼び出されたわ。

「「「お父様お帰りなさいませ」」」

「うむ、ただいま」

お父様の表情は優れないわ。

「皆すまん、私の陳情は認められなかった、力無き父を許してくれ!」

お父様は私達に頭を下げたわ。

「お父様は悪く無いです!」

「そうです、お父様あたまを上げてください!」

「悪いのは商人なのですから!」

兄さん達が、必死にお父様に頭を上げるよう説得してたわ。

「それで、領内の状況はどうなっている?」

頭を上げたお父様が、兄さん達に聞いたけど、三人とも黙ったまま何も話さなかったわ。

「お父様、他の商人が来なくなりました」

仕方が無いので私が報告したわ。

「やはりそうか・・・王都まで足を運んだから、寄り親であるアルベール公爵様にお会いしてきたのだ。

その時今回の件を話したら、その様な状態になるかも知れないと言われた。

商人ギルドは、ウルアノス公爵様との結びつきが強く、アルベール公爵様も手が出せないのだとおっしゃっていた。

だが心配する事は無いぞ、アルベール公爵様はどんなことがあっても支えてくれると言って下さったからな」

お父様はそう言ったけれど、果たして男爵のお父様にどれだけの支援をしてくれるかは、分からないわね。

私は、兄さん達が纏めてくれた書類をお父様に渡したわ。

「お父様、それが現在領内に足りない物資になります。

緊急性が高い物は少ないですが、後一月滞ると、領民から不満が沸き上がって来る事でしょう」

お父様は、渡した書類を真剣な表情で見つめていたわ。

「うむ、分かった、何とかしよう・・・」

「いえ、お父様、その役目は私にやらせてください!」

「ふむ、キアラがそう言うとは思っていたよ・・・フレデリック、カルロス、リュファスはどう思う?」

「私は反対です、キアラは八歳になったばかり、外の世界では相手にされないでしょう」

フレデリック兄さんは反対したわ。

確かに最初は相手にされないかも知れないわね、でもそれは商売を始める人全員に言えることだわ。

「俺は賛成だな、キアラは俺達以上に頭が良くて、魔法も使える。

上手くやって行けると思うよ」

カルロス兄さんは賛成してくれたわ。

やはり同じお母様からの血を引いてるから、贔屓してくれたんだわね。

「僕も賛成かな、でも重い荷物を運べるかが心配だね・・・」

リュファス兄さんの言った事は、私も気にしていたわ。

この体では、まだ重い物が持てないわ。

塩の入った小さな壺は持てるけど、小麦の入った袋は無理だわ。

部下達に運ばせるのも・・・無理だわね・・・。

「と言う事だが、キアラ、重い荷物を運べるか?」

「いえ、運べません・・・ですが、誰かを雇えば何とかなると思います」

信用の置けない人を雇うのには抵抗があるけど、背に腹は代えられないわ。

「そうか、雇ったとして、お金を払って行けるのか?」

「それは・・・まだ分かりません」

私は嘘をつく訳には行かないので、正直に答えたわ。

だってそうでしょう、商売なんてやった事も無ければ、アルバイトもした事は無いわ。

物の値段は分かっていて、何処から何処に運べば儲かるかも分かってはいるけど、それが上手く行くという保証はどこにもないわ。

やってみなければ分からない、と言いうのが今の現状よ。

「それならば許可する事は出来ないな!」

お父様の言う通りなので、反論する事は出来ないわ・・・。

「しかし、キアラは魔法使いだ。

この様な便利な物があるぞ!」

お父様はにっこりと笑って、机の上に魔石の付いた小さな袋を乗せたわ。

「お父様これは?」

私が聞くと、お父様は自慢げに説明してくれたわ。

「これはな、収納の魔道具と言って、大量の荷物を入れて置ける代物だ。

これがあれば、キアラでも重い荷物の運搬が可能となるぞ。

ただし、これを使うには大量の魔力を必要とし、普通の魔法使いでは使いこなせない物だ。

キアラに、この魔導具が使いこなせる様であったならば、商売を始める事を認める事にしよう」

お父様はそう言って、私に収納の魔道具を手渡してくれたわ。

わたがし、ティラミス、クッキーを部下にしてから半月、私の魔力はさらに増えているわ。

問題無く使いこなせるはず!

私は袋についている魔石に触れ、魔力を流し込んだわ。

結構な魔力を持って行かれたけど、問題無く使える様ね。

「お父様、問題ありません」

「そうか、先程言った通り、キアラに商売を始める許可を出そう!」

「お父様、ありがとうございます」

「「「キアラ、おめでとう」」」

兄さん達も祝福してくれたわ。

私が兄さん達に抱き付くと、優しく頭を撫でてくれたわ。

私は兄さん達から離れて、お父様と向き合ったわ。

「お父様、これは非常に高価だったのでは無いのですか?」

「うむ、だがキアラが心配する必要は無い、我が家は貧乏だがそれくらいの貯えはある、わはははは」

お父様はそう言って笑っていたけど、相当無理をして買ったんだわ。

必ず商売を成功させて、お父様に恩返しをしなくてはね。

「それと、資金として一万ユピス用意した、無駄遣いするんじゃないぞ」

「はい、ありがとうございます」

「後は、王都に出掛ける前にジョセフに頼んでおいた幌馬車が、厩舎の所に用意させている、馬は必要無かったんだよな?」

「はい、何から何までご用意して頂き、ありがとうございます」

私は嬉しさのあまり泣いてしまったわ・・・。

そんな私をお父様は、優しく抱きしめてくれたわ。

「上手く行かなかったり、嫌になった時には、何時でも帰ってきていいのだからな」

「はい、お父様・・・」

私が泣き止むまで、お父様はそうしていてくれたわ。

その後、幌馬車を見に行ったけど、お世辞にも綺麗な物とは言えなかったわね。

恐らく村で使われなくなった物を、譲って貰ったのでしょう。

でも、幌は新しい物が付けられていて、雨漏りする心配は無さそうね。

メイドのクラルに頼んで、幌馬車の中に毛布だけ運んで貰ったわ。

「キアラお嬢様、本当にこれだけでよろしいのでしょうか?」

「大丈夫よ、他に必要な物があれば自分でそろえます、クラルありがとう」

エクレアを幌馬車に繋いで完成ね。

『エクレア、問題無いかしら?』

『マスター、問題ありません』

『そう、これから頑張って貰うわよ』

『お任せください!』

幌馬車の用意が出来たので、お父様を乗せて、塩と蜂蜜の買い付けに向かったわ。

一人で行くつもりだったけど、お父様は私の事が心配だったみたいで、強引について来たわ。

でも、お父様がいた事で、買い付けは問題無く終わったわ。

その日は家に戻って、明日旅立つ事にしたわ。

私はそのまま出立するつもりだったのだけども、お父様に皆に挨拶してから行きなさいと言われて納得したわ。

夕食時に明日出て行く事を伝え、寝る時には、フローラ姉さんとナディーヌ姉さんの三人一緒のベッドで眠ったわ。

少し狭かったけれど、皆で抱き合って寝るのは最高に幸せだったわね。

こんな幸せな日々から離れるのは嫌だけど、ずっとこうして居られる訳でも無いので、我慢しなければいけないわ。

翌朝、家族全員玄関で私を見送ってくれたわ。

「キアラ、頑張るのだぞ!」

「はい、行ってきます」

私は幌馬車の御者台に乗り込み、手綱を握ったわ。

『エクレア、出して頂戴!』

『マスター、畏まりました』

エクレアと共に幌馬車が動き出し、慣れ親しんだ家を後にしたわ・・・。

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