(14)
しかし僕は、ヒルダが何を言おうが何を企もうが、意外と冷静でいられた。
というのも、この『イビルバインド』による拘束は、魔法効果を打ち消す白魔法『ブレイク』で解除できる。
そう踏んだからだ。
そして体さえ自由になれば、後はこちらのペース。
油断したヒルダが近づいてくるのを待って不意を突けばいい。
それなら魔法で反撃される心配もないし、シャノンが介入してくる時間もないだろう。
ただし一つ、問題があった。
しかも究極の。
それはセフィーゼと戦った時と違い、ヒルダには剣による脅しなどまず効かないだろうということだ。
つまり、やるなら
しかし――
普段の理性を取り戻しつつある今の自分に、敵とはいえ女性を、ためらいなく一撃で倒すことなど可能なのか?
いや、それ以前に“人を殺す”という最後の一線を越える覚悟が、自分の中に果たしてあるのか?
そこだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい、キサマ!」
ヒルダが僕に向かって吐き捨てるように言った。
「答える気がないのなら、ひとこと言っておこう。ワタシはキサマのような甘ったれた奴が死ぬほど嫌いだ!」
甘ったれた奴?
ヒルダにとっては、人を殺せない=甘ったれということらしい。
「キサマは
ヒルダの主張はまったくの言いがかりで、難癖に近い。
けれど――その考え方にも一理あるのかもしれない。
僕はそんな風にも思ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます