第18話 ジョイとルシャの従軍交渉

「ルシャちゃん、ちょっと相談があるんだけど。」

 ジョイセントさんがとても困った表情で言う。


「実はイチ大佐に出撃命令が出ていてね。」


「ええっ!?」


「まだ魔力も万全とは言い難いし、僕は反対したんだけど。

 軍総司令官の直々の命令だから、大佐は行かないとダメなんだ。」


 お手てつなぎ生活は一週間ほどになっていた。

 イチの魔力の持続時間は長くなっていて、順調に回復しているようだった。

 あともう少しで終わるかなと思っていたのに。



「ウエスタ方面の戦線なんだけど。ルシャちゃんにも……一緒に来てもらえると、とても助かる。」


「戦場にですか!?」


「安心して。ルシャちゃんには、一番後方の補給隊にいてもらうから。ルシャちゃんが戦場に出ることはないよ。


 3日に一度くらい、僕の移動門ゲートで大佐に後方へ帰って来てもらって、魔力の補給をルシャちゃんにしてもらおうかと思ってる。どうかな?」


 ジョイさんがとても心配そうな顔をする。

「魔力なしに最前線にいたら、大佐は生きて帰れないよ……。賞金首だからね。敵兵みんなに狙われているんだ。」


 イチが生きて帰れない。

 急に戦場が迫って来たような気がした。


「もちろんタダとは言わないよ。怖いだろうし、今の日給の倍とかどうかな?行ってくれるかな?」

 ジョイさんがすがりつく子供みたいな目をする。


 私…あの人に死んで欲しくはない。

 顔は怖いけど、悪人ではないような気がする。


 でも、戦場なんて。

 どうしよう。



「もちろんお金じゃなくてもいいんだよ。僕にできることならなんでも言ってみて!

僕は大佐に生きていて欲しいんだ!」


「じゃあ……教会に温泉を掘ってくれますか?」

「え!温泉?」

「教会に温泉があれば、シスターや子供たちが喜びます!」

「ははは、温泉か。分かったよ。報酬は温泉ということで。」



 ***



「イチ大佐、交渉が成立しました。」


「報酬に温泉をねだるとは。超がつくほど強欲なガキだな。

 ジョイにしかできないことを要求するところも実にあざとい。」


「一般開放して入湯料で儲けるそうです。しっかりしてますねぇ。」

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