第25夜 初霜
朝、収穫を終えた畑の土の上に、公園の芝の上に、家の生け垣の上に、霜が降った。朝靄に静まれてしんと静まった町は、日を追うごとにその白さを一層増していく。
数日前から町外れや森のなかには既にぽつぽつと降り始めている霜だったが、どの町でも、町の中心部にある公園や広場への霜降をもって初霜と呼ぶのが習いだった。
いよいよ冬の訪れとも言うべきその風景を、早起きの人々が早朝の窓辺から見ていた。
町の上に薄く膜を張る白い存在へ、人々はつかの間、あらゆることへ思いを巡らし、物思いに耽る。それは誰にとっても一人のひとときであり、孤独な作業だ。
そして、朝のわずかな静謐が生き物たちの活発な運動による喧噪にかき消される頃には、現れた太陽に霜も消え去り、人々も朝の物思いなど頭の片隅にぎゅっと押し込めて、忙しく動き始める。
けれど、その朝を過ごした人々は誰一人として忘れはしないだろう。
十一月の孤独を、誰が忘れられようか。
いずれ白に塗り固められ儚く消えていく秋は、人々の哀しみや愁いを呑み込みながら、いよいよ大地へと横たわる。
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