第9話 露出が高めな女魔法騎士

手をつないですごす。これが予想以上につらい。すぐに離れてしまう。

「トイレとお風呂以外はずっとじゃ。」という院長の指示もあり、私たちは手を包帯で巻かれてつながれた。


ちょっと不思議なのが、大佐が決して手袋を外さないことだ。

細い銀糸で編まれた指なし手袋。

初めて会った時も、全裸なのに手袋だけはしていた。


まあ直接手をつなぐより、マシだけど。


はぁ~、囚人の気分だわ。



「俺は仕事がある。」と大佐が言うので、基地に戻ることになってしまった。

馬車の中で大佐が聞いてきた。

「オマエ、名前なんて言うんだ?」


まだ私の名前を覚えてなかったの!?

この人!?

「ルシャですっ!!」

ジョイさんも、院長もさんざん私の名前を呼んでくれてたのに。


「俺はイチだ。イチ・ヨナクニ・バーレント。

俺のことは『イチさん』と呼べ。大佐をつけなくていい。

お前は軍人じゃないからな。」


イチさん?なんで「さん」づけしないといけないの?

この最低オジサンを!


私はイチと呼び捨てにしてやることにした。(心の中で)



***



基地に戻るとジョイさんがニコニコ出迎えてくれた。

「お帰りなさーい、ルシャちゃん!待ってたよ!」

爽やかな笑顔がまぶしい。


「今日はうちの基地にお泊りだね!

いやー、お客様が来ることなんてあまり無い所だから、嬉しいですよ。

心配しないで。ちゃんと女性もいるよ。

うちにもナイスバディの美女がいるんです。」


「あれはナイスバディの痴女だ。」とイチが訂正した。


「ははは。」とジョイさんが笑う。

「実は僕の叔母なんです。」


痴女の叔母様って?どんな人だろう?



***



基地に入ると紹介されずとも、一目で痴女と思われる女性がいた。


隠れている部分より、出している部分の方が多い。

真っ赤で豪華なレースのブラ&ショーツに、黒い大きなとんがり帽子をかぶっている。かなり涼しげで変わったいでたちにもかかわらず、他の騎士さんたちは普通にスルーしている。


見慣れてるの?ひょっとして?


「やだぁ、イチ大佐。なにかわいいコとお手てつないじゃってるんですか?ウフッ。」


左目の下の泣きぼくろがセクシーな美女がそう言う。

年は私より少し上の25歳くらい?


豊かな亜麻色の髪はゆるくウエーブしていて、フワフワと背中までかかっている。

瞳の色も亜麻色。キレイな人。

バストは私と比べ物にならないほど大きい。


はぁ、羨ましい。

何を食べたらこんなに色っぽくなるんだろう?

秘薬かしら。


でもしかし、ジョイさんよりは年下に見えるくらいだけど?

叔母様ってどういうことかな?


「ウィンクル、こいつに適当な服をみつくろってやってくれ。

着替えも持って来てないからな。」


「はーい。ルシャちゃん、第五にはねぇ、温泉大浴場があるんだよ。」


「温泉ですか?本当に?」


「夕食の後に二人で入ろうね!源泉かけ流し、お肌スベスベになるから、チョー気持ちいいよ。女湯つかうのワタシたち二人だけ。泳げるくらい広いよ。温泉はねぇ、ジョイが掘り当てたんだよー。」


「えっ!?スゴイ!」


「この子地属性のグラウンドマスターなの!ウフッ。」


「温泉が出るまで1ヶ月掘りました。懐かしいです。」遠い目で語るジョイさん。

「温泉出るまで第五に入隊させないって言われて、半泣きで掘りました。」


かわいそうに。こんなヤバイ上官にこき使われて、苦労してるから人に親切なのね。


「おかげで地の精霊の声がよく聞こえるようになって、仲良くなれました。」


「精霊の声が聞こえるんですか?」


「聞こえる…というか、なんというか、感じるってところです。」


「ウィンクルさんも魔法を使えるんですか?」


「私は火の精霊と仲良しの火属性なの。これでもファイヤーマスターなんだよ!」


「火!?イチさんと同じですね。」


「大佐は違うよ。この人は悪魔使い。」


「悪魔!?」


「地水火風の精霊魔法のどこにも属さない、デーモンマスターだよ。」


「悪魔使いだなんて、イチさんにピッタリですね。」


イチがギロッと私をにらんだ。


「ウフッ。おもしろい子ねー!」

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