第7話

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(は? なんでアキナがぶっ飛んでんだ。まさかクウガが攻撃して──)

 蓮は走り続けながら絶句する。どういうわけか、アキナは唐突に地面を跳ねていき、十メートル以上飛ばされてようやく止まった。

 直後、クウガはアキナに歩み寄り始めた。何か二人で話しているようにも見えるが、遠くからでは確証が持てない。だが危機的な雰囲気は否応なしに伝わってきていた。

 焦燥に駆られる蓮は、走る速度を上げた。四条大橋を渡り切り、手近な階段を三段飛ばしで降りていく。

「アキナ!」

 耳に届いた自分の声は、悲鳴のようにすら聞こえた。階段を下りきって、状況を確認する。

 数歩離れた場所に、女の子座りのアキナと厳然とした佇まいで立つクウガの姿があった。二人とも蓮に気づいた様子で、顔をこちらに向けている。

「なんだよこれ! どうなってるんだよ!」

 やりきれない思いの蓮は、説明を求めて声を荒げた。アキナを見ると、目が潤んでいた。

「誰にも気取られないように深夜を選んだのだが、不可解な偶然もあるものだな」

 ぽつりと独言したクウガは、揺らがない瞳で蓮を見据えた。

「先の案件に深くかかわったよしみだ。虚偽を交えずに話そう。アキナは生来、他の超念武サイコヴェイラー遣いと違ってを外界に放出する体質だ。お前が超念武サイコヴェイラーに目覚めた時、アキナの周囲に見たのはまさに念素だ。

 念素が流れ出すせいで超念武サイコヴェイラーが非神人に転移し、俺たちが戦ったような危険生命体が発生する事実が判明した。報告を受けた協会の上層部は『アキナ=アフィリエの抹殺』という決定を下し、俺に執行を命じた。以上が事の顛末だ」

「いや、何をとんでもない内容を淡々と語ってるんだよ! 生来って単語が出たよな! つまりアキナには、何の罪もないんだろ? 狂気の沙汰にもほどがあるよ! 別の解決策はないのかよ!」

 蓮は必死に説得しつつ、クウガを睨み続ける。

 クウガは呆れたように小さく息を吐き、再び口を開く。

「ある可能性は否定できないが、まずないだろうというのが我々の研究者の見解だ。希望的観測に浸って被害を拡大させるよりは、一人の犠牲で事態を収束させる。賢明な選択だと感じるが、蓮はそうは思わないか」

「思わねえよ! ふざけてんのか! これ以上とち狂った台詞を吐き続けたら、力づくで黙らせてやる!」

 蓮は反射的に叫んだ。するとクウガの眼差しに、冷たいものが混じり始めた。

「他言しないと誓えば見逃したんだが、仕方がないな。少々痛い目を見る必要がありそうだ。安心しろ。殺しはしない。後遺症が残らないとまでは断言できんがな」

 重厚で深刻な宣言の後、クウガはゆっくりと拳を上げてきた。あまりにも隙のないファイティング・ポーズを取ると、すぐにリズミカルな跳躍を開始する。

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