♮099:相似ですけど(あるいは、摩訶★ハイメトリカ/裏六人)
そんな、何とも言えない空気を打ち破ってくれたのは、その人外チックな表層を晒している女の人の背後に控えるようにして立っていた、痩せぎすの三十代くらいの渋い男性だったわけで。
「キミが……『室戸 岬』クンかぁ。うん……何かこう、向き合ってるだけで寄り切られそうなプレッシャーを感じてるよ……ああ申し遅れた、『
何と言うか、若干古めの……強いて言うと80年代くらいの……僕はよう知らんけど、そんな古いタイプの男前的、いにしえなるテンプレを操る御仁との印象が強い……何だろう、教官と言ったら良いか……いや、良いか悪いかはまったく分からんけど……
下がった目尻からはいたって柔和な雰囲気を感じるけれど、それだけじゃあ無いことは、急激に「あの頃」の尖った感じに戻って来ていた僕の「
かっちり固めた長めの髪は、VIPルームの上からしだれ下がるシャンデリアの光を受けて艶めいている。こちらもディーラー正装に身を固めた、これまた一分の隙も無い体の一部のような着こなし。何かもう、この二人を見られただけで、今日この場に来たかいがあったと言っても過言じゃないかも知れない。
いやそれじゃ本末転倒か。
プレッシャーを僕から感じるとか言ってたけど、その本人の醸し出す、そよ風のような雰囲気が、何か直感的にやばい、と脊髄が訴えかけて来ている。予選で当たりたくは絶対ないので、僕はこの二人の容姿を目に焼き付け、会場で出くわさないようにしようとの決意を新たにするのだけれど。
にしてもおかしい。ダメの場というのに、極めてあっさりさっくりと時間が過ぎゆきていく……もっとこう、わやくちゃで度し難いことが起こってもおかしくはなさそうなのに。
その時だった。
だいぶ毒されている僕の思考は、裏切られることは無かった。いや、その予想以上の盛り盛り感をもって、ダメの野郎が僕の前に展開していくことになるのを、僕はまったく予期していなかったということもなく、きわめて穏当に、それを顔面で受け止めた側から端から咀嚼に持ち込んでいこうという貪欲な姿勢をほの見せつつ、適応していく構えなのであった。もうこりゃしょうがない。
はたして。
「あ~はっはっはっ、ああ~はっはっはっ」
途轍もなく軽い高笑いが、このホールに反響するくらいに放たれたのであった……
ああー、これこれ、この感じだよぅ、との不穏当ながらも凪いだ鏡のような心で、僕はもう受け止めつつあるものの。
「っふ!! ……レジェンド勢ぞろいとか何とかカマしてたけど、対峙してても大した感じは感じ取れないんですけどぉ~、なんだやっぱそんくらいかよぉ~」
いきなり僕と、「若草」と呼ばれた女性に対して、そんな不調法な言葉が浴びせかけられるのだけれど。
目を向けるとそこには、結構な小ささの人影があるわけで。しかしてその全身は、正にの「戦隊ヒーロー」のような、マスクと全身スーツに覆われているのであって。
「『ロータスぅぅぅぅぅぅっ、
何と言うかのハイテンションボイスに、僕はいつもの真顔になるのを禁じ得ない。
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