第2話
「なぁ!屋上に幽霊が出たらしいぜ!」
遅刻ギリギリに登校した僕に開口一番にそう言ったのは、朝から大きな声の川上祐希。そして、その後ろで眠そうな目をしておはようと言ったのは南條千歳。クラスでいつも一緒にいる二人だ。二人が教室のドアの前に立っているため、クラスの女子二人が通れずに迷惑そうな顔をしている。
「とりあえず、二人とも後ろの人を通してあげよう」
僕が二人の後ろにいる女子を見ながら言うと、祐希は初めて気づいて、うぉ!わりぃ!と言って慌てて道を開けた。千歳も欠伸を一つして、同じように道を開けた。女子を通してから、僕も教室に入り、自分の机に鞄を置いた。
「なぁー聞いてんのか?幽霊だぞ!幽霊!!」
そのままついて来た祐希はこんな楽しいことは無いと言わんばかりの表情だ。対して、千歳はまた徹夜でもしたのか立ったまま舟を漕いでいる。
「どんな幽霊だったの?」
仕方なく僕は自分の椅子に座って祐希の相手をすることにした。
「よくぞ聞いてくれた!何でも女の幽霊で、昔この学校で自殺した生徒なんじゃないかって話らしい」
「それ誰が見たの?」
「四組の東條!」
東條が誰だか分からなかったがとりあえずそうなんだと言った。
「それでだな!ここからが本題なんだが、今日の夜、屋上へ行ってみないか?」
祐希が僕の方へ身を乗り出して提案してきた。
「屋上って封鎖されてるのに行けるの」
半分寝ていたはずの千歳が大きな欠伸をしながら尋ねた。確かに、うちの学校は屋上そのものはあるものの、扉は閉まっていて、立入禁止の札が掛かっている。誰も入れないはずの屋上になぜ東條とやらが入れたのか、そこから話はおかしい。
「何でも東條の話によると、昨日、忘れ物を取りに教室へ行った帰りに、屋上への扉を見たら少し開いていたらしい。不思議に思って、屋上へ行ってみるが、誰もいなかったんだと。時間も時間だし生徒が残っているはずもない、第一屋上は立入禁止だからな。たまたま開いてたんだろうと思って帰ろうとしたら、一人の女子生徒がフェンスの近くに立っているのに気づいたらしい。こんな時間に変だと思いつつも声をかけたら、なんと、その生徒はフェンスを通り抜けて消えていったんだと。自分の見間違いかと思って慌てて探したがその女子生徒はどこにもいなかったらしい」
「その東條ってやつの見間違いだろ」
千歳が祐希の話を切って捨てた。この話に興味がない事は明らかだ。
「だから、本当にそうなのかを今日の夜屋上に行って確かめようぜ」
「俺はパス。夜は寝る時間だから」
ふぁーとまた大きな欠伸をしながら千歳が言った。
「そんなこと言うなよ~友達だろ?昴!お前は行くだろ?」
嫌がる千歳の肩に腕を回して、祐希が僕に聞いてくる。
「少し気になるし、行ってみようかな」
よっしゃー!と喜ぶ祐希を笑って見ながら僕は内心溜息をついた。またくだらない話に付き合わなければならない。朝から少しだけ憂鬱な気分になった。
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