第3話 シャー芯ちょうだい、波多野さん(圭吾サイド)
「よーし、それじゃあ数学の授業始めるぞー」
せっかく6時間授業なのに、1・2時間目の教科が体育なのを忘れてた。男子と女子は別々だから、波多野さんにアピール出来なかったじゃん!
一応、1時間目が始まる前の10分休みに、「ゴミがついている」と言って髪の毛を触ってみたけど・・・。あんまり効果はなさそうだった。(ちなみにゴミがついていると言うのは嘘)
だから、3時間目こそは波多野さんを俺に惚れさせられるような、ファンにさせられるようなアクションを起こさないといけない。
この時のために、1・2時間目はリレーの授業を受けつつ計画を練っていたのだ。
ん?考え事をしながら授業を受けて、ちゃんと頭に入ったのかって?もちろんそれはばっちりだ。前の走者からバトンを貰う前に走り出して失格にされるくらいの失敗しかしていない。
とにかく、波多野さんにアタックだ。
言っておくが、俺は波多野さんのことが好きとかそう言う訳じゃない。あくまで、クラス内で俺のファンになっていないのは波多野さんだけだから、それが気に入らないだけだ。それと・・・。うん、ちょっと気になるだけだ。
だから、好きってことじゃない。・・・ないんだからねっ!?
「あっ、ヤバい。シャー芯切れた・・・」
「・・・」
真面目に授業を受けていた波多野さんの注意が、こっちに向く。
よしよし、計画通りだ。俺は慌てたふりをしてペンケースを探り、「やっちまった」と言う顔を作る。
「うわ、替えのシャー芯ないじゃん・・・。どうしよ、今日シャーペン1本しか持って来てないし、これじゃ授業受けらんないよ・・・」
「・・・」
わざと波多野さんに聞こえるように呟く。
俺の計画では、波多野さんはここで俺にシャー芯あげようかと提案して来る。波多野さんは無口だからきっと喋らないだろうけど、何かしらの方法で提案してくれるはずだ。・・・うん、きっとそのはずだ。
波多野さんがシャー芯のケースを渡してくれる。俺はそれを受け取る。シャー芯のケースくらい小さいと、受け渡しの時に手が触れてもおかしくないだろう。
さりげないスキンシップで、波多野さんをドキッとさせる。そう言う計画。
だったのに・・・
「ん?圭、シャー芯ねえのか?俺の使えよ」
波多野さんだけでなく、後ろの席の増田までもが俺の呟きに反応し、シャー芯のケースを差し出して来た。
「お、おお、増田・・・ありがとう」
シャー芯のケースを受け取る俺の笑顔は、きっと引きつっていただろう。
ちくしょうめえええっっっ!!!
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