夕飯は王と二人だけだった。長細いテーブルに、色とりどりの食材が並べられ、銀食器に載せられていた。僕の国では手づかみが多かったが、こちらでは丸い棒で食べた。とある国では寝転がりながら食べることが貴族風、とされているようだが、椅子に座って対面で食べる方が、まだ上品だ。

「どうだったかな、ここへ来てから」

 王が僕を真っ直ぐに見つめる。僕は考えてから話し出す。

「目まぐるしい1週間でした。知らない人間が2人も死んだ。水死体なんて初めて見ました」

「そうか、そうだろうね」

「本当に。信じられないような出来事ばかりです」

「君を呼んでしまったのは、悪かったね」

「いえ、もともとこちらからお願いしたことですから」

「後悔をしているか?」

 その時、僕はふと顔を上げて、じっくりと彼の顔を見つめた。笑うような、疲れたような、普段から表情すら自由にはできない人間の、本物の表情だった。

「後悔をしないために生きています」

 僕はうっすらと微笑む。

「そうか」

 すると、静かにまた食事を進める姿があった。

 パンをちぎって口に運ぶ。渇いた砂のような自国のものとは異なり、ずいぶんふっくらとした良いものだった。

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