♭110:剪断かーい(あるいは、私の頭の中の/ねり消し/ニオイ付き)
意気揚々としか表現しかねる、あまりこのご時世お目にかかれぬハイもハイなテンションで呼びかけられたわけだけど。
誰だよ。誰でもいいけど。
背後からの強烈な音声に、私はまためんどうなことになったなぁ、とかそういや昼飯の時間って取られるのだろうかとか色々な思いを巡らせつつも振り返ることにしたのである。
「まさか……こんなにも早くに貴様と当たることになるとは……思わなかったぜ……」
そこにいたのは、何故かJR辺りの駅員の恰好をしたあまりそれ以外に特徴を見出せない二人組の希薄な女たちであったわけで。知り合い? と隣の主任にそう問われるけど、とぼけるわけでも無く、皆目見当つきませんのことよ? というか、
誰? ほんとに誰?
対峙はしたものの、リアクションのリの字も見せない私の凪いだ様子に、焦りを見せるその二人。と、
「ほ、ほら!! 『女流
「いたいた!! 決勝の16人の中に確かにいた!!」
矢継ぎ早に噛んで含めるようなヒントを投げかけてくれるのだけれど。うーんうーん、もうちょっと何かないと……というか、名前を聞かされたところで思い出せるかも自信はないかも……
「ちょ、直接カラみ無かったからかも知れないけど!! 確かにあの時あの場所で、時間空間を共有してたよ!?」
「んもう、最大ヒントッ!! 決勝第一戦第3ピリオドで私らは揃って敗退しましたぁ~、はい!! 思い出しましたねっ!!」
いや分からんて。おそらくこの世界の誰もが分からんと思うよ?
「そぁうっ!! 我こそが、『元ネオ元老』、『
「同じく『
私が思い出した体で名乗りを上げ始めるその駅員服の二人だけど、まったくもって判らんなあ……
「……」
だがひとつ、分かったことがある……
「……」
私は無言で左手首に嵌まった「バングル」を掲げてみせる。それを見た眼前の二人もつられるかのように反射的に同じ姿勢をとるものの。
分かったことは、こいつらはカマせだということ。まあ……そういうことなら……
と、妙に殊勝な気分でSATURIKUへの移行を始めようとした私のまたしても背後で、野太い男どもの断末魔が轟、と背中を煽るほどに打ち付けてきたわけで。
「!!」
振り返った私は今度こそ驚愕した。人が、人がなぎ倒されておる……円状に。その爆心地の中心に何気なく立ち尽くしていたのは、褐色のメイド少女に褐色執事であった。あいつら……アオナギの手の者たちか。初っ端から何たる暴れっぷりだっつうの。
いやそれよりも。
……「平常心400%オーバーで即失格」……みたいなアナウンスが聞き取れた。なるほどなるほど? そんな裏技あるんだー。手っ取り早くて助かるわ。
私は肚に少し力を入れると、私の表情を見てガタガタ震え出した何とかとかんとかという二人組を非常に凪いだ目で見やる。
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