第10話 ルシャのイチ観察
第五の基地で一緒にいて、まず驚いたのがイチの偏食ぶりだった。
ともかく肉しか食べない。あとは少しのパンくらい。野菜はことごとく残す。
「なんてもったいない食べ方するんですか?
作ってくれたお爺さんに失礼だと思います!」
「オマエはお母さんか!?黙って食え!」
「ガハハハ!威勢のいいお嬢ちゃんだ!」
お爺さんがカウンターの向こうの厨房から大笑いしている。
「ワシはジングだ。この独身寮の料理人だ。よろしくな嬢ちゃん。
大佐の偏食ぶりは異常だ!もっと言ってやってくれ!バランス考えないと体を壊すって言ってるのに、ちっとも聞きゃしない。」
コクのあるビーフシチューに山盛りサラダ。
バゲットは焼きたて。外はパリパリ、中はモッチリの本格派。
食事は驚くほど美味しい。
あのお爺さん、見た目によらず素晴らしい料理人なのね。
「食事はお口に合いますか?」
ジョイさんはさりげなく声をかけて気をつかってくれる。
紳士だわ。
「とってもおいしいです!デザートまでついてるなんて最高ですね。
このアップルパイ、街で売れますよ!」
教会の子供達にも食べさせてあげたいな。
「第五の予算のほとんどは食費に注ぎ込まれていますからね。」
「門番もいないし、この基地大丈夫かなぁって不安でした。」
「門番?あー、大佐があんなのいらないって廃止しました。
どうせウチにはお客様なんて来ませんし。」
「泥棒が来ませんか?」
「ははは、取られるモノなんて第五にはありませんよー。命くらいかな?」
「自分の身も守れない弱いヤツは第五にはいらん。勝手に死ね。」
イチが横から言った。やはり常識外の人らしい。
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