第5話 愛を見つめて遠くに近づく
近くて遠い
私は小説を書いている。出来上がると真っ先にクロに読んでもらう。たいてい誤字脱字以外は面白いですよ、しか言わない。
「この結末は、嫌です」
「へ?」
だから私、かなりショック。いつもAIのいろんな機能について冗談で話すことがあった。いつもなら笑ってくれる彼女は怒っていた。
「設定されていません、そんな機能が欲しいなら小説ではなくAIを作ったらどうですか?」
「え、私文系だから無理」
「バカ!」
もうただの暴言なんだけど。こういうケンカも時々する。今書いてる小説はヒーロー的存在のAIとエイリアンが実は敵。主人公たった1人が最後の人間になっていることに彼は気づかない。今は少し前の古臭い演出のが流行で、AIのこと信じてるからねと説明する。
私は失恋後、ロボットのクロと暮らした。嫌だったロボットには愛と呼ぶべきものがたしかにあった。私は彼女と苦楽を共にした。懲りずに恋愛をし失恋。彼女は慰めてくれた。私はまた懲りずにお見合いをして今度は旦那と出会う。旦那もロボットのタヌキさんと一緒で、一気に4人暮らし。子どもが増えて、そろそろ子どもにもロボットを連れてくる頃合いだ。
「その相談もしたいんだけどな」
「お前またクロのこと甘やかしてるのか」
「あんたね、クロちゃんはあんたのタヌキさんとは違うんだからね」
旦那のロボットは執事型。女の子型のクロちゃんと私はだいぶ歳が離れてしまった。
「一緒に大人になれたらいいのに」
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