Ne.32『転生ガチャでいえばハズレなんじゃないの?』
佐原「おう、来たか根岸」
根岸「どうしたんですか、佐原先輩。――屋上なんかに呼び出したりして。っていうか屋上からの景色すごいっすね。街全部見えるじゃないですか」
佐原「――根岸、お前この高校、どう思う?」
根岸「普段は立ち入り禁止ですもんねココ、うわー、すげー。そうだよな山の上にあるんだもんなこの高校」
佐原「いやちょっと、話きいて」
根岸「先輩んち見えます? うちは見えないなー。つーか眩しっ! 夕日が眩しいっ! ひゃー青春っぽい」
佐原「静まれぇい!」
根岸「なんですか格さん。――このお方を誰と心得るぅ! 佐原パイセンだぞ!って感じですか?」
佐原「いやうん、水戸のじっちゃんいないしね」
根岸「……」
佐原「なんだよ」
根岸「せーの」
佐原&根岸「静まれぇい!」
根岸「えーと……、先輩今なんでしたっけ……、あ、そうか番長か。今時」
佐原「今時とか言うなよ。なりたくてなったわけじゃないんだから、番長」
根岸「んで、なんです? 屋上なんかに一般生徒の僕を呼び出して。一応初対面ですよ?」
佐原「あー、うん、どうよ。この高校」
根岸「いいところですよ?」
佐原「そうだな、平和だしな」
根岸「誰も、正体に気づきませんし」
佐原「……そうだな」
根岸「……」
佐原「……」
根岸「先輩、今回はどんな感じですか?」
佐原「高校生天才陰陽師の名家の跡取りで安倍晴明の子孫……」
根岸「え?」
佐原「高校生天才陰陽師の名家の跡取りで安倍晴明の子孫……」
根岸「えぇ?」
佐原「高校生天才陰陽師の名家の跡取りで安倍晴明の子孫!」
根岸「漫画かよ! 恥ずかしっ! しかも番長!」
佐原「恥ずかしいとか言うなよ! 俺もだいぶ恥ずかしいんだから! なんだよ高校生天才陰陽師で安倍晴明の子孫とか! しかも番長!」
根岸「うわー、うーわー、はずかしー。――先輩、前世なんでしたっけ? 前世!」
佐原「……ナマコ」
根岸「ひゃー!」
佐原「ひゃーじゃないよ、しょうがないだろ、まさかナマコから高校生天才陰陽師に転生するなんて……」
根岸「前世がナマコだった俺が高校生天才陰陽師で安倍晴明無双っすか? うーわー、どこですか、前世がナマコだったことが役に立つエピソードはどこっすか!」
佐原「そういうお前はなんだよ、今回」
根岸「……」
佐原「おい、なんで目を逸らすんだ。なんだ、今回の転生はなんだったんだ」
根岸「……モノ」
佐原「ん?」
根岸「ハーレムモノ……」
佐原「漫画かよ!」
根岸「漫画みたいな先輩に言われたくないっすよ! 前世ナマコのくせに!」
佐原「お前だって前世ホタテだったじゃねぇか! ハーレムモノのどこで活かせるんだよ、ホタテだった頃の記憶!」
根岸「その前は異世界王宮騎士でしたもん!」
佐原「それ言うなら俺だってナマコの前はその王宮のネズミだったわ!」
根岸「ネズミじゃん!」
佐原「それでも仲間を人間から守るために戦って死んだもん! 英雄だもん! ――根岸なんて食あたりで死んだくせに! 騎士なのに!」
根岸「あの世界は衛生管理がずさんだったんですよ! 僕はデリケートなんです! 先輩と違って!」
佐原「ぐぬぬ!」
根岸「ぐぬぬ!」
佐原「……まあ、いいや、とりあえず今回は平和なわけだ。お互いに」
根岸「転生前のスキルが活かせるパターンってそうそう引かないですよねぇ」
佐原「ピラミッドのときくらいだなぁ」
根岸「あー、働き蟻の後の転生ですね。先輩「無で仕事できる」って言ってたやつ」
佐原「そうそう、あれくらいだなぁ」
根岸「魔法せっかく覚えても、転生先のマナの流れとか魔法の発動術式がバラバラだったりしますし」
佐原「レベル上げても転生でリセットされるしなぁ」
根岸「そういや先輩、今回レベルの概念あります?」
佐原「ないよ、作中最強の天才陰陽師、って設定しかない」
根岸「うわチートでたわ。冷めるわー。努力もしないで手に入れたその能力で無双できてご満足ですかー」
佐原「ないない。ないよ満足感なんて。つーか聞いてくれよ、何やっても全部「天才だから」と「安倍晴明の血が一番濃く出た」とか言われんの、いやいや俺だって頑張ってんですけどね?って思わなくもないわ」
根岸「あー、生まれにコンプレックスあるやつだ」
佐原「満足感とか達成感でいえば断然、アレだな!」
根岸「ああ! アレっすか! こないだの!」
佐原「そうそう、ナマコの時に」
根岸「ナマコのね!」
佐原&根岸「1日5メートル!!」
佐原「あれなー、ナマコでそんだけ移動できたときのほうが間違いなくあったわ達成感! そりゃもう『俺はこの世界のナマコの頂点かもしれない!』って気分になったもんよ」
根岸「あったあった」
佐原「根岸の魔法も発動てきたんだよな何故か」
根岸「ああ、僕がいつだったかに魔法測量士だったときの測量魔法ですよね。何故か発動できたんですよね」
佐原&根岸「ホタテなのに!」
佐原「ここ最近の転生で一番盛り上がったなアレ」
根岸「測量魔法がホタテの状態でも発動できたのも含めて、盛り上がりましたね。おかげで5メートルきっかり測れましたし」
佐原「……次は何に転生するのかなー」
根岸「あぁ、なんか夕日見てセンチメンタルな感じですか?」
佐原「作中最強の陰陽師って設定はいいんだけどさ、特にそれっぽい敵もいないんだよ。話が広がんないの」
根岸「なんのための設定なんですかそれ」
佐原「さーなー。まあ、転生ガチャでいえばハズレなんじゃないの?」
根岸「せっかく作中最強なのに」
佐原「ネズミ、ナマコと来て天才陰陽師だから、そろそろ熱い感じかなって思ったんだけどなぁ」
根岸「僕なんか死因が食中毒、食中毒でその前も食中毒ですからね。そろそろ今回あたり違う感じになるんじゃないですかね。この世界は衛生管理もちゃんとしてそうですし」
佐原「いいなぁ、俺はなんかまたナマコみたいな毎日だよ」
根岸「ナマコは盛り上がりあったじゃないですか」
佐原「確かに。ナマコより盛り上がらないってなんだよ、天才陰陽師。――根岸は盛り上がりあるの?」
根岸「あー、まー、ハーレムモノですし、それなりに」
佐原「モテモテかぁ」
根岸「……相手が全員男なんですよねぇ」
佐原「……BLかー」
根岸「いや今回、僕は女の子なんですけどね」
佐原「あ、女なのか根岸」
根岸「そーですよ、僕っ娘です」
佐原「ホタテだった俺が転生したら女体化してハーレム学園生活かー」
佐原&根岸「漫画かよ!!」
佐原「ホタテ要素いる?」
根岸「今のところ不必要ですね」
佐原「だろうなぁ」
根岸「……」
佐原「なぁ……、根岸……」
根岸「……」
佐原「ひょっとして」
根岸「たぶんそうです」
佐原「俺も攻略対象か……」
根岸「孤独な天才陰陽師の先輩枠です」
佐原「うわぁ……」
根岸「レベル75から攻略可能です」
佐原「そっちはレベルの概念あるんだ」
閉幕
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