Ne.6『そこで俺は門の前の掃き掃除を命じられるんだ!』
佐原「掃除とかさー、掃除とかさー」
根岸「何だ。さっさと落ち葉を集めて終わらせようよ」
佐原「掃除とかさー、落ち葉食べてくれるロボがやればいいと思わない?」
根岸「なにそのロボ。掃除機と何が違うんだ」
佐原「妖怪でもいいぞ。妖怪、落ち葉ひろい食い」
根岸「絵画のタイトルみたいなもんが聞こえた」
佐原「……めんどいー、めんどーいー」
根岸「はいはい、いいから掃く」
佐原「……」
根岸「……」
佐原「はっ!」
根岸「今度はなんだ」
佐原「……」
根岸「……なに?」
佐原「きた」
根岸「きたのか。なにが」
佐原「真理を得た!」
根岸「……あ?」
佐原「真理を得た!」
根岸「……得ちゃったのか、もう」
佐原「そう、俺には啓示が下ったね、もうなんもかんもわかっちゃったね!」
根岸「そうか」
佐原「そう!」
根岸「……俺らの仕事は?」
佐原「寺の門あたりの掃き掃除!」
根岸「俺らの身分は?」
佐原「小坊主!」
根岸「なのに、もうわかっちゃったのか」
佐原「そう、真理を得たよ。天啓が下ったんだ。門前の小僧、習わぬ経を読むってやつだね!」
根岸「優秀ですこと。そもそもここまでお経聞こえてこないけど」
佐原「お経はわからん! さっぱりだ! なむなむ!」
根岸「わからんのか。じゃあなんの天啓を得たんだ?」
佐原「この世の真理!」
根岸「それってお経に書いてあるんじゃないの? 知らんけど」
佐原「まあまだ何も教わってないもんな」
根岸「うん、なのに佐原は真理にたどり着いたという。これは異な事だ」
佐原「それがね、天啓が下ったんだよ、今ふいに! 突然に! アクシデンツ!」
根岸「神様から? ――ああ違う、仏様から?」
佐原「いや違う」
根岸「どなた?」
佐原「どなたというか」
根岸「誰?」
佐原「作者」
根岸「……」
佐原「これ書いてる人」
根岸「……Oh」
佐原「作者の本音が、俺には聴こえる! いわばこの世界のアカシックレコードと繋がったんだよ俺は!」
根岸「何をわけのわからないことを」
佐原「いやそれがマジで」
根岸「マジで」
佐原「卍卍」
根岸「……作者、なんて?」
佐原「ピザ食べたい」
根岸「……えぇ……」
佐原「俺も食べたい!」
根岸「……そうか」
佐原「コーラは迷ってるぽい。ビールにしようかなーって。俺もビールにしようかなー」
根岸「いや小坊主としてビールはどうよ」
佐原「仏道に帰依していても、そういう日もあります」
根岸「……いや設定年齢的に」
佐原「ピザ頼んじゃう? ここに」
根岸「ここってお前、寺の門前で小坊主がピザ食ってたらダメでしょ」
佐原「仏道に帰依していても、そういう日もあります」
根岸「いやいやいや」
佐原「だって天啓が! ピザ食べたいって! 脳に直接! ファミチキかよ!」
根岸「……あのさ、その天啓、何か役に立つのかな?」
佐原「んー。まあ、作者の声が聴こえるってことはだよ? これつまりこの世界のアカシックレコードと繋がったも同然! これはもう最強です! 小坊主無双!」
根岸「アカシックレコードのくだり二回目だぞ」
佐原「この先の展開も、この世界の真理も、すべてはもう、わかってしまったのですよふふふ」
根岸「わかってしまったのか。――で、作者はなんて?」
佐原「ピザ食べたい」
根岸「……なんて役に立たない」
佐原「もっとこう、この世界で楽にお金儲けできる方法とか知りたいよね。そしてモテモテになって石油王になるんだ」
根岸「この小坊主、欲まみれじゃないか」
佐原「……」
根岸「……」
佐原「あ、途切れた」
根岸「何、もう作者との交信終わったの?」
佐原「天啓終了のお知らせ」
根岸「そういうもんなのか」
佐原「そういうもんらしい」
根岸「……ふうん」
佐原「まあほら、掃除しようぜ掃除、しなきゃ話が進まない」
根岸「そうなのか、掃除しなきゃ進まないのか」
佐原「いや知らん、知らんけど、掃除が終わらなきゃピザも頼めない」
根岸「……作者がか」
佐原「というわけでっ、お掃除お掃除っ」
根岸「なんか、テンションおかしくない? 明らかに上機嫌じゃない?」
佐原「そう? 掃除するときはいつもこんなだよ?」
根岸「いやいやいや、ついさっきまで全力でめんどくさがってたじゃないか」
佐原「さっきはさっき、今は今!」
根岸「……」
佐原「……」
根岸「何か、交信が途絶える前に作者から情報を得たな?」
佐原「イエベツニ」
根岸「カタカナじゃん」
佐原「流石は根岸だ、よくぞ見破った。仕方ないからお前には話してやろう」
根岸「うん」
佐原「俺はこの後、モテモテになる! わかってしまったんだぜ!」
根岸「……そうなのか」
佐原「掃除をしてたら、高級車に乗ったお嬢様が現れて、俺を乗せていくんだ。連れて行かれた先は大豪邸、そこで俺は門の前の掃き掃除を命じられるんだ!」
根岸「結局、掃き掃除するんだ……」
佐原「そう! そしてそこのメイド達にモテモテになるらしい!」
根岸「……俺は?」
佐原「え、しらない。ここでピザ食べてれば?」
根岸「いやいや、なんでお前だけいい目にあうんだ。俺も同じように掃き掃除してるのに」
佐原「根岸もピザ食べられるじゃん」
根岸「いや頼むなら一緒に食べようよ。そして一緒に大豪邸に行こうよ」
佐原「掃除をしてないとお嬢様が来ないんだ!」
根岸「じゃあ俺も掃除するわ!」
佐原「ピザはどうするんだよ!」
根岸「まだ頼んでないよ」
佐原「頼んでないなら来ないだろ!」
根岸「だから来ないんだって、頼んでないんだから」
佐原「真理!」
閉幕
根岸「おい閉じるぞ」
佐原「ちょっとまって閉じたらモテモテはどうなる!」
根岸「掃き掃除も終わらなかったなぁ」
佐原「お嬢様の名前がマリって名前だっていうオチはどうなったんだ!」
根岸「ああそれは閉じといたほうがいいやつだ」
閉幕
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