3.SIDE-A_5 してやったり

 円形に並べられた椅子に腰かける僕ら。その中心にの頭上、共有視界上に、譜面の切れ端が三つ浮かんでいる。伯牙は鍾さんの後ろに、エリーゼは僕の後ろに立っている。

 師匠のものと、鍾さんのもの。そして、僕がエリーゼとの共創で歌ったフレーズから、師匠が起こした「僕の」譜面。


「それで、その、碓井先生は、本当に譜面を捨ててしまわれたんですか?」

「うん」

「ええとでも、短いメロディのはずですし、覚えてらっしゃったりは――」

「うーん、覚えてるような、いないようなぁ……」

 過去最高に焦った感じの師匠。にもかかわらず飄々として、ろくな回答を返さない碓井先生。

「じゃ、じゃあ、共創――いっしょに、やってみてもらえませんか?そしたら思い出せるかも」

「そーね」

 ぶっきらぼうに割り込んだ声に、師匠の言葉が止まる。

「じゃーあ、条件いっこつけていい?」

「……何でしょうか」


 碓井先生が、にかっと笑った。


「あたしのと、共創で勝負してみてもらえない?ちゃんと琴瑟相和させて、そのあと決着をつけて。それに勝てたら、あたしとも共創させてあげる。そっちは、何人がかりで来てもいいから」


「へえ!」

 さすがの自信、とでも言いたげな鍾さんのリアクション。


 でも、師匠の態度は少し違った。

、ですか。誰なんですか、その人」

 にんまり微笑んだ碓井先生が、わが意を得たりといわんばかりにそれに答える。

「会わせてあげるわぁ。着いてらっしゃい」

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