第24話 ルシャ奪還作戦

 僕たちが新しいキャンプに戻ると惨憺たる様だった。

 イチ大佐は辺りを見て回り、彼女の死体がないことを自分の目で確認しているようだった。


「後方の補給隊を叩かれるなんて、なんてざまだ!

 ゼートの奴、補給線を切ってきやがった。ジョイ!すぐ立て直せ!!」


「はっ!申し訳ありません。」

 大佐に怒鳴られるなんて、久しぶりだ。


「ルシャが捕らえられている場所を探せ。今すぐだ!!」


 大佐が苛立っている。それを隠そうともしない。

 戦場では何があっても動じない方なのに。




 ***




「ジョイ、偵察の報告は?」


「はい。生き残りの隊員が動いていました。敵兵を尾行中です。

 我が軍の補給隊の8人が捕らえられ、強奪された食料や薬品類を運搬させられています。


 その中に彼女とアジカも含まれています。


 敵の急襲隊のキャンプの位置を特定し次第、ここへ戻ります。」


 「ジョイも尾行に加われ、敵陣の位置を早くわりだせ。

 すぐに奪還作戦を実行する。」




 ***




 妙にイライラする。

 俺は何にイラついてるんだ?

 敵に補給線を切られたことか?

 前にもあった。違う。



 ルシャが死んだら、魔力が戻らない。

 だからか?


 ルシャは無事なのか?気になってしょうがない。

 生きてはいるはずだ。


 アイツは軍人じゃない。限界を超えているだろう。

 第五に志願してきても、体より心を病んで死んでいく奴も多い。


 子供ガキを戦場に連れてきた俺が間違っていたのか?


 俺を恨んでいるだろうか。

 恨まれることなんて今までもたくさんあった。

 なんでこんなにイライラするんだ?



 ***


「大佐、敵の位置を特定しました。彼女は無事です。


 キャンプには魔法網が張り巡らされていました。

 一般兵士のキャンプにしては網が多すぎます。


 悪魔使いの敵将がそこに陣をかまえている可能性が高いと思われます。

 今のところ、敵将は出ているようです。

 他の魔導士の気配もありませんでした。」



「やるなら今だな。帰ってきたら面倒だ。


 ルシャを取り返す。


 魔力が尽きててちょうどいい。魔力がなければ敵の魔法網に引っかからない。」


 「大佐ご自身が行かれるのですか?」


「魔力がない兵士と急襲して、ルシャの奪還にあ たる。」


「 しかし万が一、敵将の悪魔使いに襲われたら危険です。」


「 奴が帰ってくる前に終わらせればいいだけだ。ジョイは前線に戻れ。後の指揮は任す。」


「またそんな楽天的なことを……。」

 ジョイが心配そうな顔をした。

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