Ne.23『残されたワシらにできるのは、人間という種族を根絶やしにするだけなんて……』

佐原「来たか、パイロットのような存在の根岸くん!」


根岸「佐原博士……、これは……、この巨大なロボットは……」


佐原「うむ、これこそがそれっぽい敵と戦うための、噂のアレじゃ」


根岸「噂のアレってなんだ。ふわっとしてるな。――しかしこのロボット、常時浮遊してるんですね……、動力は一体……」


佐原「うん、なんか浮いちゃった」


根岸「なんか浮いちゃったって……。ふわっとしてるなぁ……」


佐原「原理とかよくわかんないけど、浮いちゃったのじゃよ。――しかも実はよく見るとハーネスとかで止めてあるわけでもないんじゃよ」


根岸「……あ、天井に引っかかってるだけなんですかこれ?」


佐原「そう。天井なかったらどこまでも飛んでっちゃう」


根岸「風船みたいだな……」


佐原「パイロットは根岸くんでなくてもいいんだけど、まあ他にいないから。――さっそく乗り込んで、敵っぽい何かと戦うといいかもしれないのじゃよ」


根岸「全体的にふわっとしすぎてる! なんだ、敵っぽい何かって何だ! 戦うといいかもしれないって何だ! あとどうやって乗るんだ! ハシゴもなんもない!」


佐原「浮けば?」


根岸「えぇ……」


佐原「根岸くんも浮けば乗れる、かもしれない。かもしれない運転」


根岸「……浮く。アレですか、なんかコックピットからスポットライトみたいな光が出て、パイロットが吸い込まれるみたいな」


佐原「なんじゃそのファンタジー、ウケる」


根岸「博士が作ったんでしょうこれ、乗り方くらいなんとかしてくださいよ」


佐原「いやワシが作ったようなそうでもないような」


根岸「なんでそこもふわっとしてるんだ!」


佐原「できてた」


根岸「できてたってなんだ!」


佐原「……」


根岸「……」


佐原「……お」


根岸「え?」


佐原「乗った?」


根岸「え、なんかいきなりなんですか。ここがコックピットですか? なんでいきなり乗ったんですか?」


佐原「ははは不思議じゃのう」


根岸「不思議じゃのうじゃない! どういうことなの……、なにが起こったの……」


佐原「とにかく出撃じゃ根岸くん! なんかをやっつけろ!」


根岸「なんかって何!」


佐原「誰かの未来を守るんじゃ!」


根岸「誰かって誰!」


佐原「……はぁ……、あのね根岸くん」


根岸「……はい」


佐原「人生には、時にファジーさも必要なんじゃよ?」


根岸「しみじみ言ってますけど、今回のコレ、『時に』どころじゃなく全てがファジーですからね?」


佐原「はははなんじゃそれマジウケる」


根岸「ノリも軽い! ――っていうか、博士これ、どうやって操縦するんですか」


佐原「え、知らん。フィーリングフィーリング」


根岸「えぇ……」


佐原「とりあえず格納庫の屋根、開けるぞ、行ってくるのじゃ!」


根岸「え、ちょっと待ってください。開けたら浮いて飛んでっちゃうだけなんじゃ」


佐原「はははマジウケる」


根岸「ちょ、待て待て待て、動け動け動け動け! 動いてよぉ!」


佐原「うわ似てないモノマネじゃのぅ」


根岸「モノマネじゃない! あ! なんか動いた! 動きましたよ!」


佐原「巨大なロボットが空中で足バタバタさせてる、マジウケる」


根岸「ええいなんで浮いてるんだ! なんで浮いてるのに二足歩行なんだ!」


佐原「歩行できてない二足歩行とは」


根岸「あんたが作ったんでしょ!」


佐原「そういう日もあるのじゃ」


根岸「なにが!」


佐原「いーから、とにかくなんかと戦うのじゃ! ゆけ、根岸くん!」


根岸「何と戦うためのロボなんだほんと……」


佐原「外出てテキトーに戦えばいいんじゃよ」


根岸「そんな軽いノリで」


佐原「重く言ったら大変じゃろうが!」


根岸「……」


佐原「ある日突然、人間の『共感する能力』がなくなって、他人に攻撃的になる人が増えて、それが感染して、どんどん増えてって、もうまともな人間なんてほとんどいなくて、残されたワシらにできるのは、人間という種族を根絶やしにするだけなんて……、そんな現実……、大変じゃろうが……」


根岸「博士……」


佐原「……辛い役目だが、頼んだぞ根岸くん……」


根岸「ウソでしょ?」


佐原「ウソじゃよ?」


根岸「ノリが軽い!」


佐原「そんなん無い無い、なんとなくロボットっぽいのを作っただけじゃよ。敵っぽいの探して戦えばいいんじゃない?」


根岸「ノリが軽い! ――ってあれ博士? アラートが出てますよこのロボット。ダメージ? なんで?」


佐原「あれー、なんかパーツがぽろぽろ落ちてきてるのぅ」


根岸「えぇ……、なんかじわじわ壊れてきてますよ!」


佐原「接着、糊じゃからかの、あはは大変大変」


根岸「ノリが弱いし軽い!」


佐原「オチも弱い、マジウケる」




閉幕

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る