♭111:惨憺かーい(あるいは、スタンディング/マスター/オブザベーション)
「主任、ここは私にお任せあれ」
相変わらず昂揚することのない自分の精神を、何とか宥めすかしていくさ場へと持っていこうとする。傍らの主任は、それほどまで言うのなら……まあ若草さんなら大丈夫と思うけど、と落ち着いた調子で私の背中を押してくれるので。
ちこっとやる気は出てきたわ。初っ端やっぱいちばん大事。と私は改めて鼻から息をつきつつ、気合いを込める。
「対ッ!! きょぉぉぉぉぉぉぉっくッ!!」
腹からの声を出すものの、そんな掛け声が必要なのかは果たして分からない。しかして狙い通り、その大声に反応してくれたのが、「川崎・蒲田コンビ」の他にも何人か。よしよし。
<先手:No.07770>
そしてバングルに表示されたのは私らの数字。先手番、それもラッキー。
全力始動。私は脳内にまたも「拳銃」のイメージを現出させる。ぱきり半分に折れた銃身から現れた弾倉にとっておきの「白金」色の弾丸をひとつだけ押し込み装填する。
……その名は「サリセクス」。……「ヒマリア
左手で架空の「銃」を握る素振りで、てめえのこめかみに当てる。ぱきょぉぉん、という音が私の中で響いたと思った瞬間、私は私の「世代人格」へと表層を交代していく。
「うふふ、うふふふおひさしゅう……」
久方ぶりのシャバですのよ。心が浮き立って仕様がありませんの。思い切りしなを作ってみたりしますわ、清々しいことこの上ありませんのことよ……
以前は追い込まれた若草の庇護的役割で現出していた「私」ですけれども、今はニュートラル。若草の一部として、しがらみ無く出て来れていることに無上の喜びを感じていますわ。
いえいえ、浮足立ってばかりもいられないのですけれど。
DEP。DEPを撃ち放たなければですわ。何とも急な話ですけれども、それはそれで仕方のないこと。それでは名残り惜しいですけれども。
……終了、ですわのよ。
「……『好きな人に、好きと言われた時、歓喜のあまり、本当に鼻血を出しましたの……
DEPとしてはいまいちではあるけどですけど。
「……」
それを撃ち放っている顔は、通常の若草の三倍くらいに堂に入った、不気味谷の虚無の真顔であるわけでして。
はぎょおおおっ、ヒトから精気を抜いたがらんどうの肉塊がこちらを喰らわんと欲する顔で見据えてきているよ怖いよぉぉぉっ、とのような叫びを発した川崎蒲田さんのどちらかの引き裂く悲鳴と共に。
私を頂点とした角度30°くらいの円錐形を形作るかのように、人々が電撃を喰らって倒れ伏していくのですわ。「平常心乖離」……うまく巻き添えたようで何よりですの。
<No.07770:32勝0敗にて、一次予選通過>
うん、まあまあですわのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます