8‐1 作戦コード000

山になった汚染獣に背を向けて、帰っていく三人。チハルは一番後ろにいたため、必然的に先頭を歩くことになる。何もしていない分、レンやアズサの前に立っていることが、とてもいけないことのように思えてきた。加えて、なんとなく気恥ずかしいのもある。

そんな時だった。突如として、管制塔から鋭い声が飛ぶ。

「監視システムにより、汚染獣を発見」

「また⁈」

 アズサが驚きの声を上げる。

「もともと汚染獣っていうのは、ポイントXから湧くもの。こちら側から、彼らの生息域に入り込でいたのよ」

あくまでカオリは冷静だった。

「このまま、出動するのか」

レンが尋ねる。

「そうなるわね」

「連続で大変だろうけど、頑張って」

ミオコの声援に、アズサは、

「りょーかいっ」

と、緊張感なく答えた。

改めて、司令官からの指令が出される。

「ヴァロ三機に、再度戦闘を命じる。対象は二体の巨大型汚染獣。なお彼らは、群れではない単体の生物であり……」

そこまで言って、なぜか口をつぐむカオリ。顎に手を当てて考え込んだ後、身を乗り出して告げた。

「作戦変更。これより作戦コード000、ポイントXの殲滅を開始する。確認された汚染獣を処理しながら、最深部へと向かう」

真っ先に突っかかったのは、ミオコだった。

「司令官、本気ですか。すでに体力を消耗しているパイロットでは、危険すぎます。戦い続けるより、一度出直して態勢を整えた方が……」

「もう一度、今の位置までたどり着けるというの?ヴァロ三機の現在地から、ポイントXは目と鼻の先。たぶん、目視で確認できるはず。それぐらい迫ることができた。まさに快挙よ」

「かといって、強行突破でパイロットが負傷なんてことになれば、これから先の危機に、対応できなくなるのではないですか」

ミオコが食い下がるが、カオリの語り口調にも熱がこもる。

「この好機、逃してたまるものですか。私たちは何のために、戦い続けてきたの。ポイントXの殲滅、世界を救う最後の一手を出すためでしょう?いつかやらなければいけないのなら、これからの危機をなくすために、今、動くのよ」

反論できなくなり、言いよどむミオコ。内心、納得している部分もあったのだろう。

「了解」

と、ボソッとだが答えた。

「パイロットにも、伝わったわね」

「はい、聞いていました」

「では急ぎ、ポイントXへ。汚染獣を迎え撃つのではなく、こちらから襲撃する心持ちでいなさい」

「了解」

レンが言うと、すぐに一号機が動き出す。次いで二、三号機も歩き始めた。

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