第13話 デーモンマスターの悪魔


 お昼過ぎにボンバル院長を再び訪ねた。

「どうじゃイチ、魔力は戻っておるかの?」

「あぁ。なんか昨日よりはマシな感覚はあるな。」


「一度、呪文を試すかのぅ。」

 そう言って院長は、私たちを医療院のはずれにあるゴミ捨て場へ連れてきた。



「よしイチ!あの粗大ゴミをやっつけてみろ!」


「あのなぁ…。ハァー。張り合いがない。」

 ウンザリした顔のイチ。


「離れろ。」

 イチは私とつながれていた包帯を解いた。

 院長と私はかなり遠くから見守る。


 右手の二本の指を立て、印を結ぶ。

 見たことがない真剣な横顔。

 まわりの空気がイチの方へ引き込まれるような感じがした。

 そして現れ始めた何か動く影?


 イチは呪文を唱えた。

 ―――我が呼び声に応えよ黒き眷属。烈破!


 バンッ!!!

 バラ、バラ、バラっと粗大ゴミの破片が散らばる。


 ゾクッとした。鳥肌がたった。

 呪文と同時に現れた、小さな黒い生き物のようなものが消えていく。

 あれが悪魔?



 二人は特に変わった様子もなく普通に話す。

「お手てつなぎ生活を続ける価値はあるようじゃのぅ。」

「この生活で完全に魔力が戻るのか?

 そこが問題だ。一日の補給でどれくらいもつかだな。」



***



ルシャを食事に行かした間に今後の策を話し合う。


「魔力を奪うことと、戻すこと。この切り替えをどうやっているのかのぅ?」

ジジィが珍しく、思案顔だ。


「あれ以来、奪われてはいないと思う。

戻ってくる魔力の量は徐々に増えてはいるが、ともかくスタミナがもたない。

これではデカい魔法が使えない。」


「シンプルに考えてはどうでしょうか?」とジョイが言う。

「要は彼女の信頼を取り戻すことが、魔力の返還につながっているような気がするんです。初対面なのに大佐が乱暴するから悪いんですよ。」


「俺、ヤッてないしな!」


「キスでも一般市民の娘さんには十分乱暴ですって!恐怖感を完全に払拭するためには…どうでしょう?遊びにでも連れて行ってあげては?」


「ハァ?俺がか?めんどくせー。」

「実は紳士的で優しい男ですよってフリをするのが近道かもですよ。」

「フリってなんだよ。俺は優しい男だ!」

「17歳の街娘さんのウケをしっかり考えて下さいよ。」

「はぁ、地獄かよ。何の因果で。」


「日頃の行いが悪すぎるんじゃ。女の恨みをかっとるんじゃろ。バチが当たったんじゃ!」

「バチがあたるなら俺より先にジョイだろ?」

「僕は女の子に優しいですから。」


「17歳はどこに遊びに行くんだ?想像もつかんぞ。」

「任せてください。デートコースを考えておきます。」

「デートじゃねぇからな!」

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