(13)

 その光景は“追う者と追われる物”というよりも、むしろリューゴたちが敵集団を先導し、どこか別の目的地を目指しひたすら突き進んでいる感じだ。


「男爵様、上手くいきました! すべて作戦通りです」

 僕は望遠鏡から目を離して言った。

「敵は包囲網を解いて、王の騎士団キングスナイツを追っていきます」


「ホント!」

 男爵が目を丸くして歓声を上げた。

「良かったわぁ。あのイケメンリューゴ君、いい仕事するわねぇ」


 そう――


 作戦の第二段階での王の騎士団キングスナイツの役目は、霧のせいで身動き取れなくなった敵の注意を、大きな声と音を出して引き付け遠くに追いやってしまうことにあったのだ。

 無敵形態インヴィンシブルモードのスキルを使うことは予定になかったが、リューゴが咄嗟に機転を利かしてくれたおかげで、より上手く敵を釣り上げることができた。


「やりました! やりましたよ、マティアス様!」

 リナが飛び上がって喜び、さっきからずっと黙って見守っていたマティアスに言った。

「リューゴ様たちがやりました!」


「……そのようだな。あとはまあ作戦もよかった。単純で、わざわざ言及するほどのものではないが」

 と、マティアスがつぶやく。

「昔からこいつグリモの立てた作戦が失敗したことは一度としてないからな。それだけは確かだ」


「やぁだ、マティアスがそう言ってくれるなんて珍しい♡」

 男爵は元カレに褒められ、やっぱり嬉しそうだ。

「あとユウちゃんの魔法のことも忘れないであげてね。『ミスト』の霧、濃くて白くて量が多くてすごかったわよ」


「……なんかその言い方引っかかりますが、まあそれ程でもないです」


 と、僕が謙遜していると――

 シラーっとした感じの声で横やりが入った。


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