♮186:無骨ですけど(あるいは、全自動/どえらの/スカイブルー)
後乗せルール盛り盛りで、全然対局が始まってくれる気配が無いんだ↑が→。
「……」
呆然と聞き流す僕を尻目にしかし、やっとのことで、戦いが始まりそうな雰囲気だけは呈してきた。リング四方を仕切る3本のロープの上をまたぎ越えるようにして、巨大な金属の「アーム」がキャンバスの上に降りて来る。その先端には肘掛け付きの椅子らしきものが。何か見覚えがあると言うか、もう説明するまでもなく、これに座って対局を行うということだろう。リングの四辺からひとつづつ、そのアームは音も無く僕らひとりひとりの前に付けられているわけで。確か、僕のはじめての「対局」もこのような椅子に座っていたっけ。
係の黒服たちに誘われるようにしてその「シート」に深く腰掛ける僕。五点式のシートベルトをかっちりと装着させられる。きっとこの座面の中央辺りには、敗者の菊門を狙って放たれる電流装置が仕掛けられているのだろう、毎度の如く。
……何か、懐かしさを感じている。僕は少し口許がほころんでしまうのを、意識して引き締めているんだけど、何だろう、この懐かしさは。
「……」
ふと目線を上げると、そこにはいつかの「蒼」のメイド服に身を包んだアオナギがいるわけで。今回は黒一色の隈取りが、その縦に長いご面相を覆っているのだけれど。その正体不明の顔面も、何故か笑顔を、いや笑顔のような何かを形作っているようであり。
「全力で行かせてもらうぜ。勝とうが負けようが、ここが最高峰……剣が峰だと、思うからよぉ」
何だろう、仲間だった時にはついぞ見せなかったそんな真っすぐな闘志を見せられても。やれるんだったら、あの時もやっとこう?
とか、過去の諸々に思いを馳せそうになっていたら、いきなり、シートが上昇し始めた。それと共にリング中央に座していた「卓」も何故か無駄に回転をかけながら、上方へ上方へとせり上がってきたのだけれど。何だこの演出。
リング上空3mくらいで、まるで宙に浮いているかのように雀卓を囲む四人……何だろう、これこそVRとかでやった方がよさそうな、中途半端な地味絵面なんだけど。真顔で向かい合う四つの顔それぞれが、何事かを言いたげに、しかし何を言っていいか分からない的な雰囲気を醸し出している。そんないやな沈黙を打ち破るようにして実況少女の声が。
<賽の目の結果、
正方形の卓の下辺をガンフさん(東)とすると、そこから左回りにアオナギ(南)、翼(西)、僕(北)という並びになる。これもう麻雀だね。
「……」
各自、初っ端からえらいツモ圧で、自分の前に牌を引き寄せてきているよ……そこそんなに力入れるとこなんだろうか。そんなどうでもいい思いを巡らす僕の「配牌」は「4」と「6」。うーん、
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