♮237:償却ですけど(あるいは、見せない/地獄釜の/奥底)


 何だか、ややこしいルールと思われるけど。


 True or False……「嘘は御法度」というのが、この「ダメ」における大前提の規則ルールだったよね……それがまったくの「解禁」となるってことはつまり……


「運営ぃ、こいつぁ『嘘チーム』の方が圧倒的有利ってことにならねえか?」


 隣の席で、まだその使い道がよく分からない「カード」を片手で弄びながら、翼があまり興味のなさそうな口調で言う。だけど、僕もそう思った。無制限にDEPを盛ることが出来るのであれば、凄まじいものだって「ツクる」ことが出来るはず。


 現にあの姫様の超火力無慈悲DEPのように。いや姫様は「日本語」を解さないゆえに「嘘」と認識できないからこそ虚偽盛りDEPを放てるわけなんだけど、それが無制限って……かつてアオナギが言ってたように「大ボラ吹き祭り」に終始してしまうのでは……そしてそれが片一方のチームだけって……いやよく考えると途轍もなく不利だぞ、『トゥルーチーム』。


<ご心配なされず……やり進めるうちにご理解いただけると思いますが、ベクトルが異なるだけで『トゥルー』も『フォース』も実は同じくらいの困難さを伴うのです……こちらをご覧ください>


 しかし実況はあくまで淡々。向かって真正面の巨大モニターに何かが映る。


「……!!」


 縦横四分割にされた画面には、赤・青・黄・緑のカラフルな「波形」がうねうねと動いていたわけで。これってもしかして……


<そう、これは現在リアルタイムでの、あなたがた対局者4名の、嘘発見器ポリグラフによる波形です……上下のブレが激しくなると、その時点で『嘘』をついている可能性が高いと判断できる指標となります>


 実況の説明は、丁寧に為されるもののその意味はよく分からない。どういうことだろう。


<『トゥルーチーム』は『真実のDEPを放ち続ける体でいなければならない』、逆に『フォースチーム』は『虚偽のDEPを放ち続ける体でいなければならない』。それを踏まえて、お手元をいま一度ご確認ください>


 「お手元」とはこのカードのことだろうきっと。「☆」「★」を無視すると、【T】が4枚、【F】が2枚。「五番勝負」とか言ってたから、一試合に一枚出すと考えると、一枚余る勘定になる。


<『真実』には『虚偽』が、『虚偽』には『真実』が、紛れているはずです……『トゥルーチーム』は五番勝負のどこかでッ!! 『虚偽』のDEPを放たなければならないことになります……>


 うううん、どういうことかまださっぱり全容が見えてこないのだけど。僕らの逡巡をまたしても解することなく、実況は進行していく。


<ただしその時のDEPが、トゥルーチームなら『虚偽』、フォースチームなら『真実』であると考えた時にはッ!! 『ダウト』と宣告する権利が、各々『2回』用意されてございますッ!!>


 分からん……複雑すぎて駆け引きとかどうするとかまでが、まったくの霧の中と表現するに相応しいのだ↑が→。


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