第4話 屋上の倉谷くん(波多野サイド)

「んしょっ・・・と」


屋上の重たい扉を押し開け、右と左をよく確認してから外へ出る。

どうしてこんな、横断歩道を渡る時みたいなことをしているのかと言うと、私の他に人がいないことを確認する為だ。2年生の時、同じクラスの女の子の告白現場に出くわしたことがあったから。(その後3年生でクラスが変わるまで、私達の間にはずっと気まずい空気が漂っていた)


梅雨に入って、なかなか屋上に来られなかったから、少し嬉しい。

このお昼の時間は、教室だとうるささに耐えられない。雨の日は隣接する旧校舎まで行って食べていたけど、やっぱり屋上の方が静かでいい。旧校舎も静かは静かだけど、何か出そうで怖い。


私は屋上の端のフェンスに寄りかかり、お弁当の袋を広げた。

今日はデザートに冷凍食品のゴマ団子を入れて来たから、お昼の時間が楽しみで仕方なかったんだ。


「いただきま・・・」


ギイイイィィ─────


屋上の扉が開く音がした。

誰か来た!?

よく目を凝らして見てみるけど、ここからだと微妙に遠いみたいで顔まではよく見えない。背の高さからして、男の子かな?

キョロキョロと辺りを見回していたけど、私を見つけるとこっちに歩いて来た。

え、誰?先生?うちの学校、屋上でお弁当食べちゃいけないことにはなってなかったよね??


「波多野さん!ここにいたんだ」

「!!!」


く、くくく倉谷くん!?

なんで?どうしてここに?

内心ものすごく驚いているけど、感情があまり表に出ない私の表情はほぼ変わっていないだろう。


「なんか今日は波多野さんと一緒に弁当が食べたくなっちゃってさ~、探し回ってたんだよね」


言いながら私の横に腰を下ろして、自分のお弁当の袋を開け始める。

私と一緒にごはんが食べたいって・・・///

倉谷くん、もしかして私のこと・・・?


・・・


い、いやいやそんなはずないから!私のどこに好きになられる要素があると言うの!?

毎日声をかけてくれてるのに、「あ」とも「い」とも返したことがない私を、倉谷くんが好きになる訳がない!って言うか、倉谷くんに限らず他の男の子でもでしょ!


「あれ?波多野さん、弁当食べないの?」

「・・・!」


わ、私としたことが・・・。

慌ててお弁当の蓋を取る。

すると、倉谷くんが私のお弁当を覗き込んで来た。


「うわー!めっちゃ美味そうじゃん!波多野さんが作ってるの?」

「・・・」


取れそうなくらい、ぶんぶんと首を縦に振った。


「!! すごっ!俺は母さんに作って貰ってるからなー。尊敬するよ」

「・・・」


そ、そそ尊敬!倉谷くんに尊敬された!

いやいや私こそ、倉谷くんのコミュ力はすごいと思うし、尊敬してます!・・・とは言えず。

その後、倉谷くんと一緒に食べたお弁当の味は、ボーッとしていたのでよく分かりませんでした。

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