デッドマンズ・アー・デッド7

 イタリア軍を壊滅させるのにそう時間はかからなかった。

 基地内で分散していたらそれなりに戦力も分散するもので、イタリア軍は戦闘に慣れていなかったため統制が取れていなかった。まとまりのない敵など他愛なかった。

 イアンはウィルディ・ピストルに最後のマガジンを装填し直した。残弾は二発。殺せるのはあと二人だ。


「どうも胸がざわつく。ジャンとエステルが気がかりだ。急ごう、オリガ」


「はい……」


「どうかしたか?」


「えっ、い、いえ、なんでもありませんわ。私もジャンとエステルが心配で……」


 オリガは視線を逸らした。イアンの瞳を見つめていられなかった。やましいことを見透かされているかのようでとても耐えられなかった。

 だが、イアンは薄紫色の瞳を見ずともオリガが何か隠していることを見透かしていた。

 ここを脱出したらオリガに秘密を問いただす。オリガはどう答えるだろうか。沈黙が答えならそれでもいい。だが、できることならオリガには真実を語ってほしい。そうでなければ結婚はできない。秘密を打ち明けずして愛し合うことはできない。

 二人は言葉を交わすことなく閑散とした廊下を進んだ。暗黙の了解、とでも言おうか。何も言わずとも互いに言わんとしていることは理解できた。やはり彼らに言葉はいらなかった。

 確かに、言葉は世界に平和をもたらす唯一無二の救世主かもしれない。だが、言葉がなくとも得られるものはたくさんある。例えば、愛と幸せ。そもそもこれらは言葉にできない概念だ。言葉にできた時点で、きっとそれらは陳腐極まりないものになってしまう。だから、人間はあえて言葉にしないのかもしれない。

 イアンはスキットルの底に余ったウイスキーで渇いた喉を潤した。

 それにしても、私も衰えたものだな。現役の頃は一日中戦場を駆けずり回っても疲れることを知らなかったというのに、退役から一年でこの様だ。左目は死角となり、右脚は足手まといとなっている。ハンデを抱えて戦うのは楽なものではない。

 だが、これでいいと思った。

 両目が潰れて四肢がなくなったら戦いたくても戦えない。こうして戦場に立つことはない。ずっとオリガと一緒にいられる。もう誰も守らなくていい。全て運命に身を任せればいい。私が戦わなければ世界はほんの少し平和になるだろう。オリガも幸せにできるだろう。


「帰ったらキャロルで乾杯しよう。私はもうどこにも行かない。これからはずっと一緒だ」


「……ええ。私もそう望んでいます」


 ジャンから滴った血液の跡を辿っていくと、外へと繋がるドアが見えた。

 このドアを開けたら私の人生は変わる。戦争のない人生を歩むことができる。世界に戦争はあっても、私の中から戦争はなくなる。

 しかし、ドアを開けても幸せなどなかった。不幸な光景がイアンを戦慄させた。

 親愛なる二人の死体。手を重ね合って眠る理想的な夫婦。幸福な寝顔でありながらどこか哀愁を帯びている――それが死だ。

 ジャンとエステルの死に動揺しつつも、イアンは己の冷静さを感じていた。同時に、沸々と怒りが込み上げてくるのを感じていた。

 脳裏を過ぎったのは、黒髪と琥珀色の瞳を持つフランス人――ルノー・シャントルイユだった。瞬間、彼がオリガの叔父ではないことを確信した。


「オリガ、これは一体どういうことだ?」


 イアンはあくまで高ぶる感情を抑えてそう言った。オリガは俯いて無言を貫いた。


「答えろ、オリガ! 私を愛しているなら何も隠さないでくれ! 君は出会った当初から私に何かを隠している! 何故だ? 君が秘密主義なのは承知の上だが、私にも打ち明けられない秘密なのか?」


 オリガは首を横に振った。何を否定したのかはわからなかった。ただ、乳白色の頬を透明な雫が伝っていた。


「ごめんなさい、イアン……私はずっとあなたを騙し続けてきました……ずっと打ち明けたかった……ですが、あなたに嫌われるのが怖くてずっと打ち明けられなかった……」


「嫌いになるものか。たとえ君に騙され続けてきたのだとしても、君の愛は本物だった。そうだろう、オリガ?」


 オリガはばっと顔を上げた。が、彼女が答える前に邪魔が入った。


「それはどうかな。果たしてオリガの心はどこにあったのか」


 物陰から現れたのは、ルノー・シャントルイユだった。銃を構えていたため、イアンはウィルディ・ピストルとジャックナイフを捨てた。


「お前に何がわかる。オリガの心が私になければ同棲などしなかっただろう」


「どこまでも憐れな男だ。私が君の立場ならここですぐさま自殺するがね。オリガは私の部下だ」


「部下だと? なんの?」


「鈍い男は嫌われるぞ。オリガ、お前の口から言ってやれ」


 イアンは固唾を飲んだ。

 騙し続けてきた――その正体が全く不明瞭で、なんだか怖かった。心の底から愛しているオリガに幻滅するのではないかと不安になった。

 オリガは涙を拭いもせずに口を開いた。


「私は……KGBの職員です」


 KGB――ソ連国家保安委員会。ロシアがソ連時代、ウラジーミル・レーニンが発足したチェーカーという組織を受け継いだ秘密警察である。

 イアンは耳を疑った。


「待て、KGBはソ連の崩壊と同時に解体されたはずだ」


「表向きにはな。私たちの中にはまだソ連が生きている。これは世界への復讐だ。武器を売買する組織を潰してこそ平和への一歩となる。これが私たちの信念だ」


「つまり、コーサ・ノストラを潰すのがお前たちの信念だった、と」


「そうだ。だが、コーサ・ノストラは平和を阻害する要因の一部に過ぎない。武器を売買しているギャングやマフィアは腐るほどはびこっている。強力な武器のせいで何人の命が犠牲になった? アメリカとロシアのくだらない戦争のせいで何人の命が犠牲になった? 私たちは世界から戦争をなくしたいのだ。戦争を力で捻じ伏せようとするやり方を批判する者もいるが、これ以外にどんなやり方がある? 私たちが間違ったことをしていると思うか?」


「戦争はなくならない。お前たちのように戦争を潰すために戦争を起こす人間がいる限りはな」


「では、君の持論を聞かせてもらおうか」


「持論というほどのものではないが……戦争は世界の一部だ。戦争なくして世界は成り立たない。戦争は自然の摂理、死の側面でもある。生と死があるようにな」


「諦観した持論だな。それなら君はなんのために戦っていた?」


「何かを守るためには戦わなければならない。私は家族を守るために戦っていた。だが、家族を失って私がしてきたことの無意味さを思い知らされた。退役してから兵士になったことを後悔した。それでも私は戦いを求めていた。そして、気付いた――戦争はこの世界の歯車なのだ、と」


「確かに、君の持論にも一理ある。しかし、それが世界の姿なら間違っている。私たちはそんな世界を正そうとしているのだ。君が言ったように、何かを守るためには戦わなければならない。現役時代の君も私たちと同じだったはずだ。君は全てを失い、世界を諦観するようになった。私たちにはまだ希望がある。なあ、同志オリガよ」


「はい。戦わずして平和を掴み取ることはできません」


 ようやく合点がいった。オリガが平和に対して執念深い理由がわかった。

 にわかには信じられないことだが、オリガがKGBの残党であることに疑いの余地はなさそうだった。そして、「騙し続けてきた」という言葉の意味を理解した。


「イアン、ごめんなさい。私立探偵なんて嘘です。本当はコーサ・ノストラの動向を探っていたのです」


「ジャンを殺そうとしていたのか?」


「……はい。ですが、あなたと出会ったのは偶然でした。ジャンが親しい友人であることを知って、あなたを利用させてもらうことにしました」


 イアンは言葉を失った。

 愛する者の裏切りほど辛いものはなかった。イアンが初めて心から愛した女――オリガ・ガヴリーロシュナ・アスラノヴァ。それだけに心が受ける衝撃は大きかった。


「罪悪感で何度もあなたから離れようとしました。ですが、できませんでした」


「私を愛していたから?」


「…………」


 オリガは何も答えなかった。いや、答えられなかった。答えたらまたイアンから離れられなくなってしまいそうだったから。

 ルノーは銃の引き金に指をかけた。


「イアン・グウィン、君のおかげでコーサ・ノストラを解体することができそうだ。最高幹部を失い、今頃はボスも土の中だろう。君には感謝しているよ。だが、君は脅威だ。廃工場での一件でイタリア軍からも抹殺の依頼があってね。君には死んでもらう」


 しかし、ここでオリガが待ったをかけた。


「それでは話が違います! イアンを殺さないと約束したではありませんか!」


「これも平和のためだ。こういう戦争依存症がいるからいつまでも世界は平和にならないのだ。危険因子は一人でも殺しておいた方がいい」


「そんな……イアンは戦争依存症なんかではありません! イアンはもう戦いません!」


「何故そう断言できる?」


「私が信じているからです。イアンは理由なく人間を殺したりしません。全て家族や友人や私のためにしたことです。イアンは危険ではありません」


「ふん。イアン・グウィン、認めよう。オリガは君のことを愛しているようだ。だが、友人を殺されても君はオリガを愛せるか?」


 愛したい。だが、許せない。

 私を騙してジャンとエステルを売った罪は大きい。私にとっては非常に残酷なことだ。またしても私は全てを失おうとしている。ここで赤い糸を切れば私は全てを失う。許せるか許せないか――それで私のこれからの人生が決まる。いや、もう私に人生などないのかもしれない。ここで殺される運命なのかもしれない。それでも死ぬ前にこの答えは出しておきたい。これこそが愛の証明だ。

 だが、イアンはあえて愛を証明しないことにした。もはや何も言うまい――そう決意した。

 肩の力を抜き、瞼を閉じる。運命に身を委ねる。今まで己の命は己でなんとかしてきたが、生と死がわかたれるまで意志も思考も放棄する。


「イアン・グウィン、答えはノーか? まあ、たとえイエスでも君の運命は変わらない。もっとも、君は既に運命を受け入れたようだがな」


同志タヴァーリシチ、やめてください! イアンを殺すのは私たちの信念に反しています! イアンは戦争の被害者です!」


「戦争の被害者は世界中にいる。むしろ、被害者の割合の方が圧倒的に大きい。私も君も戦争の被害者だ」


「では、イアンを殺すのは信念に反していないというのですか?」


「これは信念どうこうの話ではない。危険因子を排除するか否かの話だ。ここで殺しておかなければ私たちの脅威にもなるかもしれない。現に私たちはイアン・グウィンの親友を殺した。私たちがしたのは、イアン・グウィンにとっては戦争と同じことだ。復讐されてもおかしくはない」


「あなたがやろうとしていることは間違っています! 不安の種を潰すことを正当化しようとして、守り続けてきた信念を見失っています! あなたがやろうとしていることは戦争です!」


「戦争、か。それはそれで仕方あるまい。イアン・グウィンの持論を引用するとすれば、戦争はこの世界の歯車だ。一つの危険因子が死に、複数人が生き残る。それがこの世界だ。私たちはこれまでもそうやってきただろう? 何を今さら迷っている?」


「ですが……」


「やれやれ、愛は人間を盲目にするというのは本当なのだな。くだらない。同志よ、私たちが目指すべきは世界の平和だ。イアン・グウィンは憐憫にも値する。だが、この男は罪の意識もなく何人もの人間を手にかけてきた。それどころか殺戮を楽しんでいる節があるというではないか。オリガ、君はこう言った――緑色の隻眼にはおぞましいまでの狂気が宿っている、と。君は明らかに恐怖していた。イアン・グウィンのそばにいることを拒んだ」


「確かに、イアンのそばにいることは怖ろしくもありました。かつてのイアンはまるで飢えて死にかけている獣のようでした。私は恐怖と同時に憐憫を感じていました。鎖から解き放たれた野良犬のようで目も当てられませんでした。ですが、イアンはもう野良犬ではありません」


「君が飼い主か? それなら君が飼っているのは狂犬だ。愛犬であっても狂犬は殺さなければならない。いずれは飼い主の手にも噛みつくようになる」


「それでも構いませんわ。私はイアンの全てを受け入れます。たとえそれが殺意であっても」


「ああ、同志よ、一体どうしてしまったというのだ。一年前の君はどこに行った? もはや今の君には孤高だった面影もない。恋に現を抜かすとは愚かしい。オリガ、信念を思い出せ」


「信念を忘れたのはあなたの方です。あなたは変わりました。そして、私も。私は私の信念を貫きます」


「ふん、いいだろう。オリガ、この瞬間より君をKGBから除名する。上官命令だ」


「わかりました。では、運命に全てを委ねましょう。あなたがイアンを殺すというのならそれも運命ですわ」


 イアンは暗闇の中で二人の会話に耳を傾けていた。ただひたすら無心に、ただひたすら無情に。彼は生と死の狭間に立っており、自らの意志で生きようとも死のうともしなかった。

 私に明日は訪れない。私が死ねば当然のこと、仮に生きていたとしてもオリガとは別れなければならない。許せないということももちろんあるが、理性のたがが外れて殺意が暴走してしまいかねない。この決別はオリガを守るためでもある。復讐の連鎖はそう簡単には断ち切れないものだ。

 瞼を閉じたまま、イアンはわざとトレンチコートの懐に手を入れた。ルノーの警戒を煽るためだ。本当は煙草が残っていやしないか探るためだったのだが、彼は生と死が同時に襲いかかってくる重圧に耐えられなくなって審判を早めようとした。

 ルノーはイアンの思惑にまんまと引っかかり、反射的にトリガーにかけた指を力ませた。

 銃声が反響する。耳の中で音の波がこだまし、頭蓋骨を揺らす。

 痛みはない。傷を感知して初めて痛みが成立する例は珍しくない。もしかしたら、既に身体のどこかに風穴が開いているかもしれない。

 だが、今さら風穴一つくらいでどうやって死ねるというのだろう。人間の身体というものは不思議だ。片目を失おうとも片脚を失おうとも生きていられるのに、一発の弾丸が穿たれる部位によって生死を左右される。

 運命は私を死なせてくれなかった。運命に見放されたのか見放されなかったのか。どちらでもいいが、私は生きている。運命が私を殺すのか否か見物だ。

 イアンは瞼を開いた。それと時を同じくして、長身痩躯が棒切れのごとく倒れた。

 オリガが構えたグロックの銃口から細い煙がたなびいている。硝煙の臭いが甘い。そんな錯覚に陥る。

 運命はまた私を死なせてくれなかった。今度は私が運命を決める番だ。

 ウィルディ・ピストルを拾い、イアンは銃口を長い黒髪に向けた。


「飼い犬に手を噛まれた気分はどうだ。いや、野良犬か。お前はもう飼い主ではない」


「オリガ……何故だ……信念を曲げてでもこの男を愛そうというのか……」


 頷くオリガ。迷いはなかった。


「私にはイアンを殺せません」


「君も殺されるぞ……何故そこまでして……」


「殺されてもいいくらい愛しているのです。イアンはアルビノの地獄から私を救い出してくれました。そして、私は戦争の地獄からイアンを救い出しました。私を殺してイアンの戦争は終わります」


「実に愚かしい……君には失望したよ……君は重大な罪を犯した……」


 トリガーに人差し指をかける。


「人間は罪を背負う生き物だ。罪のない人間などただの一人もいない。皆が何かしらの罪を背負って生きている。さあ、祈れ。平和のために祈るがいい。お前は死ぬ運命だ。言い残したことはあるか?」


「平和なんてくそくらえだ……」


 イアンはトリガーを引き絞った。運命に従い、生を噛みしめながら。

 全て終わった。私の戦争が終わった。私の人生が終わった。もはや全てがどうでもいい。オリガのいない人生などなんの価値もない。オリガのいない人生など生きる意味がない。

 イアンはウィルディ・ピストルを地面と平行に掲げた。オリガはグロックを落とし、静かに瞼を閉じた。二人共運命を受け入れる覚悟はできていた。


「私を愛しているなら、何故ジャンとエステルを殺した?」


「私だって殺したくはありませんでした。誤った信念を貫いたばかりに、愚かな過ちを犯してしまいました」


「君は一つの家族を無残にも破滅へと追いやった。ジャンとエステルは子供と幸せな家庭を築くはずだった。君は平和をその手で握り潰したのだ。君自身が望んでいた平和そのものをな」


「おっしゃる通りですわ。ジャンとエステルには恨まれても仕方ありません。もちろんあなたにも。私がしたのは罪深いことです。とても贖えることではありません」


「そうだ。死をもってしても償える罪ではない。だが、このまま君を見逃すことはできない」


「では、あなたが決めてください。運命ではなく、あなたに生死を決めてほしいのです」


 決められるはずがなかった。心から愛した相手を殺すことなどできるはずがなかった。それはオリガも同じであった。

 愛と憎しみのジレンマ。どちらが勝ってもオリガとは決別しなければならない。

 どうせ一緒にいられないのなら、いっそのこと殺してしまおうか。それとも、私がこの場で自殺してしまおうか。死体の山の上に立つか、死体の山の一部となるか。私に残された道はこの二つだ。

 風になびく白髪、萎れた白いまつ毛。長いスカートを固く握りしめる手は微かに震えている。緊張した肩は強ばり、ほっそりとした顎は喉の方へと沈んでいる。

 私が唯一愛した女――オリガ・ガヴリーロシュナ・アスラノヴァ。アルビノの美女はしっかりと私の記憶に刻みつけられた。一生忘れることはあるまい。オリガとの思い出は棺桶まで持っていこう。棺桶の中で甘美な思い出を抱いて眠るのも悪くない。


「さよならだ、オリガ。君は私が愛した最初で最後の女だ」


「あなたには感謝しています。あなたはアルビノの私を無機質な石膏像に例えてくださいました。あれほど救われた気持ちになった時はありません。イアン、あなたは私が家族以外で愛した最初で最後の人間です。あなたと出会えて本当によかった……」


 思わずウィルディ・ピストルを構える手が震えた。トリガーにかけた人差し指に力が入らなくなった。

 人生で最高の笑顔だった。誰にも見せたことのない眩いまでの笑顔。死を前にしているというのに、オリガは幸せに笑っていた。

 視界が白くぼやけた。腕がぶれて照準が定められなくなった。

 何故笑える? 何故死を怖れない? 私はこんな人間を見たことがない。

 この戦争時代、笑って死ぬというのは理想的だ。イアンはオリガの中に平和を垣間見た。


「……できない。私には君を殺せない」


 ウィルディ・ピストルとジャックナイフを地面にたたきつけ、イアンは踵を返した。

 戦争は終わった。


「もう二度と会うことはあるまい。さらばだ、私が愛した人」


 背後でオリガはどんな表情をしていることだろう、と思った。

 まだ笑っているだろうか。それとも、悲しみをこらえて顔を引きつらせているだろうか。それとも、泣いているだろうか。

 イアンは振り返らなかった。オリガと戦いを捨てた彼にはもうその必要がなかった。

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