第69話 光翼の授与

「バーレント!!!呪われた悪魔使いめ!死ねぇーーーーー!」

―――……我が敵を砕き給え。轟風雷神激!!


カッッ!!

最大級の雷撃の閃光が走る。

ガガガガドドドオォーーーーーン!!!!



長い屈辱が終わる。

意味のない王弟が王になるのだ。

この力があれば、私を馬鹿にしてきた奴等を皆殺しにできる!


爆風で司令部が吹き飛んだ。





「ハーハッハッハ!ついにあの生意気な悪魔使いを始末してやった。

長かった。散々私をバカにしおって!」



弱まってはいるが広域シールドが消えていない。

ストラウトがまだ生きている。



「次はストラウトだ。トドメを刺してやる!」

奴はどこだ?


辺りを見回すと瓦礫の中に青く光るものが見えた。


「女……?とストラウトか?」


さっきの女か?青いシールドで雷撃を防いだのか?

羽?のようなものが光っている。


「こざかしい女め!二人とも死ねぇーー!!!」

―――爆雷!

ドドドーーーーーーン!!



何だ!?


女は両手で青いシールドを張って防いでいる。

風が渦巻き、雷を巻き取っている。

「あれは御前試合で見た?シールド?」



瞬きの間、女が眼前にいた。

「なっ!?」


速い!?そんな馬鹿な!?


自分が放ったはずの雷がバリバリ音を立てて顔のすぐ前で弾ける。

雷撃を巻き取ったシールドを押し返しながら飛んで来た!?

一瞬で!?

この距離を!?


速すぎる!!


悪魔の腕で受けているのに、グググッと押してくる。

光る翼!この力!?

腕が1本では、パワーが足りないのか!? 

ストラウトにやられていなければ!


「女!貴様!何者だ!?」


女は静かな表情だ。

青い風のシールドに巻き取られた青い雷が女の顔を照らす。

青い光と影が女の目に映る。


ゾクリ。なぜか汗が噴き出す。

なんだ?この恐怖は!?

馬鹿な!こんな女に!負けるわけがない!


「小娘ぇぇーーー!!」



―――闇の底より来たれ罪人たち…


急激な魔力の高まりを感じた。

上か!?ハッと見上げる。


「バーレント!?」


飛んでいる。翼が!?背中に!?


「どけぇぇーー!!

ルシャぁぁーーーーーー!!!」



***



イチの声で瞬時にジェラーニから離れた。


―――……その苦悶を吐き出せ。闇黒瀑布!

イチが下に向かって押し出した両の手の平から、黒い爆流が流れおちた。


轟音とともに黒い泥のような激流が降り注ぐ。

ゴオオォォォーーーーーーーーーーーッッ!!


「ギャァァァーーー!」

ジェラーニの姿は黒い塊に押し包まれ、見えなくなっていった。



なんて禍々しい力の塊なの。

あんなものを制御できるの?

イチは。




***



地上に降りると光る翼は「ふわっ」と消えた。

こんな術、知らねぇ。

「なんなんだ、アイツはよー。」


地面にドロドロした黒い泥がたまっている。その中で動くものがある。

「ううっ。助けてくれ。痛い、熱い、苦しい。」

声はジェラーニだが、もう形を成していない。


「助けてやってもいい。だが教えろ、お前に悪魔を降ろしたのは誰だ?」

「ウゥッ。苦し…っ。技術を買った、強くなれるっ魔道具。」

「誰から?」

「安全だと言った…のに。義父上から紹介…され…。痛い、痛い、助けてくれっ。」

「名前は?どっから来た?」



「魔力をエサに…制御できると。」

「安全に制御できる悪魔がいるかよ。馬鹿だな。」

「こんな、小さな悪魔に、やられる…わけ…ない。」


「自分の中に悪魔を呼びこんだ時点で終わりだ。中から喰われる。

小さかろうが、大きかろうが関係あるかよ。

お前は騙されたんだ。気がつかなかったのか?

魔力が強まったんじゃない。

お前の魂を喰らいながら、悪魔たちが喜んでいただけだ。」


ドロドロした黒いものがゆらりと盛り上がり、どす黒い口を開けた。


「もう遅いな。お前の魔力がつきたら、奴等にとってお前の利用価値はなくなる。

あとはキレイに跡形もなく、残った体も魂も喰われるだけだ。」

「うっ。がぁぁ。助けて…くれる…って…。」


「あーやっぱ無理。消えろ。」


「ギャァーーーーーー!!!!」

まったく情けない最期だな。王弟殿下様のくせによ。

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