第6話 冒険者アクト=クレイド

 僕はアクト=クレイド。フローガ村出身の新人冒険者だ。隣の村へ行く道中、ドラゴンに出会った。しかし、ニュービーが敵う訳もなく、尻尾で叩かれてロストホールに落ちた。

 ロストホールとは解明されていない大穴で、落ちれば帰ってこれないとも呼ばれる。実際、誰も帰って来ておらず、落ちたものは《失踪者ロスター》と呼ばれて、死亡扱いとされていた。

 落ちているときは気を失っていたが、フェル君と言う冒険者の少年が僕を救ってくれた。彼のユニークスキルは魔石の力でモンスターの力を自分の体に重ねるというか装備するというべきか、まぁ一部だけ変身するのだ。


「――あ、お、俺は寝てたのか?」

「おはよう。ご飯作っておいたよ」


 僕は着地したところの付近の川で摑み取りした魚を刺身にして盛りつけた物を出した。


「ありがとう。頂きます」

「頂きます」


 なんて久しぶりだろう。何人かでご飯を食べたのは余りなかった気がした。


「おいしいよ」

「ここなら水もあるし、川があるから魚だって食べられるよ」


 一応生きてはいける状況であることをフェル君に伝えておいた。


「俺は上に戻らないとな」

「僕も」

「「冒険者になったばかりだから」」


 2人同時に同じことを言った。思わず笑いが噴き出る。


「いってぇ…」


 フェル君はおなかを抑えて、歯を食いしばった。


「どうしたの?」

「傷口が癒えてなくて」


 僕は彼の服を脱がせて、傷を見る。大きく深そうな三本の爪痕があったのだ。包帯と傷薬を出して治療し、包帯を巻く。


「ありがとな」

「どういたしまして」

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