♮049:最悪ですけど(あるいは、ナニも言えなくて……脱)
ソバージュ女、
しかし威嚇のために、天井に向けてブッ放されたそれは、見事に割と地味な銃声ではあったものの、コンクリートむき出しの面にめり込んで、ぱらぱらとわざとらしいまでの細かいコンクリ片を降らせてきたわけで。あかん。あかん奴があかん物持っとる。
流石の沈黙……
ああー、こんな濃ゆい面子に半ば拉致られたような感じで共にダメを戦い抜かなきゃならないのか、とか、そう言えばサエさんに連絡してなかったから、今頃かなりの御立腹だぞ、とか、白目に近くなった僕の思考が自分の周辺を飛び回るかのようにしてあふれ出しているのを感じている……
そんな諦めの境地的なこの場。しかし、
万策尽きたかに思えたこの状況だったが、それすらも予測していたのだろうか、この後、丸男を中心核としているかのような超絶に狂った修羅場がここに展開し始めるのであった……
「ハハッ、こいつビビって漏らしやがったぜ!!」
テンプレーな言葉で煽ってきた志木だったが、その目の前でガタガタと震える丸男が、弛緩しながらも恍惚とも言える、何とも言えない表情を呈したことを不審に思い、眉をひそめる。
「……や……や」
既にジーンズの股間部分の色が濃ゆくなっていた丸男だったが、
「や、やんだぁ、ンコ漏らしちゃったぁぁぁぁぁっ……ァヒ!!」
相当に、人心を貫かんばかりのDEP(だろうか)が、拡散メガ粒子砲が如く、逃げようのないこの密室にて爆散される。
何喰ったんだよ、とか、やばいコレ水様なんじゃね? とか、一気に場は混沌へと引き込まれるわけだが、
千載一遇とは、このことなのかも知れない。
すかさず、外階段へと通ずる鉄扉を体全部を使って押し開けようとする僕。志木の金切り声が何か叫んでいるのを認知はしていたが、動きは止まらなかった。撃たれる……その可能性も考えなくは無かったけれど、本気で撃ってくることは無いはず、との思いもあった。それになにより、完全に錯乱したとしか思えない丸男が、おもむろにジーンズを膝まで下げて、後ろ手に自らの星条旗柄のトランクスの後方に手を差し入れたことで、場は阿鼻叫喚という文字を一筆一筆丁寧に勘亭流で書くといった、正にの混沌場へともうすでに押し込まれていたわけで。
うわぁぁぁ、祭りじゃあ、祭りじゃあ、と泣きながら「何か」を手に掴み潰しながら迫ってくる丸男の叫びに、銃を構えた志木以下、黒服4名たちも、いましがた入ってきた作業場へのドアを方へと悲鳴を上げて押し込まれていく。
稀に見る最悪な絵面ではあったが、とにもかくにも、逃げる隙は出来た。僕は隣で壁に手をついていたジョリさんに頷きをかますと、一気に鋼鉄扉の向こうにある外階段へ身を躍らせるのであった。
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