第136話 四つ巴



 全ての黒幕は己だと言い切った美蘭、指摘した英雄は曖昧な顔になると。


「ちょっとタンマ」


「はいっ!? そこはワタクシから動機とか聞く場面ではなくてっ!?」


「はいはーい、みんな注目! これより脇部家臨時審議を行いまーす!!」


「おう議長、議題は何だァ?」


「乗るんですかお爺さまっ!?」


「私も参加して良いか?」


「ええ、どうぞどうぞ。さ、英雄が話しますよ静かにしなさい」


「フィリアさんとお婆さままでっ!?」


 目を丸くする美蘭を放置して、議長もとい英雄は神妙な顔で。


「今回の黒幕が美蘭で満足な人、手を上げてっ!」


「いや、俺はもっとサプライズが欲しかったぜ」


「こんな半ばで正体がバレるなんて、甘いですわね。やり直しを要求します」


「私としては、ストーカーとして訴えてもいいのだが? 損害賠償を請求するぞ?」


「手厳しいし、フィリアさんの対応がガチっ!? 何なんですのウチの一族はっ!? お、おのれ! とか、絶対に倒す! とかなりませんのっ!?」


「安心するのじゃ美蘭くん……、儂はちっとも気づかなかったぞ?」


「なんで校長に慰められてるんですのっ!?」


「儂としては、ホントに口実が欲しかったというか。まあ英雄くんの退学はマジだったんじゃがな?」


「ちょい待ち校長、ちょっと聞き捨てならないんだけど?」


 ジトっと注視する英雄に、校長はニヤリと口元を歪める。


「脇部を倒すなら、手段も方法も選ぶな。――学生時代からの教訓じゃ。勿論、貴様が学校を巻き込んで抵抗するのは想定済みじゃわい」


「僕なんて脇部一族の木っ端だよ? 倒して得になんて……」


「テメーが木っ端なら俺はそれ以下だ」「英雄には負けますよ」「英雄? ちょっと謙遜が過ぎるのではなくて?」「よっ! 脇部一番の馬鹿!」「あんたにゃあ負けるって」


 口々に否定する一族、フィリアは淡く微笑んで。


「良かった……英雄は脇部の中でも特異な部類なんだな」


「なんでホッとしたのフィリア? 小一時間お話する?」


「キスして良いならな」


「そりゃダメだ、僕も我慢出来ない」


「若いって良いわね、旦那様も小一時間話します?」


「ケッ、やってやれるか! おーしお前ら解散だ! 今日も呑むぞォ!!」


「ちょっと待ってくださいましっ!! このまま有耶無耶にしようとしたって、そうはワタクシが許しませんっ!!」


「そうだぞ英雄、きっちり慰謝料を取らないとな」


「貴女金持ちでしょっ!? 権力使うとか恥ずかしくないんですのっ!?」


「ダメだよフィリア、可哀想じゃないか」


「同情は要りませんがナイスっ! 言ってやれ英雄!!」


「お金だけじゃダメさ、とりま退学まで確定させておこうよ」


「それでも弟分ですのっ!? 姉貴分に対する情はありませんのっ!?」


「姉貴分なら、弟分を退学ちらつかせないと思うよ?」


 実にもっともな反論だが、それで引き下がる美蘭ではない。


「よろしいっ!! では宝物じゃんけんでケリをつけましょう!!」


「え、やだよ? やる意味ないよね? 校長センセも諦めたよね?」


「いや? 儂は賛成じゃぞ。このまま帰ったら英雄くんの退学手続きするだけじゃ」


「僕がピンチだよフィリアっ!? 君のお金と権力でなんとかしてっ!?」


「まるで私がお金と権力の女だという言いぶりだな……」


「傷ついた?」


「ああ傷ついたとも、――――私も参戦する」


「なんでっ!?」


「私は今回の事で学んだ……、君の一族はとても、とても、とてもとても厄介だとッ!」


「分かってくれたか這寄くん!!」


「おーい、誰か反論頼んだ! ……え、無いの? 誰か言い返してどうぞ?」


「つーても英雄よォ、祖父としてはテメーに毎日付き合ってる嫁御にゃあ、こっちから頭を下げるべきだと思うんだが? なあ那凪」


「英雄、はしゃぐのも程々にしなさいな」


「味方から撃たれたっ!? 親父っ!? お袋っ!?」


「悪いな英雄、俺はお前の事を否定も肯定も出来ねぇんだ……」


「お、親父っ~~!?」


「私はね、常々思っていたの。王太の行動力と私の執念が合わされば、脇部の中で頂点に立てると……、立派なトラブルメイカーに育ったわね英雄。母として誇らしいわ」


「お袋っ!? それ誉めてるの貶してるのっ!?」


「ええいっ!! 話が反れてますわっ!? どうしてウチの一族は直ぐに話がどっか飛んでいくのですっ!?」


「あ、そうだったね、テヘペロ」


「男のテヘペロは見苦しいぞ英雄?」


「君、前に好きだとは言ってなかった?」


「私の前だけなら、他の誰かと一緒だと無性にムカツク」


「み、味方が居ない…………っ!!」


 愕然とする英雄に。


 ――美蘭、今ならば彼は乗ってくると確信した笑みで。


「では、勝負と行きましょうマイヒーロー」


 ――校長、戦意を剥き出しで。


「平九郎に勝つには先ず貴様等から引導を渡してやるぞ!!」


 ――フィリア、慈母の様に微笑んで。


「夫婦になるからこそ、――全力でマウントを取りにいかせて貰う」


「あーーもうっ!! 僕が勝っても文句いうなよっ!!」


 楽しそうな英雄達に、親戚一同は苦笑。

 再び審判として那凪が、隣に酒瓶かかえた平九郎。


「では、宝物じゃんけん。サバイバル戦を開始するわ。……各自、賭けるものと欲しいものを」


「ワタクシが勝ったら、フィリアさんを相棒にしますわ!! 嗚呼。貴女の美しさこそワタクシの悪の道に必要なモノっ!! その為にはワタクシの全てを晒け出しますわ!!」


「儂は変わらず、平九郎を舎弟に。負けたら退学取り消しどころか、今後貴様等が不祥事を起こしても庇う事を約束しようぞ」


「私が欲しい物、――それは英雄に首輪と付ける事だっ!! 負けたら就職先でも定年後の再スタートでも金と権力でサポートしてやるッ!!」


「みんな、ちょっと即物的過ぎない?」


「そういう君は何を要求して差し出すのだ?」


 当然の疑問に、英雄は首を捻る。

 要求するのは勿論、退学の事だ。

 だが、何を差し出すのが一番面白いか。

 ならば。


「僕が勝ったら退学取り消し、負けたらさ……ウチの男共の恒例行事、おっぱぶ祭りを阻止する側に回るってのはどうだい?」


「英雄テメェ、絶対に勝てよッ!! 勝ったらHカップの美人さん紹介してやっからよッ!!」


「旦那様? 少し包丁を研いできても? 英雄、負けないと承知しませんよ」


「くそっ、そんな面白いコトを賭けるなんてッ! 俺も参加したかった!! 絶対に勝てよ我が息子っ!! 銀座のママさん紹介すっから!!」


「英雄、母として命令します。――絶対に負けなさい。王太? 貴男のケツ穴に合うのを探しておくわ」


「「絶対に負けろよ英雄ッ!!」」


「うーん、掌ドリルするの止めてくれない?」


 ウチはこんなんばっかりか、と頭痛がしそうな英雄であったが。

 ともあれ事前準備は整った。

 故に那凪も切り替えて、ギャラリーも黙り込む。


「ルールは同じ三回勝負、ただし第一ラウンドのみ。先程のの敷き直しという面を考えて、無敵拳は復活。――では、何か言う事は?」


 心理戦フェイズに移行、誰が何を言うのか。

 主に英雄へ注目が集まる中、先陣を切ったのはフィリアだった。


「後出しは負けだな? よし貴様等、後出ししろ。そうすれば一千万づつ出す」


「清々しいほど買収しに来たっ!? え? マジでそんな大金動かせるのっ!?」


「全員で三千万だろう、昼休みに少し株を動かせば出る利益だ。これぐらいなら問題ない」


「ぐぬっ、ぬううううううう卑怯なり脇部ぇ!! 金と権力まで手に入れるとはっ!! 犬と呼んでくださいワン!!」


「それで良いの校長っ!?」


「残念だけど、――ワタクシは無敵拳を出す。一回目は貰ったわ」


「わお、コッチもコッチでぶっこんで来たね。一千万円惜しくないの?」


「お金より、フィリアさん本人を取りに行くわ」


「じゃあ儂も無敵拳を出そうかのう。アイコに持ち込んだ方が勝率はエエわい」


 三人の方向性が決まった所で、英雄はあっさりと述べた。


「じゃあ僕はグーを出すよ」


「……」「……」「……」「……」


「え、何その沈黙」


「私は騙されないぞ、君は絶対に無敵拳出してアイコか勝利に持ち込むんだ。私には――理解できる」


「嘘よ、ワタクシと校長のどちらもブラフだと読んだのでしょうけど。生憎と一回目は英雄の負けね」


「フハハ! 勝負を捨てたか! 特別に退学式を執り行ってやるから楽しむといいぞ!!」


「みんな酷いなぁ」


 グーを出す、それには確かな意味があった。

 四人での勝負、それはタイマンの時と同じく一回戦目は読む事が出来ず。

 ならば、狙うのはその次。

 グーを消費する、その意味こそが肝心なのだ。


「では一回戦目、――じゃん、けん、ぽん!」


「グーだよ!」


「パーだ!」


「チョキじゃ!」


「無敵拳よ!!」


「勝者、美蘭!」


 宣言通り無敵を出した美蘭は、ムフフと胸を張り。

 フィリアはポーカーフェイス、校長はムスっと。


「ほら、僕はグーを出したでしょ」


「やはり金は駄目か、それが分かっただけでも収穫だな」


「はん、初回は捨てておるわい」


「これで私は最低でも後一回勝てば良い、一歩先を行ってごめんなさいねっ!」


 各自油断せず、睨み合って思考を巡らす。

 美蘭はグーチョキパーの全てが残り、残る三人が出せる手は二つ、しかし無敵が残っており。


(互角だって思ってくれてるかな? ――ま、全ては僕の読み通りなんだけどね)


 これでフィリアと校長は、次に無敵を出す確率が高くなった。

 そうでなければ、二回目で敗退が確定する可能性が高いからだ。


(けど、それは僕も同じ)


 となれば、やる事は一つ。


「では第二回戦を始め――、英雄? 何故、脱いでいるのですか?」


「え、全裸になるからだけど?」


「ちょっと待て英雄、何故全裸になるのだッ!? どこにそんな理由があるッ!?」


「待てっ、これは英雄くんの罠じゃな! その手には乗らんぞっ!!」


「ひぃっ!? なんで回転させてるんですのっ!?」


 素っ裸になった英雄は、腰を回しぶるんぶるんとプロペラ回転。


「いや、せっかくだからさ。この動きでじゃんけんしようかなって」


「馬鹿か君はっ!? そもそもそれで何を表すのだッ!?」


「何って、……ナニだけに?」


「そうかっ!? 分かったぞ貴様っ!! チンコを使う事により、己の手をどうとでも言い繕う気だろうっ!! なんて卑怯な!!」


「…………はぁ、英雄?」


「待って婆ちゃん、僕は正気だよ。勿論ちゃんとじゃんけんを手でするさ、――だけど覚悟してよっ!! 僕の回転は止まらないぞっ!! いやっほう!!」


「どこが正気なんだっ!! ええいっ! 男でしか使えない事をしてッ!! この卑怯者めッ!!」


「悔しかったらみんなもする? まぁフィリアがするなら、僕は全力でチンコを回しながら止めるけど」


「回す必要が何処にあるのだッ!!」


「へいへーい、フィリアびびってるぅ!! 校長センセの意気地なし!! 美蘭? 君の悪役魂はそこまでなの? 僕の全裸に負けちゃう? ん? ん?」


「ああもうっ! 早く号令をお願いしますわお婆さまっ!!」


 そして。


「では第三回戦、――じゃん、けん「あ、ちょと待った。お腹冷えた」



「英雄ッ!? 君はどこまでフザケるつもりなんだッ!?」


「う、うう~~っ、ちょ、ちょっとマジで待って、身が出ちゃうかも!!」


「ぬおおおおおっ!? 漏らすなよっ!? 儂は全裸脱糞を見る趣味なんでないのじゃっ!?」


「ひ、英雄っ!? と、トイレに行きなさいってば!? 待っててあげるからっ!?」


「い、いやっ! その必要はないよっ! みんなに悪いから――ううっ! さ、さぁ! 勝負だっ!!」


 ケツを押さえるようにモジモジさせる英雄、那凪は困ったように平九郎を見て。

 彼は苦笑してゴーサインを出す。


「で、では。第二回戦、じゃん、けん『ぷう』英雄?」


「大丈夫っ! ち、ちょっと、漏れただけっ!!」


「大惨事ではないかッ!?」


「ええいっ!! とっとと終わらすのじゃ!!」


「肛門に全力を注ぎなさいよ英雄っ!!」


「で、では、――じゃん、けん、ぽん!!」


 少し上擦った那凪の声、四人は腕を延ばし手を開いて。


「無敵だよ!」


「グーだ!」


「グーじゃ!」


「グーよ!」


 その瞬間、空気が凍る。

 まさか、もしや、やられたと誰もが視線を送り、当の本人はガッツポーズで盛大にプロペラを回し。


「いやっふうううううううう!! 僕の勝ちいいいいいいいいい!! へっへーんだっ!! みんな引っかかったね!!」


「おのれ英雄ッ!! 全部演技か君ッ!!」


「踊らされたっ!! 英雄くん!! これが貴様の目的かっ!! 我々に無敵拳を出させないようにする為のっ!!」


「糞ッ!! 二回戦目は無敵を出すと決めていたのにッ!! 何かしてくるだろうと思っていたが、予想外過ぎて頭から抜け落ちていたッ!!」


「――――っ!? まさかワタクシもっ!?」


 そう、全ては英雄の計算の通りだったのだ。

 美蘭が一回戦目で無敵を使う、ならば残る三人は絶対に無敵を使わなければ敗退が確定する。


「仮にさ、一緒に無敵出してアイコにしようって言ったらどうなってたと思う? 勿論、誰かの裏切りは予想される、けど裏切りは即座に敗退だ。――それじゃあ最後の三回戦目での勝率が下がるじゃん」


「……英雄、もし見抜いていたらどうしていたつもりか?」


「そんなの決まってるよ、勿論漏らしてたさ。まあ実際にはお腹なんて痛くないけど、そこは気合いでね」


「賭けじゃったと?」


「そうさ、もし漏らしてもアイコになって敗北しない。――だが、ここまでするという動揺をさせられる」


「何れにしても、英雄は優位に立てる。……私はまだまだ甘かった様だ……」


「これが本当の、手段も方法も選ばない戦法。己の世間体すら捨てる、本物の勝利への執念。――今回は儂の完敗のようじゃ」


 憑き物は落ちたように笑う校長。

 フィリアは苦笑してため息を一つ、とりあえず拳を振り上げて。


「服を着ろ馬鹿者ッ!! 本当に腹を壊すぞ!」


「あだっ!? 心配は嬉しいけど、まだ後一回あるからさ、取り敢えず僕の服持って待っててよ」


「……必ず勝てよ」


「努力はするさ」


 そして二人は那凪の所まで下がって。

 最終回、残るは英雄と美蘭。


「英雄、本当にお腹は大丈夫なのですね」


「大丈夫だよ婆ちゃん」


「もうそんな手には引っかからない――ぶんぶん回すの止めなさいったらっ!?」


「はっはっはー、顔真っ赤にしてウブだなぁ美蘭は」


「くぬっ、ぐぬぬぬぬぬぬぬっ!!」


 恥ずかしそうに視線を反らすも、チラ見する美蘭。

 一見、動揺している様に見えた。


(でも、どこまでかな? 作戦通りにグーを出してくれたけど)


 そう、二回戦目に美蘭は動揺のままグーを出した。

 そして英雄は一回戦目にグーを。

 双方とも、残るはチョキとパー。


(負けるもアイコも1/2ってね)


 当然、その事は美蘭も気づいている筈だ。


「では最終戦を始めます、――何かありますか?」


「ワタクシはチョキを出しますわ」


「なら僕もチョキを出そう」


「へぇ、仲良くアイコで二人とも勝利になると?」


「いやいや、美蘭がパーを出してくれれば良いのさ」


「英雄がパーを出せばいいのよ?」


 バチバチと火花が散って、しかし、プロペラが依然としてぐるんぐるん回っているのが何とも締まらない。


「仕方ないなぁ、じゃあ僕がパーを出すよ」


「嘘ね、ならワタクシもパーを出す」


「おやおや、美蘭ともあろうお人が勝利じゃなくてアイコ狙い? 悪の矜持もあったもんじゃないね!」


「はっ! こっちの手を固定させようとしても無駄ですわ! 勝つも負けるもアイコも同じ確率! どんなに読もうとしても決定打に欠けますものねっ!!」


「……はぁ、君がもうちょっと頭が悪ければ僕としては楽だったんだけど」


「お待ちなさい、この確率が分からないなんて。相当の馬鹿ですわよ?」


「だよね。――さ、従姉妹殿は可愛い弟分に負けてあげようって思わない? だってフィリアは負けたんだし、ここで負けても手に入るでしょ」


「無駄だと言ったでしょ、ここで負けたらワタクシも敗者。何も手には入らないでしょうに」


「やっぱダメか、修兄さんは一度だけ引っかかったんだけどなぁ」


「人の良い修兄様と一緒にしないで下さる?」


「しょーがない、か……じゃあ婆ちゃん頼むよ」


 万が一を考えて試してみたが、やはりこの期に及んで心理戦は意味を為さない。


(どの確率は1/3、勝ちかアイコの2/3を引くお仕事だし、負けはしないと思うけど)


 無敵というジョーカーを潰し、フィリアと校長を脱落させて選択肢を大きく削り。

 そして、最後の最後は為す術なく運勝負。


(結局、タイマン勝負で三択までしか絞り込め無かったか……、僕もまだまだ甘いな)


 これを甘いを言って、それ以上どうしようと言うのか。

 誰かが聞いていたら、戦慄するような思考をしつつ。


「――では最終勝負、…………じゃん、けん、ぽん!」


 運命が決する、英雄が退学になるかどうかが確定する。

 彼の少し日に焼けた、彼女の不健康な白い腕が延び。

 ギリギリまでグーでだされた手の指の形が変わって。



「チョキだ!」「チョキよ!」


 

 宝物じゃんけん第三回戦。

 双方共に、一勝一敗一分け。

 ――――つまりは同率勝利であった。


「よおおおおおおおおおおおしっ!! 見てたフィリア!! これで僕の退学はチャラだよ!! どうだ見たか校長センセ!! 僕の大勝利いいいいいいい!!」


「しかし英雄、あちらも同率勝利なら。私が相棒として取られてしまうのでは?」


「しまった、そうだったっ!? ………………いやでも、べつに別れるとか、結婚がなくなるとかじゃないから大丈夫なんじゃ?」


「成程、それもそうか」


「いえーい、勝利のハイタッチ!」


「イエーイ、勝利のハイタッチ!!」


「はい、ぎゅー!」


「ではチューもしよう!」


「うひょお! 僕ってば幸せ者だねっ!!」


「ふふっ、君の退学が無くなって嬉しい」


 英雄は全裸で、フィリアは彼に服を押しつけつつ大いに喜んだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る