第八章 ZEROになる勇気 三
掛け声も雄々しく、白鷺ナインがグラウンドに舞い降りて二戦目がスタートした。
第一試合では三菱重工神戸が西濃運輸と熱い戦いを繰り広げ、二対一で勝ち星を挙げていた。
鷺宮の先発は藤丸翔。社会人七年目の右サイドハンドだった。
一八一センチ、八十四キロの体は、マウンドに立つとやや小柄に映った。
藤丸最大の武器と言われているストレート。球速こそ百三十五キロ前後だったが、強気でぐいぐいと投げ込む姿は堂々たるものだった。
変化球もスライダー、フォークを低めに集めて、なかなかバットを降らせてはくれない。
したたかにチャンスの到来を待つ富士重だったが、二回と四回に先頭打者が塁に出るも、守備陣の完璧な守りに阻まれ、それきり快音は響かず。
スコアボードには虚しく0が並ぶばかりだった。
一方、鷺宮の攻撃は、二回に先頭打者が四球で出塁。続いてヒットでランナー一・三塁と見せ場を作っておいてスクイズを仕掛けるも、富士重の見事な連携守備でホームタッチアウト。
しかし、次なる打者が初球をセンター前に上手く運んで一点を先制した。
藤丸に負けじと、水上も一四〇キロ台の直球で新人らしく真っ向勝負を挑んでいった。
更に一〇〇キロ前後のスローカーブで、打者を惑わせていく。
真っ直ぐにタイミングを合わせている打者は、つい待ちきれずにバットを振ってしまう。
目線がブレ、本来のスイングができない打者に、更に曲落ちるカーブを芯で思いっきり捕らえるのは困難を極めた。
積極的にバットを振り続ける白鷺たち。しかし、当ててもゴロやフライに打ち取られ、なかなか得点に繋がらなかった。
五回裏には、初球から甘く入った直球を弾き返され、送りバントを決められた。
一死二塁の場面で、四番の白鷺が、センター前タイムリーを放って、あっという間に追加点が入った。
この回を終えて、水上はマウンド降りた。しかし臆することなく正面からぶつかっていった姿は清々しかった。
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