(14)

「あのー、そっちで盛り上がるのは勝手だけどさあ……」


 声の主は、リューゴの命令でこの場に残った王の騎士団キングスナイツの一員、えんじ色の頭巾を被ったボクっ娘ミュゼットだ。


「こんな安易な作戦で隊長リューゴがミスするわけないじゃん。それよりさあ、ボクたちもさっさと行動した方がイイんじゃね? でないとさっきから見てるだけでツマンんないよ」


「ま、なんですって!?」

 と、カチンとする男爵。


「ほらほら男爵様、怒らない怒らない。そんなことだとそのうち下手こくよ。作戦はまだ終わってないんだからさあ」


 だが、そう言うミュゼットこそ、ガムをクチャクチャ噛みながら気だるそうに地べたに座り込み頬杖をついている。

 その格好が何ともやさぐれた様子で、到底騎士が取るような態度とは思えなかった。

 

「ミュゼット、いい加減に立ってください! あなたこそ弛んでますよ!」


 さすがに見兼ねたのか、そこで、もう一人の王の騎士団キングスナイツの団員、メガネをかけた青年騎士クロード=ド=ロレーヌがミュゼットを叱りつけた。

 ミュゼットとは違い、クロードは寡黙かもくで誠実そうな感じの人だ。


「ハイハイ」

 ミュゼットはぴょんと立ちあがり、ガムを吐き捨てた。

「じゃあ、いっちょやりますか」


「まあ、はしたない!」

 それを見た男爵が眉をひそめる。 

「まったく、アタシったらどこで教育を間違っちゃったのかしら?」


 教育……ということは、男爵はミュゼットの先生? 

 あるいは後見人みたいな関係なのか?



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 それはさておき、いよいよ作戦は最終段階、総仕上げだ。


 最後は結局、この場に残っている六人――

 自分、リナ、マティアス、グリモ男爵、ミュゼット、クロード。


 このたった六人のメンバーで、霧の中に取り残されたエリックたちロードラントの兵士数百人を助け出さなければならないのだ。



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