良いではないか良いではないか
「助けろ上司!」
「頑張れ元部下」
「負けるな現部下」
「人の屑共がっ!」
マジ泣きしながらミシュが走っている。
自分以上のオープン変態には免疫が無かったらしい。
まだズボンに手を掛けているぐらいだからセーフだけどね。
ただあの男性の目は……本気だ。本気でミシュに欲情して興奮している。
つまりこれを逃せばミシュの婚期は金輪際やって来ないかもしれない。と言うかこの手があったのか。海外に売ってしまえば……どんなに悪評なあれでも買い手がつく。
「勝った」
「はい?」
「何でもない。はいノイエ……お腹大丈夫?」
「少し苦しい」
「だいぶ食べたしね」
大鍋がノイエの食欲の前に空になっている。
ルッテが追加を作りながら味見の回数が多いのはそう言う仕様なのだろう。
「って本当に助けてよ!」
「あ~も~面倒くせえな……そのまま襲われてろ」
「屑がっ!」
馬鹿同士が罵っている。
ただあのミシュをあそこまで追い込む逸材は捨てがたい。
「あ~。そこのモミジさんや」
「……はい?」
着物姿の少女が僕の問いかけに答えこっちを見た。
『モミジ』と言う名前やその容姿からして何か凄く親近感溢れるんだけどね。
そっちは後で確認するとして、まずはこっちを優先しよう。
「あの小さい子を追っているのって?」
「わたしの兄様です」
「……そう言う趣味の人?」
「決してそんなことはありません!」
慌てた様子で両手を振って否定する。
「わたしが小さい頃なんて毎日可愛がってくれた優しい兄様です。
食事も一緒。寝る時も一緒。お風呂も一緒。お手洗いも一緒と……本当に優しく可愛がってくれたのです」
「いやそれ絶対にダメな人でしょう」
引いたよ? お風呂でもアウト臭いのに、トイレも一緒とか犯罪臭しかしません。
「そうなのですか? 言われてみれば……わたしの身長がある程度高くなると疎遠になり、胸がある程度膨らんでからとても冷たくなりました」
「判定基準はそこなんだ」
小さくて薄い子が好きなのね。つまり永遠のロリか、ロリババアなどが好みと言う訳か。
喜べミシュよ……君にとって得難い変態だぞ?
「君の国って外国人と結婚しても良いの?」
「えっ? ……問題無いと思います。むしろ村長を務めている父様など、兄様や姉様に対して『早く結婚しろ』といつも言っていますので」
「うむ。こっちとしては得難い人物であるな……うちの売れ残りを引き取って欲しいんですけど?」
「そこの糞上司! 部下の未来を勝手に売るな!」
「切り売りしていないだけ感謝しろ」
「この人の屑共が~!」
結婚してドロドロの性欲塗れの生活を送りたいと言っておきながら……このチャンスを逃したら本当に終わるよ?
「えっと……私の一存では何とも」
「いいえ。喜んで。むしろ引き取って頂ければ幸いです」
「ちょっ……姉様!」
モミジさんの隣に着物姿の美人さんが来た。
容姿からして姉妹なのが良く分かる。ただ妹さんの方が胸は大きそうだね。
「失礼。私はカエデと申します」
「あっどうも。アルグスタと申します。こっちが妻のノイエです」
「……」
何か静かだと思ったら寝てたよ。
食って寝るとか幸せ者だね。ウリウリと顎の下をくすぐってあげる。
「今は怪我の治療で寝てます」
「……失礼ですが治るのですか?」
「はい。時間はかかりますが、両手ぐらいなら何ら問題なく再生するはずです」
「そうですか」
やんわりとした表情を見せるお姉さんとは違い、顔を蒼くして震える妹さんには何があったんでしょう? あっ……お姉さんの手が妹さんのお尻を抓ってた。
「ですので妹さんのことを余り叱らないであげて下さい。
うちの妻もきっとそんなことを望みませんので」
「宜しいのでしょうか?」
「はい。まあ説明もなくいきなり襲われたりするのは今後ご遠慮願いたいですが」
「はいそれは……後でちゃんと言って聞かせておきます」
言い方を間違えたか! 抓る手を緩めてあげて……顔色がヤバい感じになってるから!
「ですがこちらとしてもご迷惑をおかけしたのに謝罪だけと言うのは心苦しくて……良ければこの馬鹿妹を手籠めにしてお遊びして頂いても構いませんが?」
「帯を引っ張って、『良いではないか良いではないか』とかやってみたいですが……妻にやるので余っている着物があれば融通して欲しいです」
「ええそれぐらいでしたら。ただ……良く『着物』をご存じで?」
お姉さんの訝し気な視線が痛い。
しまった! 変な妄想で地雷を踏んだ!
「……妻に色々な服を着せて愛でたくて……大陸中の衣装を調べております」
「…………そうですか」
姉妹が2歩ほど離れ、視線の温度が3度ほど下がった気がする。
良いんだもん。ノイエだったらどんな服でも着てくれるから、悲しく無いもん!
「衣装は寸法があるので後日お送りするとして……何かお詫びを」
「ああ。だったらノイエの替わりに、ドラゴン退治をしばらくやってくれると助かるんですけどね」
出来ないのは分かってても言いたくなる言葉があります。
流石の僕だって、現状が良く無いことぐらい分かってます。
馬鹿兄貴が珍しく頭を抱えそうなほど困っているしね。
最悪は僕の祝福でどうにかするしかないな。
「そんなことで良いのでしたら、どうぞこの妹を使い倒して下さい」
「……へ?」
相手の言葉に耳を疑い目が点になった。
(c) 甲斐八雲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます