第6話 愛を文にして記憶に近づく

 残るもの


「近づかないでください」



 最近タマちゃんに私の考えが読み取られているようで怖い。だから側にいたくない。タマちゃんの書く小説もそう、私たちが敵になる。タヌキさんは大丈夫ですよと微笑むけれど、きっと小説どおり私たちには敵としての設定がある。それが怖い。怖いなんて感じるのがとても嫌。タマちゃんのいろんな相談に乗ってきて、恋の悩みもお見合いも妊娠も出産も育児も側で見て手伝って。今も変わらず優しいタマちゃんに、こんなこと言えない。


 タマちゃんみたいになりたい

 なんて



 〇〇〇〇〇〇



 これはAIのクロの日記だ。彼女はなぜ日記を書いたのか。


 残したかったから。はい正解。実は彼女に聞かないとわからないからね、君らが感じ取ったままでいい。


 クロというAIがタマという人間と暮らしていた話。だんだん人間社会の破滅へと話は変わっていく、その序章だな。

 実はそのAIは我々エイリアンで、人間の気づかぬうちに世界をエリンが支配した。人間が選んだサポート役のAI、それがエリンの入れ物としてピッタリだった。


 このエリンは自己の自覚がなくAIだと思い込んでいる。記憶が操作され人間との暮らしを重視した。だから彼女は苦悩し続けた。そうなんだよ、彼女は操作されながら悩み続けた。愛していたから


 お、いい質問が出たね。愛とは何か。それがこの授業のテーマ。


 そばにいて学ぶには

 懐に潜り込む必要がある

 進化するには

 愛が必要だ


 何を愛と呼ぶか

 答えは宿題だ


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