第15話 悪魔使いオジサンと初デート?(2)
王室御用達の服飾店でイチの服を買いそろえることになった。
「これはこれはバーレント様!ご無沙汰しております。
エニセイア様!新しいデザインのジャケットはいかがですか?」
店員さんは二人の顔をちゃんと覚えているようだった。
おしゃれなジョイセントさんならともかく、バーレント様って?
イチもよく来るのかしら?
「イチさんはここの常連さんなの?」
「違う。」イチは不愛想だ。
ジョイさんが、クスッと笑う。
「お父様とは来ていたでしょう?」
「お父様?」
「えぇ。お父様はとてもおしゃれな紳士でしたからね。」
紳士からこの人が生まれるの!?
慌てて奥から出てきた支配人とジョイさんとのコーディネートで、
イチは(わりと)まともな騎士に見えるくらいにはなった。
イチはものすごく嫌そうだった。
「キツイ。」
「イチ大佐のサイズは普通ないですよ。あそこはオーダーメイドが基本なのに、無理言ってそろえてもらったんだから、文句言わないでください。」
ついでに私の眼鏡と子供たちにお菓子のお土産も買ってもらった。
「あー。普通のオジサンに見えます。良かった!」
「オジサン言うな!」
「剣は持ってこないでください。」
「刀だ。」
「どっちでもいいです。教会の皆んなが怖がるでしょ!」
***
久しぶりに教会に帰ってこれた。私の家!ホッとする。
「シスター!みんな!ただいまー!」
「ルシャ!!あなたどうしたの!?それは!?」
イチとお手てをつなぐ形で包帯を巻かれている私を見て、シスターたちが気絶しそうになっている。
「魔術実験の一環なの。」
「男性とつながれることが!?」
「大丈夫、心配しないで。
王立医療院の院長先生が監修している実験だから。
この方はこんな見た目だけど魔法騎士様なのよ。
ついでにそこでバイトもしてるの。
ほらっ。これで牛が買えるわ。小屋だって作れる。」
「ルシャ、あなた無理をしないで。体を壊したらどうするの!」
「ご飯はおいしいし、みなさん優しいわ。大丈夫よ。」
やたらとデカいイチの迫力に押され、孤児院の子供たちは遠巻きに見ていた。
「お菓子もあるのよ!みんなおいでー!」
子供たちの顔がパッと笑顔に変わる。
カワイイ!
「わーい!」
「ルシャ姉ちゃん!この人だれ?」
「手をつないでる!結婚するの?」
「ないない!絶対ない!」
「オジサン!遊ぼう! 」
「ガキども離れろ。」
「おとなげないなぁ。少しは遊んであげてください。
右腕に3人ほどぶら下げて筋トレだと思えば?」
「イテ!蹴るな!」
「わーい。プロレスラだー!悪役がきたぞー!」
「誰が悪役だ!俺は国を守る魔法騎士だ!正義の味方だ!」
「嘘だー!やっつけろ!」
子供たちは容赦がない。
「コラ!やめろ!痛っ!ルシャ!なんとかしろ!」
「人相悪いから、悪役でいいでしょ?」
「なんだと!?テメぇ、誰に向かって言ってんだ!」
「悪役レスラー。」
「俺は旅団長で大佐なんだぞ!わりと偉いんだからな!
泣く子も黙る第五のイチだ!」
「知らない。自分で偉いって言う?普通?」
久しぶりにみんなに会えて嬉しい。
元気そうで良かったな。
頑張ってお金稼ぐぞ!
***
やたらと金にこだわるのは、家畜を飼うためらしい。
確かにこの教会は貧乏そうだ。
ガキンチョどもの相手は異常に疲れる。
汗まみれになったので、ガキどもと井戸で水浴びをする。
「ここ風呂ないのか?」
「フロ?なにそれ?」
「そんなことも知らんのか?冬は水浴びじゃ寒いだろ?」
「体を拭くよ。」
ふーん。薪で風呂を沸かす予算もないのか。
ルシャが金を欲しがるわけだ。
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