(3)
僕もリナを追いかけるようにして丘の上に登った。
するとそこは、辺り一面修羅場と化していた。
数百のロードラント兵のうち、無傷な者はほとんどいない。
ざっと見た感じ、何とか動けそうな人は三分の二ぐらい。
残り重症者ばかりで、みんな地面しゃがみ込んだり横になったりしている。
その光景は激しい戦いの後の野戦病院さながらだ。
「みなさん、大丈夫ですか――? お怪我は――?」
そんな中、リナが何かできることはないかと、ボロボロの兵士に次々声をかけていく。
だが兵士たちは一応は返事をするものの、リナに対する態度は微妙と言うか、かなり冷淡だった。
それもそのはず。
なにしろ兵士たちは昨日、リナがアリス王女の影武者となり、戦場から逃げて行くシーンを目撃しているのだから――
もちろんリナは、叔父であるレーモン公爵の命令に従ったまでだ。
しかし見捨てられた側の兵士たちにとっては、そんなこと関係ない。
みんな心の中では、リナのことを“絶対に許せない女”、と思っているに違いない。
当然、その冷たい空気はリナにも伝わる。
リナの声はだんだんと小さくなり、しまいにはしょげて泣き出しそうな顔になってしまった。
これはちょっと黙って見ていられない。
リナだって昨日のことを反省してここに戻ってきたのに、いくらなんでも可哀そうだ。
僕は何とかフォローしてあげようと思いリナに近づいた。
と、その時、一人の傷だらけの男が叫んだ。
「おい野郎ども、こんなカワイイ娘に向かってそんな顔するんじゃねえ! それにこの子にも色々事情ってもんがあるんだ。少しは察してやれ」
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