(2) 9月16日

  長靴、ジーパン、リュックサック、そして首にタオル。同じ町内の老舗商店の奥様が、難民のいでたちで市役所に現れた。いつも、優しい目をして穏やかな奥様だ。なんとなく、微笑ましくて可愛らしいその姿を見たら 思わず嬉しくなった。

  私も、同じような難民コスチュウムで市役所に朝7時と夕方4時に日参する。

おにぎり2個、水1本、その他使えそうなもの例えば軍手とか、マスクとかをいただく。有難いなとしみじみ思う。

  考えてみると、9月10日から今日までの約1週間、お財布を開けていない。すべて、はどこされたもの。心から日本の国のすばらしさに感動し、感謝した。

  そして、しばらくの間音信の無かった姉から届いた新米のおにぎりと水。凄く美味しかった。友人に貸していただいた軽トラック、娘の友人は孫をずっと預かっていてくれる。食事から、お風呂、寝具、すべてお世話を受けている。本当に頭が下がる。すべての人に心から感謝している。お隣のKさんもしかり。

”大丈夫か? なんでも言えよ!” と、声を掛けてくれる。自営の会社も相当な被害を受けたというのに。皆さんの親切が本当に暖かい。

 そんな中、私の車が水没してしまったので足がなくなってしまい、長年の友人に相談した。凄く冷たい言葉が帰ってきた。文字にもできない。社交辞令でも、造った言葉でもよかった。”こまったね~”の一言だけが欲しかった。

 でも、現実には困っていた。そして、20年前に別れた元の主人に久しぶりに連絡した。すぐに用意すると言ってくれた。言葉通り大きさの丁度いい車が届いた。

 人の心って、こういう時にでるのかとしみじみと思った。

久々にうれしい気持ちになった。



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