第2話 セルヒオ・ラモスのPKについて検証する

「バルセロナにとってカンプ・ノウでの試合は活力と勇気と助言をもたらす。

 バルササポクレは非常にサッカーに対する見識が高い。観客席からピッチの状況を伝え、すべきプレーの示唆を与える。いいプレーには拍手で讃え、選手にモチベーションを与える。

 だが、コロナの影響は良質なサポーターを抱えるチームにとってマイナスに働く。ホームのメリットが激減する。

 

 

 先日のクラシコの話をしよう。


 バルサは機能しないグリエズマンに替えてペドリをスタメンに。結果的にそれもほとんど機能はしなかった。 


 両チームの状態は悪かった。

 バルサはフロントと選手の確執が極まっている。バルトメウは解任寸前。試合前にピケがチームをまとめるためにフロント批判。


『シーズン半ば。論理的だとは思わなかった。私たち選手が呼ばれて決定を促されたように感じたが、実際に私たちが言ったのは『決定を下すのはあなたたちだ』ということ。会長が最も上にいなければならず、次にプレーヤーを管理するべきマネージャー(強化責任者)が必要。この階層が崩壊すると、物事は機能しない。ある時点で選手たちがクラブ内で力を持っていたのは、他の人がそれを行使したくないと思って逃げたからだ』

 

 レアルはジダン監督の指導力不足。学級崩壊とまでは言わないが授業中に私語がみられる。

 監督は選手を支配する力が必要。だがジダンは余りに寡黙。おそらくファギーのようなヘアドライヤーは持ち合わせておらず使う気もないだろう。選手時代の威光だけでは御しきれなくなっている。監督は消耗品だ。マンネリしたら次のチームに移った方がいい。ジダンはレアルの監督をのべ6年近く務めている。

 今のレアルはハードワークが足りずプレスが緩い。反面、攻撃に出るときはやたら元気に駆けていく。


 こういった強敵にはコウチーニョは合わない。コウチーニョはドイツで肉体改造をこなし、体に厚みを付けた。だがやはりコンタクトは弱い。

 この試合では左サイドに回ったが、やはり推進力が足りない。で、コウチーニョはセンターに入ってきて、そこをJ・アルバがオーバーラップして使う形。


 5分。アルバが前に出て行って空いたスペースをアセンシオが走る。ラングレがそこをカバーしようと左サイドに寄る。寄り過ぎ。バイタルエリアでボールを保持した万能ストライカーベンゼマにピケが詰め、その背後のスペースにバルベルデが侵入し、ベンゼマのスルーパスを受けた。ブスケツは走力が足りず、カバーに行けない。落ち着いてバルベルデが完璧なシュートで先制。

 ラングレが悪いが、ピケもバルベルデを見ていれば前に出るべきではなかった。


 8分、中盤からメッシが前線にオーバーラップしたアルバに浮き球スルーパス。グラウンダーのアーリークロスをファティが押し込む。

 ああ、エトオの再来か。


 バルサがティキタカで攻め、レアルが要所を締めて守る展開。レアルがボールを奪うとバルサはハイプレスでフィードさせず、レアルが自陣で保持する時間が長くなった。そこは速攻でも良かったのではないか。バルサのCBとピボーテはスピードが弱点。ゴリゴリいった方がバルサは嫌がるはずだ。

 でもジダンは、ポゼッションしたいのだろう。レアルはテクニカルなサッカーに移行しつつある。

 

 ファティは何度も裏抜けを狙ってスプリントを繰り返した。

 

 レアルは横パスに対しショートカウンターを狙おうと緩いプレス。リトリートしない相手にファティのスプリントは可能性を掘り起こすプレー。だが、ボールが出てこない。

 レアルをティキタカだけで倒せると考えているなら傲慢だ。実際、ペップバルサは傲慢だった。傲慢な上で、恵まれた選手で攻め倒して勝ってきた。


 ファティのスプリントに合わせ浮き球スルーパスを出し、ワンタッチゴールを狙う。それが一番可能性があるように見えた。

 だがファティは17歳で、まだ信頼が薄い。ファティは前半6.7kmを走った。

 

 59分。クロースが左サイドからFKを蹴ってファーのセルヒオ・ラモスにクロス。精度が悪くラモスの頭上をボールが飛んでいく。ラモスに付いていたラングレはラモスとゴールに向かい併走しながらシャツを掴んでいる。ヘディングを諦めたラモスは突然ゴールとは逆方向に体を倒した。ラングレの手、ラモスの倒れる方向、二つの力は逆。

 ラングレの手はラモスのシャツをがっちり掴んで離さない。ラモスのシャツは引っ張られてぐいっと伸びた。

 

 PK。


 1-2。

 DFがアタッカーのシャツを掴むのは習性だ。そうやってアタッカーの行動を制限しないと、生き残れない。もちろん反則だ。審判の目に付かない程度に、やる。

 

 例えば、クロースのクロスが正確だったら、ラモスはこんなことをしなかっただろう。普通にヘディングを狙って跳躍する。シャツを掴まれると、ヘディングは難しくなる。ラモスはラングレの手を振り切ろうとする。PKを狙う演技などしない。

 クロースのクロスが雑だったから、かえって好結果になった。ラモスのずる賢さマリーシア、老獪さの勝利。


 つまり。

 可能性のないボールが飛んできたのに、シャツを掴んでいたラングレが余りに愚かだった。

 このCBもバルトメウ案件。バルサクラスの選手じゃない。でも他に使える選手がいない。ここ数年こんなんばっかりだ。

 

 バルサの選手達は激高した。ラモスはノーチャンスだった。だから、ファールのはずがないじゃないか。プレーも乱れる。

 勝負はほぼ決した。

 時間が進むにつれて、レアルのDFラインが下がっていく。もうファティが狙うスペースがない。クーマンはファティを諦め、アタッカーを次々と投入。特攻。

 カウンターを浴びバルサ失点。


 19歳のデストが早くも適応し、この試合ではヴィニシウスをよく抑えていたのは好材料。バルサの未来に光明が射した。とにかく、バルトメウを追い出してからだ。

 ジダンはとりあえず生き長らえた。だが、未来は霧の中だ」

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