Ne.4『ああ巨大ロボが順調に殴られている!』

根岸「……ん」


佐原『おはよう助手の根岸くん、目覚めたかね』


根岸「佐原博士? ええとここは、なんだ? 視界が、高い?」


佐原『うむうむ』


根岸「コックピット的な場所と、モニタに博士、ふかふかの椅子と、変な服……これは……」


佐原『そう、時代は巨大ロボット物じゃよ根岸くん!』


根岸「不定期に来ますねその時代、っていうか今回は展開が早い。もう乗ってるし着替えてるじゃないですか」


佐原『こんなこともあろうかと開発しておいた巨大ロボ、その名も『巨大ロボ』じゃ!』


根岸「ネーミングセンス」


佐原『ジャイアントロボだって似たようなもんじゃろ』


根岸「まあ、うん」


佐原『というわけで、目の前のよくわからない敵のよくわからない人型ロボを倒すのじゃ! それゆけ巨大ロボと根岸くん! ふぁいやー!』


根岸「倒せって……」


佐原『敵は目の前じゃ! がんばれふぁいやー!』


根岸「は? ―――ちょ、もう目の前にいるじゃないですか! ちょっと待って展開が早い!」


佐原『ああ巨大ロボが順調に殴られている!』


根岸「すごい揺れる!」


佐原『頑丈に作ってあるから大丈夫じゃぞ根岸くん! 椅子の背もたれは低反発素材でふかふかじゃ!』


根岸「博士! 博士これ、どうやって動かすんですか!」


佐原『寝てる間何をしていた!』


根岸「寝てました!」


佐原『睡眠学習を施した、もうマニュアルは根岸くんの頭の中に入っているはずじゃ』


根岸「なんかすごい未来っぽい―――」


佐原『巨大二足歩行ロボットが戦う時代で、睡眠学習ができないわけがないじゃろ』


根岸「しかし博士! ちょ」


佐原『あーあー殴られまくってる』


根岸「博士! 動かし方さっぱりわからないんですけど!」


佐原『椅子の頭のクッションの下に紙のマニュアルあるからそれを読むのじゃ!』


根岸「用意はされてるんだ……」


佐原『こんなこともあろうかとな!』


根岸「……まさかこれが睡眠学習なんじゃ」


佐原『それゆけ巨大ロボと根岸くん! 悪のロボットをやっつけるのじゃ!』


根岸「博士、このマニュアル、日本語のページがラスト2ページくらいしかないんですけど。しかもパーツ紹介だけしか載ってない」


佐原『グローバル化じゃ!』


根岸「外国の方が乗る可能性があるんですか、このロボ」


佐原『無い! 根岸くんしか乗らない!』


根岸「無駄なページじゃないですかほとんど! 読めませんよ日本語以外! なんでこんなマニュアルを!」


佐原『グローバル化じゃ!』


根岸「やかましい! ああ揺れる!」


佐原『いいからとりあえず反撃じゃ反撃。頑丈にできてるから倒すまで終わらんぞ』


根岸「負けることはないのか……」


佐原『それゆけー、巨大ロボー、シャイーンボールでー、一掃だー♪』


根岸「歌ってる場合ですか!」


佐原『主題歌が流れたら勝ちパターンじゃ!』


根岸「っていうか、シャイン、ボール? 必殺技があるんですね! あ、なんか発射された!」


佐原『シャインボールは音声認識で出るぞ』


根岸「あ、また発射された。博士の声でも反応するんですね」


佐原『音声認識はできるけど、音声識別なんてSFみたいな機能は無い!』


根岸「SFと現状の境目がさっぱりだ! とりあえず博士、この必殺技、弱いですよ!」


佐原『シャインボールは、操縦者のテンションで威力が変動するのじゃ。叫ぶんじゃ!』


根岸「なにそれ恥ずかしい」


佐原『言ってる場合か、必殺技は叫んでこそじゃ! 倒さないといつか負けるぞ!』


根岸「ええいくそ、シャイイイイインボオオオオオオル!」


佐原『おおまったく効いてない』


根岸「なんてこった! 博士、ほかに武器は!」


佐原『ハイパーシャインボールがあるぞ、出力はさっきの1.5倍じゃ!』


根岸「ハアイパアアアア、シャイイイイイン、ボオオオオオオオル!」


佐原『ハイパーシャインボールはボタンを押せば出るぞ!』


根岸「先に言って!」


佐原『どっちも音声認識にしたら誤射しちゃうかもしれないじゃろ』


根岸「ああもう合理的! どのボタンですか!」


佐原『右のボタンじゃ!』


根岸「このロボ、ボタンみっつしかついてない!」


佐原『レバーとボタンと音声認識でだいたいオッケーじゃよ』


根岸「ええい、ポチっとな!」


佐原『おー、効いてない』


根岸「まったく倒せる要素がないじゃないですか! ああ揺れる揺れる!」


佐原『相手も相手で、殴る以外の攻撃ないのかのぅ……』


根岸「決着つくんですかこれ」


佐原『最終兵器がまだある』


根岸「あるんですか」


佐原『最終回でラスボスを倒すために用意したのに。ちなみに右のボタンを秒間16連打で出る』


根岸「割と大変だ……」


佐原『スーパーハイパーウルトラシャインボール改』


根岸「全部シャインボールなんですね」


佐原『出力がハイパーシャインボールの約100那由多倍』


根岸「小学校以来ですよその単位聞いたの。めちゃくちゃ強いじゃないですか」


佐原『うむ、計算では発射と同時に地球が崩壊する』


根岸「ナニソレ」


佐原『順序で言えば、発射の衝撃で巨大ロボが崩壊、そこを起点に円形に崩壊が広がってゆくはずじゃ。強力すぎる兵器は身を滅ぼすのじゃよ……』


根岸「ちょうどいい塩梅の武器はないんですか、いつもみたいに「こんなこともあろうかと作っておいた」ってヤツ」


佐原『無い。今回に至ってはマジで無い』


根岸「えぇ……、じゃあ残りのボタンは?」


佐原『呼び鈴とコックピットの電気じゃ』


根岸「呼び鈴て……」


佐原『儂を呼べる』


根岸「えぇ……、ほかに、何かついてないんですか?」


佐原『自爆スイッチ』


根岸「あぁ、やっぱりそれはついてるんですか」


佐原『ロマンじゃからな、自爆は』


根岸「でも、もう余ってるボタンないじゃないですか」


佐原『うん、音声認識』


根岸「……」


佐原『……』


根岸「えぇ……」


佐原『……』


ドーン


佐原「根岸くーん!!!」




佐原「こんなこともあろうかと」




佐原「それゆけ巨大ロボ2と根岸くん2! 敵のロボを倒すのじゃ!」




閉幕

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