第8話 オジサンとお手てつなぎ生活


あまり眠れないまま夜が明けた。ボンバル院長が一緒に朝食をとろうと誘ってくれた。職員用の食堂にくると朝からたくさんの人がいて、なんとそこに大佐も待っていた。


げーっ。あいたくなかったのに。


「オマエ、あからさまに嫌な顔するなよ。昨日はイロイロと悪かった。

俺もこんなことは初めてで焦ってたんだ。

ともかく協力してくれないか?

給料は払うぞ。」


「えっ?ホントですか!?」


「休業手当だ。」


「あー、ワシからも頼むよ。医学的、魔術的に貴重な症例じゃ。」


昨日よりは軟化した態度の大佐に少しホッとした。

「でも協力って何をするんですか?」


「実験じゃ。」


実験?嫌な予感しかしない。



***



院長の研究室という本だらけの部屋に移り、三人で話し合う。

実験といっても結局は地道にいろいろ試すしかないようだった。


小脇に抱える→ちょっと火が付く

キスする→けっこう火が付く

?する→もっと火が付く


院長が黒板に書いて見せる。


「さて『?』に入る行動は何じゃと思う。」


「ハァ?まわりくどいジジィだな。なんだよ?」


「エッチするというのはどうかの?」


「待て、待て、待てぃ!ジジィ、それは単にジジィの趣味だろ?」


「いや、いや、いやぁ!まんざら外れておらんぞ。」


私は固まった。エロジジィやばい人だ。


「より濃厚かつ長時間の接触の方が、魔力が戻っておるではないか。」


「あほか!仮にそれで戻っても、ようは短時間で魔力が消えるのが問題なんだ。

完全に魔力が戻らないと意味がないだろがっ!

ずっとヤッてるわけにはいかんだろうがっ!」


大佐が動揺しているのを初めて見た。

エロジジィは大佐より強いのか?


「いい案だと思うんだがのぅ。」


「真面目に考えろ、くそジジィ!」


「仕方ないのぉ。まぁ現実的に実行可能かつルシャちゃんがあまり嫌がらない方法として、今日一日は手をつないで過ごしてもらうのはどうかの。」


手をつなぐ…十分に嫌だ。


私のものすごく嫌そうな顔を見たエロジジ…じゃなかった院長が言った。

「研究協力金として日給10万ギルでどうかの?」


「ほ、本当ですか!?」

1日10万ギルもうかる。

これは悪くない、かも。


オジサンと…させられるよりは、はるかにマシだけど。

ジーっと大佐を見てみる。この人信用できない。


「なんだよ、その目は?俺が何かするとか思ってんのか?

あの時は寝ぼけてたんだ。ともかく手をつなぐだけだ。

これは任務だ。俺だってな、好きでやるわけじゃないからな!」


かくしてバーレント大佐と私のお手てつなぎ生活が始まった。

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