(12)

 リューゴたちは全員大きなときの声を上げながら、霧の中を一直線に突き走ってゆく。

 それらはすべて、敵の注意を引くための意図的な行動なのだ。


 ここまでやれば、五里霧中状態のイーザ騎兵やコボルトも、何者かが集団となって突撃してくることだけは感知できたはず。


 さあ肝心なのはここから!

 と、息を飲んで見守っていると――


 敵集団と衝突する寸前。

 まず先頭のリューゴが、続いて竜騎士たちが急遽きゅうきょ馬をターンさせ、見事に進路を右に大きく変えた。


 それはまさに絶妙なタイミングとしか言いようになかった。

 もしこれが並みの能力の騎士だったら、そのままの勢いで敵に突っ込み、大乱戦が始まってしまっていただろう。


 さすがは王の騎士団キングスナイツ

 ロードラント王国随一の竜騎士団だけのことはある。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一方、このリューゴたちの謎の行動には、イーザ騎兵もコボルト兵もさぞや驚いたに違いない。


 なにしろ霧に乗じて急襲してきた何者かが、やいばを交える前ことなく、いきなりターンして逃げ出してしまったのだから。

 

 果たして敵は激しく戸惑い、かといって霧の中どうすることもできず、動きがピタリと止まってしまう。


 それからしばし間が空き――

 意外な現象が起こった。


 1500のイーザ騎兵とコボルト兵が雪崩を打つように、逃げるリューゴたち王の騎士団キングスナイツを、一斉に追いかけ始めたのだ。


 視界は当然霧で遮られているため、彼らはリューゴたちが発するときの声と、『無敵形態インヴィンシブルモード』の黄金の光を追って進むしかない。


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