第48話 ウインドマスターの青い風

エリックさんはウィンクルさんの炎の剣を何とか防いではいるが、かなり辛そうだ。


彼が膝をついた。その時、


―――昇風撃波!

ゴオオォォォーーーーーー!!!


エリックさんはシールドに切り込んでいたウィンクルさんをシールドごと風魔法で上に放り投げた。



ゴワァァァァーーーーーーーー!!!

ウィンクルさんと炎がグワッと上方に燃え上がり、強烈な勢いで上空に吹き飛ばされていく。


「え!?エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

ドサッ!!!!

「きゃん!痛たー!」


ウィンクルさんのかわいい悲鳴が聞こえた。

大した怪我はしてない様子。



「場外!勝者、エリック・ムース中佐!」


「ワアアァァァァァーーーーーーーーー!!!!」

観客から大歓声が上がった。




「熱せられた風で上昇気流を強めたか。

メガネ君、頭いいな。火と風の特性をよくつかんでる。

シールドの面ごと流して、魔力も無駄使いしてない。


ジョイ、同期なんだろ?ヘッドハンティングしてこい。」


「声はかけときますけど、父上も彼を気に入ってますからね。

離さないですよ。きっと。」



イチが人を褒めるなんて初めて聞いた。

エリックさんって素晴らしい騎士様なんだ。

観客に被害を出さずに勝つなんて見事だわ。



「それにしても場外負けなんてなぁ。ウィンクルさん不完全燃焼ですね。」


「完全燃焼すると焼死体がゴロゴロすっからな。これくらいがちょうどいいさ。

今日は運動できて喜んでるはずだ。」



***



表彰式の後、ローランドがワタシのところに来てくれた。

私の大好きなお兄ちゃん。双子なのにワタシよりずっと年上に見えるようになってしまった。


「惜しかったな。ウィン。」

いつも優しく笑ってくれる。


「ローランドぉ。あなたのところのエリックなかなか強かったわ。

チョット悔しいかも。」

「彼は毎日、鍛練を欠かさない男だ。ウィンも毎日、鍛えれば勝てる。」


「えーやだー。筋肉モリモリになって、イチ大佐みたいになっちゃってもいいの?」

「それは困るな。」

「でしょ?ウフッ。」


「ジョイセントに声をかけないの?あの子寂しがってるよ。」

「そんな必要はない。」


ローランドとジョイはここ数年、口もきいていない様子。

ローランドはもともと、ジョイを軍人にはしたくないようだった。

でもジョイはその意向を無視して第五に入った。

父と息子って複雑。



「ふふっ。」

「なんだ?」

「無理しちゃって!最近、ジョイセントも頑張ってるのよ。イチ大佐の右腕。」

「そうか……。」

ローランドの表情が緩んだような気がした。


「今、嬉しそうな顔したでしょー!」

「ウィン、私をからかわないでくれ。」

「ローランドってば、意地っ張りなんだからぁ。ウフッ!」



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