ところでその安い肉の産地って?
大陸西部・とある小国の王都
「外の屋台の肉? あれはダメですよ。硬くて不味い」
宿泊することにした高級宿で副支配人をしている男性が質問をするとなんでも答えてくれる。
ちなみに高級宿だから普通給仕をするのは女性が多い。だがこのテーブルだけは男性だ。それも副支配人だ。理由は……ウチの専属メイドさんが何かしているからだろう。
食堂に置かれている一番大きなテーブル……国王一家が訪れた時に使われる物らしい。
普通のお客さんには使われないが僕らは迷わずこっちに案内されました。
お肉お肉お肉果物のローテーションで、ノイエがずっと注文しているので広いテーブルの方が助かるのか? ただノイエの食欲が止まらないから、置かれる傍から料理は消えていくけどね。
何よりお肉の割合がおかしいだろう? お肉に飢えてるのか。
それでも心を鬼にして、たまに彼女の注文をインターセプトして事前に野菜を頼む。そうしないとノイエはずっと野菜を食べない。
運ばれてきた野菜を渋々食べるお嫁さんの姿が可愛らしい。
可愛いからと言って頼み過ぎると怒るので注意が必要だ。
で、基本料理は女性の給仕が運んで来る。
最初僕らのテーブルも彼女たちが運んで来た。
美人揃いでスタイルの良い、まるでそれを基準として集められた感のある人たちだ。
そして何故か彼女たちは僕に対して色気を振りまいて来て……ポーラが僕に背を向けガードするかのように対応し始めた。
結果として給仕の女性が全員震え上がってしまい、『従業員を脅さないで欲しいんだが……男でも許して貰えるか?』と挨拶をし、副支配人が給仕役となったわけだ。
何故に女性給仕が僕に色気を振りまくのかは、簡単な理由でした。
この国の王都には娼館が無い。宿泊客がその手の遊びをしたいなら、この食堂で働いている女性給仕を買うが普通なのだとか。だから給仕のはずなのに美人で露出が激しいわけだ。
もうほとんど下着と言うか水着と言うか……リグとかレニーラのレベルで露出が激しい。
『と言うか、横にお嫁さんが居て普通買うの?』とそもそも論を僕が展開すれば『買うでしょう?』とあっさり風味で返事を受けた。
驚きだけど事実らしい。その証拠に他のテーブルで食事をしている男性客は、笑いながら女性給仕を膝の上に置いている。
奥さんらしい人が近くに居るのに凄いな。ユニバンスであれをしたら嫁に殺されるぞ?
話を聞けば聞くほど、大陸西部は東部とは色々と違うっぽい。
嫁が居ても女性を買う。嫁が隣に居ても買った女性を抱く。何なら一緒にするのが普通らしい。
魔眼の中の誰かが聞いたら大喜びしそうなことを言わないで欲しい。
ノイエさん。どうして君のアホ毛が嬉しそうに揺れてるの? 後であのアホ毛には罰を与えよう。何かを察知して大人しくなってももう遅いからな?
続けて話を聞けば『大陸西部は力のある者。金を持つ者は、それを見せびらかし誇示するのが一般的なんですよ』とのことだ。だからお金を持つ僕の元に女性給仕が売り込みに来るのです。そしてポーラがキレるのです。
『あんなのは給仕じゃありません。先生に告げて大陸西部に制裁を与えないと……』などと恐ろしいことを呟きながら、ポーラは離れて待機している女性給仕を睨んでいる。
妹様よ。叔母様を抱きこむな。そして相手はメイドじゃないんだからメイド戦争を起こそうとする。ユニバンスのメイドなら大陸を制覇しそうな気がするけどね。
食事を運んでくる度に副支配人から話を聞けば、西部は本当に貧富の差が激しいらしい。
『自慢じゃないですが、自分は普段給仕なんてしないんですよ』と副支配人は笑って告げて来る。
今回だけの特別らしい。何故なら僕らは高級宿の一番高い部屋を前払いで借りている。
帝国で奪った宝石を預け、『換金して宿代と諸経費と換金手数料を差し引いた金額を戻して貰えればいいです。最悪戻し無しでも文句は言いませんし足らなかったら言ってください。それと同じような物がまだ何個かあるので』と告げて大ぶりのヤツを1つ渡してある。
結果として宿の離れを借りた。普段は国賓クラスの人が泊まる宿らしい。正体を告げれば国賓扱いになるかもしれないが面倒だから僕らの正体を明かす予定はない。
何かしらのフラグではないと僕は信じいている。
普通その場所を借りた人たちはその離れで食事をするのだが、『待てない』と言うお嫁さんの都合で、今日は食堂の方でご飯を食べている。キッチンはフル回転で大変そうだが、そこはノイエがカジノで稼いだ硬貨を持ったポーラがお願いをしに行ったおかげで不満など聞こえてこない。
それも原因で女性給仕が僕に売り込んでくるわけだが。
長々と副支配人に西部のことを聞いていたが、話が進み会話は屋台のお肉に変わった。
ウチの悪魔の言葉だから本当にお肉の正体が……とは信じていない。あれは平気で噓を吐く。
「大陸西部は何か国かで産地を限定しているんだすよ。そうすることで競争よりも安定を図っているんです」
デザートと食後のお茶を頼んだら、お茶はポーラが淹れるらしい。
お湯を運んで来ると茶葉と道具はエプロンの裏から取り出した。もう慣れた。みんなが驚いても僕はもう驚かない。
「ただ何年かの周期で肉の質が悪くなる時があるんですよ」
ふ~ん。
「ここの肉は?」
「はい。ウチで使っている肉は、王家に降ろす特別の物なので、信用できる牧場から買っている物です。ですから質は最高級品です」
どこか副支配人が誇らしげだ。ちょいちょい王室の話が出て来るのでもしかと思い質問をすれば、この宿は王室御用達な商人のような立ち位置でもあるらしい。支配人は常に王城に居て御用聞きをしているとか。
悪魔が『あそこの宿にしましょう』と言って決めたが事前に情報収集でもしていたか?
「特に今年の肉は質が悪いみたいでね。安く仕入れられるとはいえ……あんな不味い肉はウチの賄でも出せないですよ」
「そうっすか」
何かその数年周期が気になるわ~。
「ところでその安い肉の産地って?」
見える。見えるよフラグが。
「たぶん神聖国ですよ。あそこは西部の一大産地ですから」
「……そうっすか~」
ドヤ顔でウインクしながらティーカップを差し出してくる悪魔にイラっとした。
~あとがき~
高級宿で情報収集です。
食べられるお肉が出て来てノイエの暴走が止まりませんw
そして食堂の給仕女性は顔とスタイルのみで選ばれます。
男尊女卑が酷いですが、西部だとこれが普通かな? 特殊なのが神聖国です。
文字数が少ない時は忙しい時と思ってください。
しばらくこんなペースが続きそうです。個人的には毎日投稿したいので、文字数を減らしても投稿して行こうかと思ってます。ので、よろしくです~
© 2022 甲斐八雲
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